連載コーナー
本音のエッセイ

2026年1月掲載

山ではスマホがあっても…

太田 昭彦さん/山岳ガイド

太田 昭彦さん/山岳ガイド
日本百名山、欧州アルプス、ヒマラヤ登山など豊富な経験を持つ。現在は中高年登山者と共に、低山歩きに勤しむ。登山教室「歩きにすと倶楽部」主宰。JTB「大人のトレッキングスクール」校長。著書に『山の神さま・仏さま』(山と渓谷社)。

「私でも、山に登れますか?」これから山に登りたいと考えている初心者からよく聞かれる質問だ。私は「日常生活が普通に送れていれば大丈夫です」と答えている。ただし、いきなり日本アルプスのような3000m級の山に、誰もが登れるわけではない。まずは歩行時間3〜4時間程度で、標高1000m以下の山から始めるという前提である。

登山の場合は体力だけでなく経験が大切だ。ここ数年は低山でも事故が増えているが、登山の事故で多いのが道迷いと転倒・滑落、山での病気だ。スマホで現在の位置が分かるようになった現代でも道迷いが多い。

大切なことは、地図の基本を学ぶこと。スマホで現在地と行く方向を「見る」だけではなく、等高線を「読む」ことで地形が理解できるようにしておきたい。例えば標高の高い場所から低い場所に等高線が膨らむように張り出していれば「尾根」。低い場所から高い場所に張り出していれば「谷」だ。

また、等高線の間隔が狭いと急斜面。広いと緩斜面ということが分かる。それらを知って周囲の地形を見ながら歩けば、道に迷う確率はかなり減るはずだ。

次に転倒・滑落を防ぐ方法だが、体力的に余裕のある山を選ぶこと。歩行時間に余裕をみておくことだ。中高年登山者は目安として、標準歩行時間(コースタイム)の1・5倍(休憩を入れて)を目途にしておけば、ゆっくり歩きが可能で無理がない。

特に下りでの事故が多いので、下りで足の疲労が強くなったら無理に歩き続けないで休憩をとることが大事。また、久しぶりに山に行く場合は、事前に自宅の周辺でウオーキングなどをしておくこと。登山前日にしっかり睡眠をとる、飲み過ぎない(笑)ことなどにも気を配りたい。

そして山での病気。これに関しては健康診断を受けておく、疲れていたら無理をせずに登山を中止する、引き返すなどの勇気も必要。特に雨天などの悪天候の場合は、体に負担がかかる。転倒・滑落のリスクも上がる。無理や頑張り過ぎは、登山では禁物だ。

以上のことを心がけて、楽しいはずの登山で事故を起こすことは絶対に避けてほしい。登山は悲しむ場ではなく、人生に喜びをもたらす場であるからだ。

山岳ガイドになって30年。今では70代、80代の方々とも山歩きを楽しんでいる。それらシルバー層の方々は、少しでも長く山に登るための努力と準備を惜しまない。生きがいとは、そういうものであると思う。夢には努力が必要であることを、日々教えられている。感謝!

(無断転載禁ず)

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