地域再生を考える

2024年7月掲載

まつりづくりとまちづくり
愛知県一宮市での「志民」活動

NPO法人志民連いちのみや理事長 税理士 星野 博さん

NPO法人志民連いちのみや理事長 税理士
星野 博さん
1958年一宮市生まれ。税理士として中小企業支援業務を行いつつ、志民連いちのみや理事長として地域活性化活動を展開。市民イベント「杜の宮市」・コミュニティカフェ「com-cafe三八屋」・地ビール工房「一宮ブルワリー」などを運営。「一宮市市民活動支援センター」統括マネージャー。

『いつまでも知らんぷりを続ける「死民」でなく 文句ばかりを言うが何も動かない「私民」でなく 地域へ自己責任で能動的に働きかけていく「志民」へ』

至学館大学学長の谷岡郁子さんが今世紀初頭に定義づけた「志民」概念を得て、私たちは「まつりづくり」と名づけるさまざまなまちづくり活動を展開しています。NPO法人志民連いちのみやの活動の一部をお伝えします。

一宮って?…巨大繊維産業と地域性

愛知県一宮市は、尾張国一之宮真清田(ますみだ)神社を地域の核としてまちがつくられ、18世紀に始まった門前市「三八市(さんぱちいち)」が定着して本町通(ほんまちどおり)商店街が形成されました。木曽川の豊富な水、豊かで安定した濃尾平野などの環境に加え、名古屋から近いことから交通の要所としての役割も持ち、古くから繊維産業が勃興し、毛織物が盛んに。第2次世界大戦後の物資不足から復興期には、莫大な富を地域へもたらしました。繊維産業のヒトやカネを基盤に、地域の商業が確保され、社会資本が整備され、住民サービスも安定していました。

しかし、繊維を地場産業とした他の多くの地域同様、一宮の繁栄は徐々に終焉していきました。繊維産業の富の巨大さに頼ってきたせいか、その後ビジネスでもソーシャルでも新たな動きは弱いまま時代が過ぎていきました。過去の世代の大きなバブルの蓄積はあるものの、現役世代の資源不足、支援不足、機会不足が続きました。

まつりづくりを、手づくりで

一宮最大のイベントである「おりもの感謝祭一宮七夕まつり」は莫大な資金を使う一方で、地元住民、とりわけ若年層では関心のない人が増えていました。そんな中、1998年の七夕まつりの際に、真清田神社裏の公園にある土俵で野外無料コンサート「どすこいライブ」を開催しました。私たち自身が楽しい「七夕まつり」を、私たち自身が企画し準備し運営し、皆で一緒に楽しむ。土俵をステージとし、芝の観客席にはピクニックのように人々が三々五々集まって、音楽などを楽しみます。

翌1999年の七夕まつりでは、商店街団体とともに、一宮市役所前の公園を無料休憩所・フードコート・野外ライブスペースとする「にぎわい広場」を始めました。また、年間を通して路上ライブ「ドコデモまちかどライブ」や、空き店舗を利用したアート展「テンポラリー」などのカルチャーイベントを開催し、さまざまな「まつりづくり」を展開していきます。

杜の宮市(もりのみやいち)と、手づくり文化

こうした活動を見た真清田神社の飯田宮司から、神社境内を利用して文化発信をしていく事業をしないかと誘われ、2001年から始まったのが「杜の宮市」です。手づくり、クラフトをテーマとし、アートやクラフト作品などの作り手自身がブースを出し、直接来場者と話すことで、大量生産品の売買とは違う濃厚なコミュニケーションをとることができます。アートやクラフト作品の販売のみならず、体験教室や飲食、ライブ演奏もすべて手づくりがテーマです。

「杜の宮市」は、資源ゼロから市民で紡ぎ出し、初回は真清田神社境内を会場として5000人ほどの来場者でしたが、毎年継続した結果、本町通商店街全体やその周辺を会場として全長1㎞を超え、出展者は全国から380ブースほど、来場者は3万人超、一日の場内資金移動は3500万円超という規模に拡大しました。規模は拡大しても、テーマはやはり手づくり、クラフトです。

まつりから日常へ、ウォーカブルへ

ヒト・モノ・カネがないまま公共地を活用し、私たち自身が望む地域社会を自分たちで生み出そうとする活動は、地域内外の同志と連携し、中間支援活動へと広がり、まちづくりNPO法人志民連いちのみやの設立につながりました。同法人は「一宮市市民活動支援センター」を受託運営し、コミュニティカフェ「com-cafe三八屋」の運営やオリジナルコーヒーの開発、日本最小規模のクラフトビール工房「一宮ブルワリー」による一宮のビール復興、多目的交流空地「プリンスアレイ」の運営など、まつりから日常へと活動を展開しています。

他方、一宮市ではTMO(タウンマネージメント機関)やまちづくり会社が不在のまま、2020年にウォーカブル事業がスタートしました。2022年に志民連いちのみやが都市再生推進法人として指定され、安全安心で歩きたくなる中心市街地の未来に向けて、協働・協力をしています。

公共地を活用して地域再生を模索してきた志民連いちのみやは、そのあがきや経験を地域へ還元しつつ、人間ファーストでオリジナルなウォーカブルタウンを目指して更に活動し続けています。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 2023年11月、尾張一宮駅前のウォーカブルイベント

    2023年11月、尾張一宮駅前のウォーカブルイベント

  • 2023年11月、尾張一宮駅前。羊がいるBISHU FES.marcheの様子

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  • 2024年5月、com-cafe三八屋2階のシェアスペース。ショーの練習がそのままBGMに

    2024年5月、com-cafe三八屋2階のシェアスペース。ショーの練習がそのままBGMに

  • 2024年5月、第22回杜の宮市。本町通商店街の様子

    2024年5月、第22回杜の宮市。本町通商店街の様子

  • 2024年5月、第22回杜の宮市。真清田神社楼門前の様子

    2024年5月、第22回杜の宮市。真清田神社楼門前の様子

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