地域再生を考える

2020年12月掲載

地域と共に
駅の利活用、鉄道の利用促進を通じた地域の活性化

西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部 大阪支社 副支社長 宮本 芳明さん

西日本旅客鉄道株式会社 近畿統括本部 大阪支社 副支社長
宮本 芳明さん
1969年広島市生まれ。長門市(山口県)、周南市(山口県)、広島市で育つ。1992年東京大学文学部卒、JR西日本に入社。駅、経理、人事、経営企画等の部門を経て2017年7月より現職。大阪支社エリア(大阪府、奈良県等)での鉄道事業の運営、地域共生等を担当。
地域との共生

JR西日本グループは、鉄道を基軸に社会インフラを担う企業グループとして、地域の皆さんと連携し、グループ一体となって、誰もが訪れたくなるまち、誰もが住みたくなる沿線をつくるさまざまな取り組みを進めています。それらの取り組みを通じて、地域の社会、経済の発展に貢献し、「人々が出会い、笑顔が生まれる、安全で豊かな社会づくり」を実現することを目指しています。

こうした私たちの「地域共生」の取り組みのうち、今回は大阪支社での主な取り組みをご紹介します。

駅の利活用を通じた地域の活性化

駅の利活用の方向性は、利用状況や周辺の環境などにより、概ね4つに分類できます。
①土地区画整理事業や立体交差化等にあわせた商業・事業拠点の開発等の大規模な「駅周辺開発」
②駅前広場整備、橋上化、バリアフリー化等による公共交通の機能向上を目的とした「駅周辺整備」
③公共利用による駅の+αの価値創出を目的とした「駅舎の利活用」
④鉄道の持続可能性の向上を目的とした「駅設備のシンプル化」

今回は、このうち、③の取り組みについてご紹介します。

万葉まほろば線(桜井線)の「京終(きょうばて)駅」は奈良市中心部の南端の駅で、約120年前に建築された駅舎を維持してきましたが、近年は老朽化が著しくなっていました。そうした時に地域の皆さんから、「地域の交流拠点・観光拠点として駅を利活用したい」とのお話しがあり、奈良市に駅舎を譲渡し、地域の皆さんに利活用いただくことになりました。地域の皆さんにとってもメリットがあり、私たちにとっても維持管理費の低減ができるというメリットがある、WIN‐WINの取り組みとなりました。

このほか、柳本駅(奈良県天理市)、御所駅(奈良県御所市)、笠置駅(京都府笠置町)、大河原駅(京都府南山城村)などでも同様の取り組みをしています。

鉄道の利用促進を通じた地域の活性化

次に、鉄道の利用促進を通じた地域の活性化には、大きく2つの方向性があります。
①通勤・通学・通院・買い物などの日常の利用促進を通じて地域の定住人口の増加を目指す方向性
②観光・レジャー・出張などの利用促進を通じて交流人口の増加を目指す方向性

①については、例えば、大阪環状線では、新車導入や駅改良等を契機に、共同イベントなどを通じて地域の皆さんとの連携も深めながら、「行ってみたい」「乗ってみたい」線区に改造し、大阪の活性化にも貢献することを目指しています。このほか「新快速50周年」のような節目を契機とした企画なども活用しながら、地域の皆さんとの連携を深め、地域の更なる活性化に向けて協働していきたいと思います。

②については、例えば、奈良エリアでは、2019年3月のおおさか東線全線開業と万葉まほろば線・和歌山線への新車導入を契機に、地域の皆さんと連携した観光キャンペーンを実施しました。また、コロナの影響でやむなく中断となりましたが、1周年を迎えた2020年3月には奈良大和四寺巡礼各寺院(長谷寺、室生寺、岡寺、安倍文殊院)をはじめとする地域の皆さんと連携し、奈良・桜井での観光キャンペーンを企画しました。

地域の皆さんには、特別な体験の提供や魅力的な食事の提供等により観光資源の磨き上げにご協力いただき、私たちは特急の臨時運行、旅行商品の造成、駅・情報誌・HP等でのPR強化などで協働しました。また、寺社や行政・観光関係に加えて、南都銀行(ECサイトでの販売や奈良駅構内での観光PRなどを通じた地域産品の販売促進等)や近畿大学(旅行商品のコンテスト等)の皆さんとも新たに連携しています。

2021年は聖徳太子没後1400年を迎えることもあり、MaaSなど新たな仕組みも活用しながら、更なる地域の活性化につなげていきたいと考えています。

こうした連携は、堺市(百舌鳥・古市古墳群を活用した観光振興での連携等)、寝屋川市(駅名改称も契機としたまちづくり)、伊賀市(古民家ホテル「NIPPONIAHOTEL伊賀」開業での連携及びICOCAエリア拡大を生かした公共交通の利用促進での連携等)をはじめ、多くの地域の皆さんと進めているところです。

今後の取り組み

わが国の各地域を取り巻く今後の社会、経済の環境は人口減少に伴う市場の縮小や労働力の減少など厳しい状況が想定されています。一方で、コロナ収束後に回復が見込まれるインバウンド需要の拡大、北陸新幹線の延伸・なにわ筋線の開業などの大型プロジェクト、2025年の大阪・関西万博の開催など、私たちの事業エリアである西日本エリアでは地域の活性化につながる機会は今後も多くあります。コロナによって加速した「デジタル化」や「分散化」などの環境変化に的確に対応し、こうした機会を生かして、地域の皆さんとより広くより深く連携しながら、地域の更なる活性化に向けた地域共生の取り組みに、引き続き全力で取り組んでいきます。

「地域再生を考える」編集委員会

  • リニューアル後の京終駅。駅の中にはカフェなどのコミュニティスペースがあります

  • 天神橋筋商店街さまには大阪環状線の新車導入時の盛り上げにご協力いただきました

  • 運行開始当時(昭和45年)

  • 現在の新快速。2020年10月で運行開始から50年です

  • 多くのファンの方に迎えられて新大阪駅に入線する特急まほろば号

  • 万葉まほろば線の三輪駅に停車中の旧車両と新車両

  • 2020年11月開業したNIPPONIA HOTEL 伊賀

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