連載コーナー
本音のエッセイ

2009年7月掲載

日本の「プロムス」

三枝 成彰さん/作曲家

三枝 成彰さん/作曲家
1942年生まれ。東京芸術大学卒業、同大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「Jr.バタフライ」、オラトリオ「ヤマトタケル」。2007年、紫綬褒章受章。2008年、モノオペラ「悲嘆」を世界初演したほか、日本人初となるプッチーニ国際賞を受賞した。

2年前の夏から、「はじめてのクラシック」というコンサートの制作に取り組んでいる。

これは、クラシック音楽の演奏会に行ったことがない、あるいは、興味はあるけれども、どこから入ったらいいのか分からないという若い人たちに向けて行っているコンサートだ。“中学生・高校生のための”と銘打ってはいるが、もちろん、お子さんも小学生以上なら大丈夫だし、一般の方もご入場いただけるものである。今年は7月に大阪、8月に東京で行う。

初めてクラシック音楽を聴こうとするとき、皆さんの頭にはさまざまな疑問が湧いてくることだろう。「クラシック音楽とは何か?」「音楽はどうやって作るのか?」「オーケストラはどうやって編成されているのか?」「演奏家にはどんな苦労があるのか?」「歴史的に有名な作曲家は、実際、どんな人柄だったのか?」などなど。それにお答えするコーナーも用意した。お客さんにお配りするプログラムにも、そのあたりのことが書いてある。

なぜこのようなコンサートを若い人たちに聴いてほしいと思ったかというと、イギリスの「プロムス」という国民的音楽祭のことが念頭にあったからだ。BBC(英国放送協会)が主催し、毎年夏の3カ月間、ロンドンを中心としたイギリス各地でさまざまなコンサートが行われる、114年の歴史を持つ催しである。最後の一晩は、あのアルバート・ホールで、「威風堂々」や「ルール・ブリタニア」などをお客さんが合唱し、オリンピックさながらの熱狂のうちに終わるのだが、何がうらやましいといって、あれほど音楽会というものが国民に浸透し、老若男女に楽しまれていることが、私にはとてもうらやましい。

若い人たちが、これから海外に出て仕事をする機会も増えていくだろう。その中で、西洋音楽を聴いて育った欧米人たちと付き合わねばならない場面も多く出てくるに違いない。インテリ層の人たちにとっては、主な作曲家とその作品を知っていることが当たり前の教養である。その上で、曲の解釈がどうだとか、オペラの演出の良し悪しなどが語れる人間を、自分たちと同等だとみなす。残念ながらこと文化においては、とにかく彼らと同じ土俵に立たなければ、まともに付き合ってももらえないのである。よく日本人はそんな国際舞台で話題についていけないなどといわれるが、若いうちから折りにふれてなじんでおけば、何ら問題はない。好きになれればなお良し。知れば深い世界なのだ。

そんな新たな楽しみ発見の一助となればと考えて始めた企画だが、これが日本の「プロムス」だ、といえるまでに育ってくれればいいと思っている。

(無断転載禁ず)

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