スウェーデン国民の、原発に取り組む姿勢
- 川上 麻衣子さん/女優・ガラスデザイナー
- 1966年生まれ。14歳で劇団に所属し、NHKドラマ人間模様「絆」でデビュー。その後「3年B組金八先生」に出演。現在、映画、TVドラマ、舞台で活躍しながら、吹きガラスで、個展なども催している。映画「でべそ」で第6回日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞を受賞。また、スウェーデンの絵本2冊を翻訳。
1966年2月。スウェーデン、ストックホルムで生まれた私は、幼少期の一時期を暮らした経験もあることから、さまざまな面で、そのライフスタイルなどの質問を受けてきました。
最近では、IKEAやH&Mなどの日本での知名度が上がっていたところに、「原発」に対する政府の対応面からもスウェーデンという国への注目が急速に集まっているようです。取材を受けるたびに、スウェーデンの印象を「自立した大人の国」という言葉で表現してきましたが、日本が震災によって天災から人災に変わろうとしているこの状況に直面して、改めてスウェーデン人の意識の高さを教えられています。
正直なところ、スウェーデンと深い関わりを持ち、たびたび訪れることで街の美しさや、人の温かさ、自然の豊かさに感謝し太陽を慈しむ人々の生き方に憧れを抱いてきましたが、その根拠となる国の政策などについては、ほとんど何も知らずにいました。ですから、先日参加したスウェーデン大使館での講義「スウェーデンの原子力政策~福島第一の影響」は、とても衝撃的なものでした。
原発問題に対して、スウェーデンが現在注目されている理由の一つは、世界で初めて、1980年の国民投票で、2010年までに原発を廃止していくことを決めたということにあります。後の2009年に、2010年までに撤退というのは、現実的に不可能という結論を出しましたが、まずは国をあげて取り組むという姿勢が、いかにもスウェーデンらしい点だと感心させられます。
時間的に不可能だという結論には至りましたが、現在も現実的に可能な範囲でエネルギー転換を進めていこうとしています。
そこには、圧倒的に国を信頼し、国民一人一人が高い意識を持って、環境問題に取り組んでいる姿があります。
チェルノブイリの事故での経験も影響しているのでしょう。今回の福島原発事故直後のスウェーデンでの国民調査では、原発反対派が2倍に増え、賛成派が半分以下になっていることが分かりましたが、それでも、国に対しての信頼は変化がないという結果が出ています。
「自立」をキーワードにスウェーデンでは小さいころから「出る杭をのばす」教育が行われ、社会もそれを受け入れる体制が整っているようです。
人見知りな故か不思議なくらい、日本人と性格が似ているとされるスウェーデン人に学びたいことは、まだまだたくさんありそうです。
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