昆虫が好き…無力な生業!?
- 篠原 かをりさん/動物作家・昆虫研究家
- 慶應義塾大学SFC研究所上席所員。幼少の頃より生き物をこよなく愛し、自宅でドブネズミ、スナネズミ、ハツカネズミ、タランチュラなどさまざまな生き物の飼育経験がある。TBS『日立 世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターなどタレントとしても活動。
私は、昆虫という生き物が好きである。そして、その好きだという気持ちを垂れ流すことによって生計を立てている。
彼らが万人受けする動物でないことは承知している。近くにいると思うと鳥肌が立つくらい苦手な人もいることだろう。昆虫の持つ数限りない美点を説明して、誰かの気持ちを変えたいと思っているわけではないし、それができるとも思っていない。
結局のところ、昆虫が好きな人間がいる、ただそれだけである。我ながら、あまりにも無力な生業で生きているものだと不思議に思う。
理想はある。
カピバラという大型の齧歯類が一躍世間の人気者になったのは、カピバラモチーフのかわいらしいキャラクターが出現したことによると思う。人々は、カピバラのかわいらしさを知る人の目を通して、その要素を受け取り、現実のカピバラの愛し方を知ったのだと思う。それまでは、おそらく、動物園で出合っても、多くの人にとって、南米からやってきた巨大ネズミでしかなかっただろう。
この事象は、私の仕事における理想の一つである。自分の好きなものについて語ることは、その楽しみ方や愛し方の紹介なのだと思う。しかし、私の目で見えている昆虫と、昆虫が嫌いな人の目に見えている昆虫は、果たして同じものなのだろうか。私は、昆虫嫌いの人の目にそのかわいさが映らないのと全く同じくらい、昆虫の気持ち悪さや不気味さを見ていないのではないかと思う。本当は全ての人の目から昆虫を見てみたい。だから、今は、大学院で、人々が持つ昆虫のイメージの研究をしている。
よく「どうしても昆虫が苦手で、どうすれば克服できるか」と相談される。苦手を克服しようとする姿勢は、自分の人生に挑み続けているようでかっこいいなと思う。私も、この世に存在するものを一つでも多く愛して死にたいなと思っているから、気持ちはわかる。
けれど、同時に苦手なままでも良いと思っている。「かわいい」や「美しい」は、「気持ち悪さ」や「不気味さ」より崇高な存在ではないと思う。それぞれ同じだけの価値がある印象なのではないだろうか。「気持ち悪くて好き」、「不気味で好き」という人も存在するだろうし、もちろん、その感覚を理由に嫌う人もいる。そして、そう感じる人にしか語れない見え方もあるだろう。
ぜひ、私だけにこっそり教えてほしい。あくまで、私だけに。
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