温泉旅は人生のラグジュアリー
- 石井 宏子さん/温泉ビューティⓇ研究家・旅行作家
- 温泉の美容力を研究する日本でただ一人の温泉ビューティ研究家。取材・執筆、講演など年の半分は日本・世界を旅する。温泉地の自然環境に着目し、ドイツ・ミュンヘン大学アンゲラ・シュウ気候医学教授に学び「気候療法士」資格を取得。温泉、自然環境、食事、宿での過ごし方などを通じて、心も体もきれいになる新しい旅“ビューティツーリズム”を提唱。
https://www.onsenbeauty.com
旅に出かけて温泉に入り、宿に泊まることがライフワーク、「旅人が人生」になって15年がたちました。1年の半分は温泉地に滞在して、取材し写真を撮って記事を書いています。前職は、外資系の化粧品やファッションブランドのマーケティング・広報の仕事。なぜラグジュアリービジネスの世界から温泉の仕事へ?と、驚かれますが、「旅」とは人生のぜいたくな時間、「温泉」こそ地球がくれた天然の化粧品と感じているので、むしろ究極のラグジュアリーな世界にいる気分なのです。
「温泉ビューティ研究家」の研究テーマは、ビューティツーリズム。温泉に入ること、その土地の旬を味わう食事、自然環境、宿や人、土地の文化との出会いなど、温泉を旅することの全てに美と健康のヒントがあると考えて研究をしています。
温泉は生きている地球のさまざまな成分を含み、体を深く長く温めてくれます。
たとえば温泉の泉質に着目すると、美と健康の目的別に選ぶ楽しみも見つかります。すべすべ美肌なら炭酸水素塩泉かアルカリ性の温泉へ。硫酸塩泉は武将たちが傷を癒やした名湯も多く、温泉の水分を肌へ運びしっとり潤う美人の湯。塩化物泉は塩が肌にベールのように残り、湯上り後もしっとりぽかぽかが持続。硫黄泉や二酸化炭素泉は血行を促進させて、肌や体の代謝を助けます。酸性泉や含鉄泉や放射能泉などは、温泉の適度な刺激が体によい影響を及ぼすという研究報告もあります。
さらに温泉の適応症には、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)もあり、外出自粛で家にこもり、心身にストレスを抱える方の救いとなることでしょう。
温泉地をとりまく自然環境や滞在中の食事も免疫力を上げる助けになります。
私がドイツで学んだ気候療法の観点では、海の温泉は潮風にのって海洋性ミネラルが運ばれ、吸い込むことで気道に潤いをもたらし、東洋医学的にいえば清肺作用を助けます。山の温泉は、標高差により心肺を活性化し、森林浴によるリラックス作用もあります。温泉街を浴衣で散歩、旅館でのんびり過ごすなど、旅ならではの体験も心身を解放させ元気を与えてくれます。旅の食事は、その土地ならではの旬を味わうことができ、体にとっても季節ごとの薬膳になります。
温泉旅は心の栄養です。人生をより豊かに楽しく過ごすために、ひとりでも多くの方に温泉旅へ出かけていただきたいと願って研究を重ね、旅を続けて記事を書いていきたいと思います。
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