針と糸で描く 刺繍(ししゅう)絵の世界
- 草野 友紀さん/刺繍画家
- 大阪府生まれ。旧姓は堀内。1歳の男の子の母。2008年より独学で手刺繍の絵を描き始める。トヨタ自動車やNTTドコモなどの広告ビジュアルを制作。阪急うめだ本店などで個展も開催。19年「第24回NHKハート展」の作画アーティストに選出され出展。18年に上梓した『堀内友紀の動物たちの刺繍絵』(河出書房新社)は中国語版も出版された。 Instagramアカウント:@yukikusano_
刺繍画家になったきっかけ
針や糸とは無縁で生きてきた私が刺繍の仕事を始めたのは2008年のことです。毎日同じ場所へ通い同じ人たちに会う働き方ではなく、さまざまな人や場所に出会いながらマイペースに働きたいと小学生の頃から考えていました。
成人を迎えて、どのような職業に就きたいか真剣に考えた際に「自分に一番向いていることを仕事にしたい」と思い、幼い頃から手先を使うことや絵を描くことが好きだったので、手刺繍を施した自作の布雑貨を販売することにしました。
ありがたいことに作品を購入してくださるお客さまが増え、次第に雑貨よりも刺繍に人気が集まり、刺繍を雑貨に仕立てるのではなく一枚の絵として制作するようになりました。百貨店での個展開催やSNSで作品を発表していくうちに企業広告のビジュアル制作の依頼が舞い込み、自動車メーカーや携帯電話会社の広告にも刺繍絵を使用していただきました。活動開始から約10年後の2018年には初の著書を出版し、翌年中国で翻訳版が出版されました。
刺繍絵の魅力
私は刺繍をする時に「神は細部に宿る」という言葉を大切にしています。刺繍糸1本の細さは1ミリにも満たず、針の先端はそれよりもさらに細いです。布の目は無数にあり、どの布目に針を刺すか狙いを定めます。そのような1ミリ以下の世界で手と目と頭を繰り返し動かして、長い時間をかけて作品が生まれます。
そうして出来上がった刺繍絵はどの部分を切り取ってみても物語を感じることができ、見ている方に長い時間楽しんでいただけるものになっているのではないかと感じています。
動物刺繍へのこだわり
私の刺繍絵にはたくさんの動物が登場しますが、動物を刺繍することになったきっかけは雑貨を制作販売していた頃に応援してくださったお客さまたちの声でした。
当時、お客さまから犬や猫、うさぎを刺繍してほしいなどのお声を頂いてはうれしくなり、さまざまな動物の刺繍に挑戦しました。「どんな動物を刺繍したら楽しんでもらえるかな?」と、作品を見てくださる方の喜ぶ顔を想像しながら現在も動物の刺繍を続けています。
これからの夢
かねてより絵本の制作に興味があり、2022年に長男を出産したことでその想いはよりいっそう温まっています。
無限大の想像力を持つ小さな子どもたちや、日々子育てに奮闘する忙しい大人たちに、癒やしや楽しいひとときを過ごしてもらえるような一冊を刺繍絵で作ることができたら…。息子が絵本を楽しめる年齢のうちに実現できることを願っています。
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