地域再生を考える

2022年6月掲載

旧街道沿いの歴史ある町並みを次世代へ
コロナ禍でも「可部(かべ)のいつも通り」

可部夢街道まちづくりの会 大旦那 梶川 暢之さん

可部夢街道まちづくりの会 大旦那
梶川 暢之さん
1934年広島市生まれ。マツダ株式会社を定年退職後、可部地区社会福祉協議会副会長、NPO法人ウイングかべ副理事長などこれまでさまざまな地域活動に携わる。崩れゆく可部の町並みに危機感を持ち地元有志と共に会を結成。
可部の昔

私がまちづくり活動を行っている可部は広島市の北部に位置し、中国山地から瀬戸内海に流れる太田川の舟運と、出雲・石見をつなぐ街道の要衝に形づくられた町であったといわれています。戦国期には高松城の城下町として整備され、江戸時代に入ると酒・醤油の醸造業、山繭織、鋳物業などで栄えました。可部は山陰と広島を結ぶ拠点としてさまざまな物資や人が行き交い、当時は大変にぎわったと想像できます。

今でもその名残は少なからずあり、当時栄えたであろう旧街道沿いには、「平入り」といわれる様式の建物が、街道に面して特徴的に存在しており、袖卯建や厨子二階、虫籠窓といった町家造りの様式が特徴的です。さらに「折り目」という城下町の防御などのために直角に折り曲げて計画された道筋や、かつて舟運で栄えたことを示す遺構など、歴史や文化が残っています。

会の結成

このような歴史情緒ある町並みですが、昭和に入ると、生活様式の変化や、道路整備、大型スーパーの出店、団地開発などが進むことで旧街道周辺への人の流れが変わり、かつてにぎわった商店も住民の高齢化・後継者不足などが重なり、活用されなくなり、町の空洞化を感じるようになりました。

そういった中、2003年に地域の玄関口であるJR可部駅の西口広場の整備を契機として、地域でのまちづくりの気運が高まり「可部夢街道まちづくりの会」を結成しました。

可部のまちづくり

会の立ち上げから今日までまちづくりに関するさまざまな活動を行ってきましたが、現在の大きな活動は3点あります。

一つ目は「花の散歩道」。可部を訪れた際はぜひ歩いてみてください。通りの少ない路地道を落ち着いた雰囲気と花の彩りで皆さまを迎えます。きっと元気になる散歩道となるはずです。この「花の散歩道」は結成初期より続けており、今年で19年目となる取り組みです。JR可部駅から続く約1キロの路地道をプランターに植え付けた花でつなぎ、路地道に彩りを与えてくれます。

二つ目は歴史ある町並みの維持管理。冒頭に述べた通り、可部には歴史情緒ある町並みが少なからず残っています。しかしながら、さまざまな事情で活用されなくなった古民家などは、歴史的価値を再考されることが少なく、個人の所有物であるが故に解体されるケースが目立ってしまいます。

そこで会では、2013年度に「町並みづくりガイドライン」を作成。これまでは特に決まりなく建物改修が行われてきた中、あくまでも、法的な拘束を伴わない住民の努力目標として推進し、町並みづくりの基本として活用を促す趣向としました。

さらに2018年度には、広島市の補助事業として「可部古民家情報バンク」を立ち上げました。専門家による空き家の発生抑制につながるセミナーやDIY講座を通じて、空き家の利活用を促す取り組みなどを行っています。

三つ目は「可部の町めぐり」と題したイベントの開催。ボランティアガイドによる寺社・史跡めぐりツアー、酒蔵コンサート、歩行者天国、地域ならではの特産品の販売など盛りだくさんの内容です。可部の昔と今をめぐり、ふれあい、味わうことができるイベントとして毎年10月に1日限定で開催し、約1500人の来場者に可部の魅力を楽しんでいただいています。

可部の町めぐりは2019年まで16回毎年開催してきましたが、2020年からは新型コロナウイルスの影響を受け中止になりました。

しかしながらコロナ禍でもできる範囲でのまちづくりを考え、地域がいつもの日常へ早く戻ることを願い「可部のいつも通り」と名付けたイベントに変更し開催しています。期間は2週間設け、旧街道沿いに並ぶ建物に一輪挿しを飾り、夜間は限定的にライトアップし、花の散歩道にも地域の方が書いた元気になれるメッセージボードを飾ることで、来訪者が密になることなく楽しめる趣向を考え進めています。

これからの展望

活動を始めて19年目です。これまでさまざまな場面で評価していただきました。近年では2019年度に住宅生産振興財団などが主催する「第15回住まいのまちなみコンクール」にて、「住まいのまちなみ賞」を受賞。続く2020年度には広島市が主催する「ひろしま街づくりデザイン賞」にて「大賞」を受賞させていただきました。選考理由として、これまでの活動に加え、世代交代しながらまちづくりを進めている点や、SNSなどを活用した広報活動により地域の魅力を積極的に発信し次世代の参加につなげていることなどが評価されたと聞きます。

現在、新型コロナウイルスの影響もあり各地で多くのイベントや取り組みが中止や変更になっています。会でも若いメンバーと共に工夫を凝らし、このような時だからこそ、地域との連携は密にして、より顔の見える活動を目指しています。

可部のまちづくりの応援をよろしくお願いします!

「地域再生を考える」編集委員会

  • 可部の町並み

    可部の町並み

  • 「花の散歩道」で使うプランターの植え替え作業の様子

    「花の散歩道」で使うプランターの植え替え作業の様子

  • 可部夢街道町並みづくりガイドライン

    可部夢街道町並みづくりガイドライン

  • まちづくりDIY講座

    まちづくりDIY講座

  • 「可部の町めぐり」の様子

    「可部の町めぐり」の様子

  • 「可部のいつも通り」で、旧街道沿いに一輪挿しを飾る

    「可部のいつも通り」で、旧街道沿いに一輪挿しを飾る

  • 「可部のいつも通り」で、花の散歩道に飾る元気になるメッセージボード

    「可部のいつも通り」で、花の散歩道に飾る元気になるメッセージボード

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