連載コーナー
本音のエッセイ

2017年4月掲載

片づけブームが引き起こす負の連鎖

梶ヶ谷 陽子さん/整理収納アドバイザー

梶ヶ谷 陽子さん/整理収納アドバイザー
2013年10月より整理収納アドバイザーとしての活動を本格的に開始。日本テレビ「ヒルナンデス」に「収納名人」として登場以降テレビ出演多数。企業研修講師、講演、商品PR、テレビ、書籍など幅広く活躍中。著書に『小さな工夫で毎日が気持ちいい、ためない暮らし』(マイナビ出版)など。

長く続く片づけブーム。毎月のように収納本が発売され、「片づけ」「断捨離」「ミニマリスト」などの特集が多く組まれた雑誌も必ず本屋さんに行けば目に入ります。

そこに映し出されているのは「物を最小限に持った暮らし」や「モデルルームのようなスッキリした家」そして「黒と白だけの空間」などなど。そこに理想を持つことはとても素晴らしいことで、そこを目標として片づけを始めるのも決して悪いことではありません。ですが、この「片づけブーム」が逆に家庭内でのけんかを引き起こしているのも事実です。1つの例を挙げると、奥さまは収納本やテレビのビフォーアフターなどを見て、「片づけスイッチ」が入った。家中の物を見直し、不要な物と感じるものは何から何まで手放した。「これはもう使わない」「これはただのゴミ」などと、持ち主の声を聞かずに手放した。ですが、これは本来の片づけではありません。物の価値は人それぞれで、持ち主にしか分からないことだからです。

もう1つ、これも片づけブームの中で起こっていること。収納本に掲載されているような家を目指して、家の中を美しく整えた。全部を白で統一、全部を箱やボックスへ。外に出ている物は何もなく、家がとてもスッキリした。でも、「どこに何があるか分からなくなった」「子どもの部屋が子どもの部屋ではないように」。こんな声を多く聞くようになりました。

片づけブームで家が整っていくのは素晴らしいことです。ですが、家族の声を聞かずに作り上げていく空間は、どんなにスッキリしていても、どんなに美しくても、一人よがりの空間でしかないわけです。

家族みんなが心地良く過ごせる空間が、はたして「物が全くなく何も出ていないスッキリ美しい空間」なのか、今一度考えてほしいと思います。子どもがいれば散らかるのは当然、子どもがいればおもちゃが多いのも当然。家族がいれば一人一人の考え方が違い、一人一人に合う収納法もそれぞれです。ぜひ、家族の声を聞きながら本当にあるべき「わが家のかたち」を見つけてほしいと思います。

片づけは家族みんなの笑顔につながるものです。負の連鎖を引き起こしてしまうのは本来の片づけではありません。この片づけブームが、家庭内に「負の連鎖」を起こすものにならないことを願いつつ、私は私の思う「片づけ」を伝えていきたいと思っています。

(無断転載禁ず)

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