旅から日常へ 〜ふろしきの可能性は無限大〜
- 横山 功さん/ふろしき王子
- 1979年東京・浅草生まれ。武蔵野美術大学卒。豊かな生態系を再生するため、使い捨てずに創意工夫するふろしきとその心を探究し、25年間毎日愛用。ふろしきの縫製や柄のデザインも行う。「ふろしき王子」の愛称で各メディアで紹介。現在は外国人向けの講座にも力を注ぐ。特技は荷物を揺らさない忍者走りと似顔絵。著書に『毎日カワイイふろしき』(玄光社)ほか。
http://furoshikiouji.asia
ふろしきを使い始めて
毎日ふろしきを背負って25年目。固い信念があるわけではなく、むしろ楽を追求した消去法で残っています。ふろしきと体がセットで磨かれ、利便性が日々向上しています。
使い捨てのゴミを減らすために始めましたが、使ってみると我慢のエコではなく便利さと合わせて創造の喜びにあふれていました。今では体の一部を超えて、ふろしきは自分を手伝うたくさんの友人のような存在です。
江戸時代のふろしきと現代のかばん
この機会に、改めてふろしきを見つめ直してみます。街を行く人々は、たいてい何らかのバッグを提げていますが、江戸時代の町人はみんなふろしき包みを持っていたのでしょうか。
浮世絵を眺めてみると、ふろしきもありますが手ぶらも意外と多く、桶やかごも使われています。移動距離が短ければ手で直接運べるため手ぶらで大丈夫。少し距離があるなら桶やかごを使い、より遠くへはふろしきで包んだり、背負っていきます。
現代のかばんは、桶やかごのような一時的なものではなく、どちらかというと長距離に対応したふろしきに近いです。暮らしが町内で完結できていた江戸の町人よりも、通勤という一人旅を毎日こなしている現代人の方がふろしきに向いたライフスタイルです。
かばんをふろしきに替えたらどうなるでしょうか。トランクほど大がかりでないため、遠出のフットワークは軽くなるでしょう。しかし、長距離の移動と運搬がたやすくなるほど、自給自足や地産地消といった地に足の着いた日常から離れてしまいます。また、便利すぎるふろしきは単独行動を助けるため、人同士のつながりさえ断ちかねません。
ふろしきのあるべき姿とは
そこで、これからのふろしきのあるべき姿として、人と人の結び役として積極的に助け合うのはいかがでしょうか。重い荷物もふろしきに分けあって背負えば、出会いや交流が生まれます。
地域の人々とのつながりが太くなるほど、ふろしきばかりでなく、桶やかごの気楽さが復活し、その先の手ぶら生活も夢ではありません。ふろしきを使う機会は、銭湯に着替えを包んでいく時くらいになって、文字通り「風呂敷」となるでしょう。
物理的な距離を克服するために使われてきたふろしきから、人と人の距離を縮める一枚へ。レシピ(結び方)を覚えなくても、中身や状況に合わせて都度工夫しながら自己流が生まれますし、仲間との技の共有も有意義です。包み運ぶだけでなく、羽織や帽子など身に着けることもでき、生地次第ではおしゃれへの展開も無限大。
これからの展望
僕のこれからの展望は、オリジナルデザインのふろしきを作っていくことと、海外の方にもふろしきの良さを伝えていくことです。
さあ、みんなでふろしきを結び合っていきましょう!
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