連載コーナー
本音のエッセイ

2004年4月掲載

子どもの教育は親次第

ピーター・フランクルさん/数学者・大道芸人

ピーター・フランクルさん/数学者・大道芸人
1953年ハンガリー生まれ。1971年国際数学オリンピック金メダル。1988年より日本在住。11ヶ国語を話し60ヶ国以上を訪れている。ハンガリー学士院会員。著書「頭のよくなる本」、「僕が日本を選んだ理由」、他多数。NHK教育テレビ「マテマティカ」等、出演番組多数。

15年ほど前から日本で暮らし始めて感動したことはたくさんあったが、最もうれしく思った1つは教育レベルが非常に高かったこと。誰でも漢字をすらすら読めて、天才のように見えた。また、中学入試問題への国民的関心も高く、テレビ番組のネタにもされていた。戦後の奇跡的な経済成長と、この教育のレベルが高いことには深い関係があっただろう。

そこで最近心配なのは、教育レベルの低下である。文部省が20年間続けてきたゆとり教育の結果、著しく学力が下がってきた。日本という社会はかなり単一民族に近く、1億総中流で大多数の人の生活や教育の水準は五十歩百歩。大きな格差がなかった。

それがこれからの時代には崩れそうになっている。教育のレベルが下がったからといって、一流中学・高校や東大・京大のレベルが下がっているわけではなく、下のほうとトップとの差が広がってきたのだ。名門私立中学の親の平均収入は全国の親の平均の2倍程度で、東大生の親の平均収入も20年前に1000万円を超えた。これらの現象は、社会の二極化の進行を裏付けているように見える。つまり、ある程度高い収入を得られる人はかなり高いレベルの教育を受けた人が多くて、自分の子どもたちにも家庭教師や塾や私立校などお金を使って、高いレベルの教育を受けさせようとする。

一方、大多数の日本人の子どもは公立の学校に通い、教えられる内容が少なくなってきている。教育の貧富の差が進んでいる、と言ってよい。これは非常に悲しいことである。このままでは教育の格差は永久化されるばかりか、差がどんどん広がっていく一方だろう。今は、子どもに才能があっても親の収入が少ないとなかなか学力を伸ばせる環境にない。

しかし、日本の親にはあきらめないでほしい。子どもの教育に関して最大の責任者は国家でも学校でもなく親である。衣食住が足りている現代で、親が子どもに与えることができる最高のものは教育である。

必ずしも塾や私立学校に通わせるのが必要ではなく、親自らが学問・知識・学習に対する姿勢を子どもに伝えることが大切だ。姿勢を正して子どもと一緒に勉強に取り組み、できるだけ多くの時間を一緒に過ごし、学問の面白さや勉強の楽しさや知識豊富なことの素晴らしさを直に伝えていけば、子どもは自分から勉強に取り組むようになり、未来も開けるだろう。

今はもう他人任せで済む時代ではない。限られたお金と時間でも使い方によって、子どもに良い教育を与えることができるはずである。ぜひ、これからの日本のためにも親にはがんばっていってほしい。

(無断転載禁ず)

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