地域再生を考える

2020年4月掲載

「道の駅」新たなステージへ
〜地域創生・観光を加速する拠点の形成〜

(一社)全国道の駅連絡会 理事兼事務局長  阿部 悟さん

(一社)全国道の駅連絡会 理事兼事務局長
阿部 悟さん
1959年秋田県生まれ。81年国土交通省入省。東北地方整備局、国土庁、道路局、関東地方整備局高崎河川国道事務所長、道路局環境安全課道路交通安全対策室長、大臣官房技術調査官、2019年東北地方整備局道路部長を最後に退官。19年10月より現職。国土交通省では主に道路政策を担当。
はじめに

1993年に「道の駅」登録・案内制度が創設されて約30年、4半世紀が経過した。道路の休憩施設としての機能を中心に全国103カ所でスタートした道の駅は2020年現在、1160駅と10倍以上に増加した。今や道の駅は国民生活に欠かせない公共施設として、広く国民に受け入れられる人気の施設に発展し、不動の地位を築いている。

道の駅の多様な可能性

制度発足から20年目の2013年に全国で1005駅となって1000駅の大台に乗り、この時点を1つの区切りとして道の駅は「第2ステージ」に入ったといわれるようになった。この間道の駅は、制度創設当初に定められた「休憩機能」「情報発信機能」「地域連携機能」に加え「地域防災」「地域福祉」など地域の課題解決の拠点、観光立国の推進役、「地方創生」の拠点としても位置付けられるようになった。そうした新たな役割や多様な可能性がますます注目され、更なる発展が期待されている。

道の駅が誕生した1993年ごろは、首都圏への人口集中が一時的に収束した時期でもある。首都圏への人口の一極集中で、地方の過疎化が進み、地方の活力の低下が問題とされた中で、人々の価値観の変化が起こり、自然志向Uターン・Iターンなど地方への移住も多く見受けられるようになった時代であった。地方を見直す動きが生まれたこの時期に、道の駅の登録・案内制度が発足した。その後、都心回帰などで、再び都市への人口流入は増加し、過疎化・高齢化が進んでいる地方の経済が低迷していく中で、その公益的機能の充実はますます期待されるようになっている。

地方創生の拠点形成へ

道の駅は設立時に公的資金が投入されており、広く利用者にサービスを提供する役割を担う公共施設であるが、民間人の提案を端緒に、制度化までの社会実験もほとんど民間主導で行われたという起源を持ち、一般的な公共施設とはその性質が異なる。平均的な公共施設が画一的なサービスの提供を要求されるのに対し、道の駅は独自の地域色が求められている。道の駅は自治体等の公共主体による運営ではあっても、地元住民の創意工夫によって支えられるといった自由度の高い制度であることが最大の特徴である。

したがって、そこには地域を愛する地元の人々のアイデアが生かされなければならない。2014年に地方創生の拠点として位置づけられ、今後も「地方を元気にする」中心的な公共施設として道の駅が発展するためには、他の公共施設にはない独自の発想で生まれた道の駅の原点に立ち返ることも大切である。

道の駅の防災機能が最初に注目されたのは2004年の新潟県中越地震で、その後も2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などで、道の駅が防災機能を発揮し、その公共性が再認識され、国民生活に欠かせない公共施設であることを改めて証明した。今後、どのように道の駅が進化するにせよ、道の駅の重要な使命は公共性・公益性であることは変わらない。日本の将来は地方の活性化にかかっており、その一翼を道の駅が担っているのである。

また、今後は高齢化社会に対応した地域福祉向上や地域課題に対応した住民生活支援、小さな拠点形成を目指す取り組みなどを通して、地域住民へのサービス向上が求められる。新たな地域政策の環境が整備され、防災・医療・福祉・住民サービスなど公的機能の充実がさらに期待されている。地方への移住の動きも再び始まっているといわれる今、地方の生活を支える道の駅が、さらに注目される時代になっている。

「道の駅」新たなステージへ

これまで道の駅は、1993年から第1ステージとして「通過する道路利用者へのサービス提供の場」、2013年からの第2ステージとして「道の駅自体が目的地」など、地域の方々の創意工夫、自由な発想により整備が進められてきた。国土交通省では道の駅に対する地方創生の拠点としての更なる期待の高まりを踏まえ、2019年11月には新たなステージ(2020〜2025年)〜創設から4半世紀、2020年からの新たなチャレンジ〜として「地方創生・観光を加速する拠点」をとりまとめた。

この中で「2025年」に目指す3つの姿として、①「道の駅」を世界ブランドへ②新「防災道の駅」が全国の安心拠点に③あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに、が提示された。さらに、これらを具体的に推進するため、国等による支援の充実、全国道の駅連絡会のエージェント機能の強化も提言されたところだ。

全国道の駅連絡会は、2019年5月より法人化し①民間をはじめとする多様な主体との「新たな連携」の構築②地域に活性化をもたらす着実な仕組みの創造③全国組織としての機能強化・経営体制の透明化④道の駅全体が利用者や地域からのさらなる期待や信頼に対応することなどを行うこととしている。

今後は新たなステージを支援するため、民間企業のアイデア・技術を効果的に活用するエージェント機能を十分に発揮するとともに、災害時などの公益的な機能も更に強化し、「道の駅」全体としての発展を支援してまいりたい。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 「道の駅」を世界ブランドへ

    「道の駅」を世界ブランドへ

  • 新「防災道の駅」が全国の安心拠点に

    新「防災道の駅」が全国の安心拠点に

  • あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに

    あらゆる世代が活躍する舞台となる地域センターに

  • 新たな「道の駅」ネットワーク

  • 第3ステージの概要

団地再生まちづくり4
進むサステナブルな団地・まちづくり
編著
団地再生支援協会
NPO団地再生研究会
合人社計画研究所
定価1,900円(税別)/水曜社

団地再生まちづくり5
日本のサステナブル社会のカギは「団地再生」にある
編著
団地再生支援協会
合人社計画研究所
定価2,500円(税別)/水曜社

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