誰もが何度でもやり直せる社会を目指して
- 川口 加奈さん/NPO法人 Homedoor理事長
- 1991年大阪生まれ。14歳でホームレス問題に出合い、ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊き出し等の活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等で累計500名以上を支援。世界経済フォーラムのGlobal Shapersや、ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013若手リーダー部門、Googleインパクトチャレンジ グランプリにも選出。大阪市立大学卒業。
http://www.homedoor.org/
誰もが何度でもやり直せる社会を目指し、2010年に活動を開始しました。自己責任論が根強い日本では、一度、ホームレス状態に陥ると、路上から脱出できる手段は限られています。ホームレスのまま生涯を終える人も後を絶たず、大阪市では、200人以上が路上で凍死や餓死をされた年もありました。そんなホームレス問題を解決すべく、ホームレスの人の特技を生かしたシェアサイクル「HUBchari」などへの就労支援、生活支援、そして、住まいの提供を行い、のべ500名以上の路上脱出の支援を行ってきました。
14歳のときにホームレス問題に出合ったのがきっかけです。通学で電車を乗り換えていたJR環状線新今宮駅周辺は、あいりん地区と呼ばれるホームレスの人が多いエリアが広がっており、親からも近づいてはいけないと言われていました。しかし、反抗期を迎える中、近づくなと言われると「なぜ、あそこにはホームレスの人が集まっているんだろう?」と興味が湧き、親に黙って炊き出しに参加しました。初めてホームレスの人と話してみて、なりたくてホームレスになっているわけではない、ホームレスにならざるを得ない理由があると気づき、何かできることはないかと考えました。当時は同世代の中高生によるホームレス襲撃事件が多発していたこともあり、同世代に問題を伝えようと、作文を全校集会で読んだり、フィールドワークを実施したりと活動し始めました。
中学、高校とホームレス問題に取り組む中で、高校3年生のときには、全国3000人の中からボランティアの親善大使に選ばれました。そして、ワシントンD.C.に行って、各国の親善大使と国際会議に参加しました。そこで、他の親善大使から「あなたは社会に良さそうなことをしたいだけじゃないの?それとも、社会を変えたいの?」と尋ねられ、それまでのホームレス状態を単によくする対症療法的な活動では意味がないと感じ、根本的に問題を解決する活動をしようと、ホームレス問題をもう一度学び直そうと、ホームレス支援が進む大阪市立大学に進学しました。そして、大学2年生のときに設立したのがHomedoorです。
そもそも、なぜホームレス状態になったらそこから脱出できないのかというと、住まいと貯金と仕事という3つの要素を同時に手に入れる必要があるけれど、これらが複雑に相関し合っているので、3つを同時に手に入れるのは難しいという要因が分かりました。そこで、その3つを段階的に手に入れられるようなステップを提供しようと考えました。特に、路上からでも働ける仕事を提供し、ちょっとずつ貯金してもらい、家を借りられるようにサポートし、家が借りられたら次の仕事を紹介するというステップを提供しています。現在、4つの職種を用意し、30名に就労の機会を提供しています。
宿泊場所の提供を行うことを目標にしています。しかし、ホームレスの人から宿泊費をもらうことは難しいので寄付を募りながら一時的に宿泊できる場をちょっとずつ増やしていますが、日本では、ホームレス問題は偏見が根深く、なかなかご寄付いただくことはできません。少しずつ、ホームレス問題に関心を寄せていただけるよう情報発信も頑張っております。皆さんも、ぜひホームページ(www.homedoor.org)をのぞいてください!
(無断転載禁ず)