地域再生を考える

2021年9月掲載

やさいバスでスマートコミュニティ構築
 無理なく・楽しく・美味しく地域をつなぎたい

エムスクエア・ラボ、やさいバス創業者・代表取締役 加藤 百合子さん

エムスクエア・ラボ、やさいバス創業者・代表取締役
加藤 百合子さん
1974年千葉県生まれ。東京大学農学部卒、英国クランフィールド大学で修士号取得、その後、産業用機械の研究開発に従事したのちに、2009年株式会社エムスクエア・ラボを設立、2017年にやさいバス株式会社を創業。
地域の生産者と地域の購買者をつなぐ新しい流通の仕組み「やさいバス」

農産物の作り手と使い手をつなぐ流通プラットフォーム「やさいバス」は2017年3月に静岡で創業しました。始まりは10年前です。農業者にヒアリングして回ると、一番多い課題は思うように価格が付かない、「美味しい」「不味い」などの評価が返ってこないので改善しようがない、ということでした。青果流通をひもといていくと、農業者からJAや市場、商社を経て、スーパーや加工業者へようやく届く多段階な商流になっていました。また、量を確保するために、AさんのナスもBさんのナスも混ぜられて出荷されることで、頑張っても頑張らなくても価格は同じということもわかりました。さらに、物流面では、静岡で生産されたものは一度東京へ行って、また静岡に戻ってくるというような無駄なこともいまだに続いています。

そこで、作り手と使い手を直接つなげることで相互に信頼関係を醸成する仕組みとしてECを採用。そして、物流費を削減するために地域循環するバスのような物流網の構築とシステム化を行い、両者を融合した仕組みがやさいバスです。

約40キロメートル範囲の配送エリア内に10程度の野菜の集荷場を設け、その拠点を冷蔵トラックが巡回します。トラックの到着予定時刻にあわせて、農家は最寄りの拠点へ生産した野菜を持ち込み、利用者もまた最寄りの拠点まで出向いて野菜を受け取るというシンプルなシステムです。共同配送することで、高騰する物流コストを節約することができます。

青果流通でスマートコミュニティ?

やさいバスという青果流通のプラットフォームで、なぜスマートコミュニティが構築できるのか?まず、スマートコミュニティとは、「無理なく・楽しく・美味しく」地域で過ごせる状態と定義づけしています。農業者が生活もままならないまま作り続ける、物流事業者が業務過多のまま走り続ける、作物からしても遠回りさせられて美味しく食べてもらえない、そのような状態はいくらロボットやITが進化したところでスマートとは言えません。人が赤ちゃんから死ぬまでお世話になるのが食材であり、一次産業です。全員がかかわるからこそ、コミュニティの課題は食の視点から検討すれば、解決への糸口が見えてくるのです。

やさいバスもあくまで「場」でしかなく、それを活用してスマートな地域に進化させるのは地域の人でしかありません。そのため、当社社員はあくまで場づくりを役割とし、地域の方々に運営をお任せしていきながら実装していきます。

コロナで地域展開が進展

静岡で仕組みのベースができ、さあこれから利用者を増やそうというときにコロナ禍に見舞われ、当社は外食の取り扱いが多かったため大打撃を受けました。一方で、昨年秋くらいから、それまで取り組むことの少なかった小売業との協業が進み、さらに、他県からの進出依頼もいただくようになったのです。2019年から長野、神奈川が小さく始まり、2020年には、茨城、千葉、愛知、広島がスタートしています。今年は、それぞれの進出地域をしっかり立ち上げていくことと、新規エリアとして、高知、大阪、山陰、青森など、各地で準備が進んでいます。

背景として、スーパーはコロナ後を考え、競合になりつつあるコンビニやドラッグストアなどとの差別化をはかるため、市場任せで店舗の差別化ができない仕入れではなく、地域密着型での青果を扱う必要があると気づいたということ。また、各地の行政や地域をけん引する企業も、移動が制限される中で、地域の価値、そしてそれを循環することの意味や需要があることに気づかされたようです。

やさいバス広島

2020年8月末に、農業者、購買者、物流事業者などを集めた説明会を開催し、スタートしました。

やさいバス広島の大使は、食品卸会社や鉄道事業者の方に担っていただき、地域の情報や人のつながりを醸成してくださっています。10月には、デパートの青果売り場にやさいバスコーナーを開設。道の駅から市内の職場へ、トラックやJRバスの貨客混載を活用した流通トライアルを実施しました。県内とはいえ、頻繁には行けない山側のものが職場に届き、新鮮でおいしいことやリーズナブルに手に入れられることなどご好評いただきました。

今年度は広島県のサンドボックス事業に採択され、貨客混載、JRの駅の活用、デパートでの売場拡大など、地域の資産を共有化し、いよいよコミュニティによるやさいバスの実装が本格化します。

今後の展望

やさいバスはこれからも「スマートコミュニティ構築」を真ん中に置いて活動していきます。ビジネス視点からすれば、地域でのコミュニティづくりなどに時間を割かず、取り扱い高を一刻も早く向上させる方法を採ればいいのにと思われるかもしれません。しかし、広島が好事例で、それぞれができることを持ち寄りながら食の供給方法を考え、実行していくことで、自立したコミュニティとしての持続可能性が高まることが見え始めています。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 静岡産の野菜セット

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  • 市街地を走るやさいバス

    市街地を走るやさいバス

  • レタス農家さんを訪問

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  • 商品の説明を受け、売り方を協議

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  • やさいバスの仕組み

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  • やさいバスの地域展開

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  • 道の駅の商品をやさいバスで街中へ

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  • 広島市中心部の職場に新鮮な野菜を届ける

    広島市中心部の職場に新鮮な野菜を届ける

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