何をどうわかりやすく説明されても、いろいろと難しい点があるのが“大規模修繕工事”。ましてや、多額の費用を要し、建物の根幹に関わる共用部分の工事をするわけですから、失敗は許されません。と言うよりも、絶対失敗なんてしたくない、と思うのが居住者の気持ちでしょう。これまで工事に入る前の基礎的な部分について見てきましたが、現在、大規模修繕工事真っ最中、もしくは検討中という管理組合もたくさんあるはず。そこで、ここでは“番外編”として大規模修繕工事に関するさまざまな疑問点をピックアップし、Q&A方式で解説を行います。
「建物診断」は、鉄筋コンクリートなどの躯体構造、外壁、鉄部、屋上防水などの仕上げ、給排水などの設備の劣化状況を診断します。
診断の目的は
費用は診断レベルによって差はありますが、100戸のマンションで戸当たり1万円前後が目安とされています。
一方、「耐震診断」は地震のレベルによって建物が耐えられる基準を診断するものです。現在の「耐震基準」は昭和56年6月1日施行の「新耐震設計基準」下で定められたものが一般的です。新耐震基準が施行され、それ以前に建てられた建物は「旧耐震」と呼ばれ、現行の耐震基準には適合しなくなりました。
いくつかの自治体ではこの耐震診断に助成金を出す制度を設けていますが、マンションの管理組合では数百万円単位でかかる費用の問題から区分所有者の合意が得られず、診断を行う管理組合が少ないのが現状のようです。
大規模修繕工事を行う際の問題点の多くは工事車両、騒音、ほこり、ゴミなどです。
工事計画の段階から近隣へ小まめな報告をすることが望ましいでしょう。
具体的な説明は工事業者と協力して行います。工事期間、作業時間、休日や深夜は作業を行わない、などできるだけ近隣に迷惑をかけないような工事仕様、安全性の確認などの情報を伝えるべきです。トラブルにならないよう、説明会の席上で約束事を決めると良いかもしれません。
また、当事者であるマンション居住者の協力も当然、不可欠です。
ベランダの片付けや必要に応じ在宅の要請など、できるだけ早い時期に広報しなければなりません。もちろん、危険な場所への立ち入り禁止や工程による作業の騒音が出る時間を事前に説明しておく必要があります。
こうした近隣や居住者への対応は、実際に作業を行う業者が一番よく知っています。逆に、マンションの工事実績が多ければ、こうしたノウハウも兼ね備えていると考えられるので、業者選定の参考にしても良いかもしれません。
単独ではなかなか実施できない耐震補強。
最近では大規模改修工事に組み入れるケースも…
中・高層建物であるマンションの大規模修繕工事では足場を設置しなければ正確な調査はできません。だからと言って工事計画を立てるための調査で足場を設置し、完全な調査を行うことは、費用の面から見て得策とは言えません。
そのため、見積もりや工事仕様の設計段階ではサンプリング調査を一般的に行っています。これは手の届く範囲の各階の外壁に生じているひび割れやクラックなどの劣化部分の数量を、上層部の不確定要素を加味し全体の数量を予測し、できるだけ見積もり内で工事が行われるようにするものです。
ただし、いつも見積り通りの補修数量でおさまるとは限りません。
このため、契約時に追加工事による費用の支出分の取り決めなど、きちんと業者と話し合い、ルールを決めておくことが一番です。
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