スピリチュアルケアの旅
- 逸見 晴恵さん/エッセイスト
- 昭和24年生まれ。夫政孝氏ががんにより死去した後、ガン闘病の記録をつづった「ガン再発す」(政孝氏との共著)を発表。「23年目の別れ道」では、逸見氏との出会いから夫婦、家族の軌跡、政孝氏の素顔や闘病秘話などを日記風につづる。ガンという病気の恐ろしさを読者にあらためて認識させ、現代の医療について警鐘を鳴らす。現在、テレビのコメンテーターとしても活躍中。
患者さんたちにがんと告げられたときに何を思ったか聞きますと、「定年後の海外旅行を楽しみにしていたのに」「もう海外旅行も行けない」と嘆く方が多いのです。海外旅行は中高年の夢の第1位なのです。
なぜがんだと行けないの?私もがん体験者ですから何とかしたいと思い、伊丹仁朗先生のがん克服日米合同富士登山に参加したことで発奮しました。伊丹先生は自身がリーダーとなりがん患者富士登頂、モンブラン登頂を成功させました。また、「いきがい療法」でがん患者の心のケアを実践している医師です。富士登頂の後考えました。山は無理だけど、平地を歩くのなら私も可能性はありそう。2003年「いっつ癒しの旅」が実現して28名とニュージーランドへ。そして、2004年5月、フランスルルドの泉へと旅の実現が叶いました。ジャパンウェルネスを作られた竹中文良先生同行のもと、23名の参加がありました。
がんは体の病気であると同時に、心の病気でもあります。告知では頭が真っ白になり、その後も不安、孤独感、家族とは見えない距離を感じるなど、うつに近い感情を繰り返し経験します。そんな気力、体力がいるのに病院では放っておかれているのが現状です。メンタルサポートを重視して心のケアをしていくことが治療に効果を上げます。
ルルドでは沐浴や、ろうそく行列などの宗教行事を体験しました。讃美歌を歌いながらろうそくの灯りを見つめていると神に近づいたようなそんな神聖な気持ちになりました。癒され奇蹟が起こるかもしれないという夢の期待も起こってきます。われわれの一行の中には担当医から「末期、何もできない」と言われたすい臓がんのNさん、そして再発のがんが腹膜に転移し痛みが出て、主治医に相談したら「痛み止めを飲んで行きなさい」と言われたMさんがいました。その方々は旅の中で生き生きと表情を見せ、食べられなかったのにどんどん食べたりと体力の回復を見せてくれました。
同じ病を持つ人々との旅は心を解放し、わかち合う喜びが「元気」という気力につながったのだと思います。私はこのような旅の計画を継続し、みんなで元気になりましょうと、これからも呼びかけていきたいと思っています。
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