地域再生を考える

2022年1月掲載

「らしさ」に気付くこと
~地域の「らしさ」は武器になる~

徳森養鶏場 2代目代表取締役/肝高あやはし組合理事長 ノーマン裕太ウエインさん

徳森養鶏場 2代目代表取締役/肝高あやはし組合理事長
ノーマン裕太ウエインさん
沖縄県うるま市にある老舗徳森養鶏場の2代目代表取締役。地域の商店街組合である肝高あやはし組合理事長や全国農業青年クラブ九州地区会長を務め、農業のイメージを変えていくべく、地元うるま市からチャレンジを続けている。
事業継承

「まさか養鶏場を継ぐとは思ってもいませんでした」。

沖縄県の浦添で翻訳業をしながら、ダーツショップで副業兼選手としても活動していた自分が、親の海外転勤に伴う実家への引っ越しと同時に、家業である養鶏場が近隣にあったこともあり、思い切って転職する決意をしたのが26歳の時。

今思えば、その後のさまざまな出来事も踏まえると、導かれたかのように養鶏業界に飛び込んでいました。やるからにはとことんやってしまう性格で、養鶏を教えてもらう日々の中、違和感を覚えることは質問、提案を繰り返していました。

ある日突然、おじい(会長)から「養鶏場を継いでみる気はないか」と声掛けがあり、話し合いを経て、結果的に2年目から引き継ぎをしていきました。正直、鶏のこと、卵の知識も未熟で、経営自体ひよこ状態でした。ただ、どうにかよくしていくんだと勝手な使命感とやる気だけはありました。50年事業を紡いできた今なおパワフルなおじいの言葉「ちぶらー(賢い人)でどんな能力がある人でもやる気がなければ何の意味もない」、うまくいくかどうかはやる気があるかないかだという言霊を胸に日々精を出してきました。

少しずつ前進していく中、50年紡いできた養鶏場を任された以上は、有名にしたい。そんな思いから2代目としての挑戦が始まっていきました。

「らしさ」から生まれた黄金たまご

そんな中、最も大きな分岐点となったのが、ブランド卵の開発でした。卵に限らず多くの農家は市場へ出荷をします。あまたのブランド卵が全国にあふれる中、わざわざ作る必要あるのか?あまり前向きではない声もありました。ただ、このままじゃ絶対にこれ以上伸びない。みんなに選んでもらえる卵。その良さを農家が伝えていくんだと押し切って開発に取り組んでいきました。

餌が変わると2週間もあれば卵は黄身の色や風味、栄養価等が変化します。その鶏の特徴を活かし取り組んだのが、特産品を飼料化していくということでした。ビタミンが、DHAが、EMが、とさまざまな特徴の卵がある中、徳森養鶏場「らしさ」を打ち出すためには地域ならではの卵を作ることだと道を定めました。

さまざまな餌の添加試験を実施し、全てにおいて特に相性が良かったのがうるま市の特産品で伊計島で作られる黄金イモでした。また、もともと鶏が飲んでいた水が黄金水(くがにみじ)という地域ならではの地下水という黄金のストーリーも重なり、甘くてくさみのないうるまの黄金卵「くがにたまご」が誕生しました。

地域に根ざす徳森養鶏場ならではの卵「くがにたまご」の誕生後、今思えば待ってくれていたかのように、沖縄県最大級の農水産物直売施設“うるマルシェ”がオープン。このことが大きな追い風となり、さまざまなメディアにも取り上げていただいたり、講師の依頼をいただくなど、日々に変化が巻き起こり始めていきました。うるマルシェではすべての商品の中で、最も売れている商品として、総合売上3連覇を達成、沖縄県内でも20先以上取扱店舗が広がっていきました。県内のみならず全国放送にも取り上げられ、そのたび、卵のみならず、餌に使用している「黄金イモ」や沖縄県うるま市自体を取り上げてもらえました。これには地域活性化のヒントがあるぞ!と感じました。

地域のリーダーに抜擢

また、そんな中地域の商店街組合立ち上げの話が舞い込んできました。地域活性化に向けて、40社ほどが集まり設立する運びになったのですが、地域を牽引してきた多くの先輩経営者がいる中、若手ながら理事長に抜擢していただき、貴重な経験となっているのは言うまでもありません。その歩みの中、気付いたことが2つあります。

一つは、年齢は関係ないということです。ただし、本当に物事を形にしていくためには、今の時代の変化を敏感に捉えている若い世代と地域を動かしてきた影響力あるベテランと、各世代が調和することの大事さを強く感じました。

もう一つが、よそ者の視点です。何事も課題は尽きないですが、そこを厳しいと捉えるか、そこにある伸びしろに気付けるか。地域内の団結も大事ですが、受け入れる柔軟性を持てるかどうかも自分は大いに大事だと思っています。“灯台下暗し”状態で自分たちの魅力である「らしさ」が分からなくなる物なんだなと気付かされました。

全ては”人“である

最後に、地域再生に必要な原材料は、他でもなく「人」です。それがそろって初めて、その調理方法、合わせ方、プロデュースの仕方、伝え方が見えてきたりします。活き活きした人たちのつながりをどう地域内に生み出せるか。それが世界が近くなった今の時代なら大いに実現可能だと思っています。

誰が、どこで、どういう想いで、その取り組みをしているのか。すべての「らしさ」が地域の武器になります。これからもたまごを通して、自分達の「らしさ」を沖縄から創っていきます。

「地域再生を考える」編集委員会

  • うるま市推奨品認定の黄金イモを餌に生まれた「くがにたまご」。「くがに」は、沖縄弁で「黄金」という意味

    うるま市推奨品認定の黄金イモを餌に生まれた「くがにたまご」。「くがに」は、沖縄弁で「黄金」という意味

  • 黄金色が特徴の甘み豊な、うるま市特産品「黄金イモ」

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  • 徳森養鶏場創業者である祖父と2代目代表のノーマン本人

    徳森養鶏場創業者である祖父と2代目代表のノーマン本人

  • うるま市観光大使(非公認)として、沖縄県内で活躍の幅を広げている、ハーフで農家の兄弟「ノーマンブラザーズ」。YouTubeチャンネルやTikTokも配信している

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  • うるま市の象徴的なスポット4つの島々をつなぐ「海中道路」

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  • 世界遺産でもある、阿麻和利が居城した城と伝えられる勝連城跡は、沖縄の城の中で最も古く、築城は12世紀頃といわれる

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