賃貸借関係において貸主・借主どちらが修繕義務を負うかについては、あくまで賃貸借契約での定めによります。ところが、修繕義務の範囲については契約書に明記していないこともあるようで、しばしばトラブルの原因になっています。
【使用状況によるものは借主負担】
家屋の賃貸借においては所有者である貸主が破損箇所の修繕を負担するのが原則です。しかし、借主がたばこをよく吸うために壁紙が汚れたというような場合にまで、その張り替えを貸主が負担するのは公平とはいえません。契約において修繕義務の範囲を明記していない場合、公平の原則や慣例により次のように区別するのが妥当でしょう。
①借主負担…使用状況によってその劣化、破損に影響を受けるもの、畳・ふすま・壁紙など、②貸主負担…通常の使用で耐用年数を経過すれば、取替えの必要があるもの、給排水・電気設備など
壁のスイッチは②にあたり、借主がよほど乱暴な使い方をした結果でない限り、貸主が修繕義務を負うと考えられます。
【決定事項は文書にして】
貸主の修繕に関する対応としては、自ら業者へ依頼する他に、借主にその手配を任せるのもよいでしょう。
借主が修繕費用を負担した場合、支払いと同時に借主は貸主に対してその必要経費の償還を請求できます。この請求に対し、貸主が支払いに応じない場合、借主は次回の家賃支払いを拒むことも可能ですので当事者間できちんと話し合う必要があるでしょう。
トラブルを未然に防ぐためには、賃貸借契約締結時に対象箇所をあげて修繕義務の範囲を明確にしておくことが大切です。修繕工事に際しては、見積書や領収書などをきちんと保管し、当事者間で決めたことは覚書等を交わしておいた方がよいでしょう。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
1994年11月掲載