気づきを与えられるデザイナーでありたい。
- 藤原 光平 さん/デザイナー
- 1997年福岡県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、正多角形の中で唯一表現できない形である正二角形から名前をつけた「SEINIKAKU DESIGN」として2020年に独立。「新しい価値やこれまでにない可能性を、デザインを通して想像し、創造する。」をモットーに、ジャンルに捉われることなく、平面から立体、空間や映像までマルチなデザイン活動を行う。
https://seinikaku.com
はじめに
何気なく生活をしていると、忘れ去られていることが多々あります。
この世界に生まれたばかりの頃はきちんと感じ取っていたであろう驚きや疑問、そして日常に潜む些細(ささい)な美しさたちです。小さな頃に感じた記憶を少しだけ抽出して思い出し、掘り下げる。そしてもう一度体験してみる。そうすることで忘れ去られていた些細な美しさの片鱗(へんりん)が顔を出し、日常に気づきをもたらしてくれます。
そんな体験をしている時、私は斯(か)くも世界は美しいのかと思い知らされます。偶然的に些細な発見をする。そうすることでできるアウトプットには無限の可能性が潜んでいると私は信じています。
stool SIZEと発想の起源
私の代表作である、紙の椅子『stool SIZE』は折り紙を折って遊んでいる時に発見したヘンテコな形に着想を得ました。その時に私は紙を折るだけでこんな形ができるのかと折り紙の面白さを再確認しました。それと同時にその形がだんだんと椅子に見えてきました。そんな感じで、小さい頃によく体験した見立て遊びのような感じで制作が始まることは多いです。
目の前にある折り紙を見て「座れそう」と思ったことがきっかけで『stool SIZE』は生まれました。子どもならではのような感覚ですが、そんな、子どもの時は確かに感じていて、大人になった今は風のように通り過ぎていってしまう、繊細な感覚が気づきの第一歩だと信じています。
そこから約1年半をかけて、手作業のみで人が1人座れる紙の椅子が誕生しました。
stool SIZEの影響と気づき
そんな紙の椅子『stool SIZE』ですが、多くの人に気づきと発見を生むことができました。「紙」を折るだけで座れる強度が出るんだ、という驚きはもちろん、見た目の折り紙の美しさや紙の強度などについて多くの反響を頂くことができました。中でもうれしかったのは、「椅子」や「家具」という存在と人間との関係性を改めて考えるきっかけになったという意見でした。
普段何気なく使用していた椅子が紙で作られるだけで、椅子に座る、という動作を尊く大事に思うことができた。モノを使っているという実感が湧いて大切にしようと思えた。そんな言葉を聞いた時、私はデザインをやっていて良かったと感じます。
これから
私は普段ジャンルを問わずデザイン活動を行っています(平面~立体、映像など)。その傍らで自主制作として、気づきを生む制作を多々続けています。
そんな自主制作をやっていると、実際に頂く具体的なお仕事の中でもそれらの経験が生きることは多いように感じています。どんな表現手法でもどんな仕事内容でも、人の心に訴えかける潜在的なニーズというものが大切になってくると感じることは多いです。
そんなことを考えられる、気づきを与えられるデザイナーであり続けられるようにこれからもデザインを続けていきたいです。
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