運動会で人と人とをつなぎたい~廃校で行う外国人向け学校生活体験プログラム~

- 米司 隆明 さん/運動会屋 代表取締役 CUO
- 1980年、山口県岩国市生まれ。大学卒業後、金融系企業の営業職、ITベンチャーを経て、2007年創業。CUOは、Chief UNDOKAI Officerの略称。運動会の企画・運営事業を展開。企業運動会を中心に、開催総数2,500件、参加人数は累計75万人。日本のみならず、アメリカ、インド、タイ、ルワンダなど世界8カ国で運動会を開催し、UNDOKAIを世界共通語にするため活動中。
Voicyパーソナリティ:https://www.udkya.com
廃校で学校生活を体験する外国人
千葉県君津市の山あいにある廃校に、世界中から外国人が集まってきます。アメリカ、オーストラリア、フランス、ブラジル、サウジアラビア、中国…。
校門をくぐった参加者たちは、まず日本の学生服に着替えます。チャイムの音とともにホームルームが始まり、書道や給食、掃除当番など、日本の懐かしい学校生活を体験します。
そして最も盛り上がるのが、体育の授業で行う「運動会」です。玉入れや綱引きでの真剣勝負。最初は緊張していた参加者同士も、競技が始まると自然に声を掛け合い、気が付けば国境を越えて肩を組んで応援しています。
最後は卒業式です。参加する前はバラバラだった国籍も年齢も異なる人たちが、帰る頃には涙を流しながら別れを惜しむ「クラスメート」になっています。
人と人とがつながる場をつくりたい
これは、私たちが運営する「君ノ高校」という、日本の学校生活を体験できるプログラムです。廃校になった元中学校を、地域活性化のための観光拠点として利活用しています。そして、このプログラムを仕掛けているのが、私たち株式会社運動会屋です。
私は、大学卒業後に金融機関やIT企業で働く中で、組織の中にいながら孤独感を引きずっていました。成果や効率が重視される一方で、人と人との関係性が失われているように思えたのです。
そんな時に思い出したのが、学生時代に打ち込んだ野球でした。仲間と同じ目標に向かって努力し、喜びや悔しさを共有する。その経験は、私にとってかけがえのない財産でした。人は一人では頑張れない。誰かとのつながりの中でこそ成長し、自分らしく生きることができるのだと、身をもって実感していたのです。
一方で、社会に出ると、自分自身を押し殺して孤独に働く人たちや引きこもり、自殺といった深刻なニュースが目に入り、「人と人とのつながりを取り戻す場をつくりたい」と願うようになりました。
運動会が持つ力
2007年にNPO法人を設立。試行錯誤を重ねる中でたどり着いたのが「運動会」でした。
運動会には不思議な力があります。年齢や性別、立場に関係なく誰もが主役になれ、一人一人に役割があります。競技を通じて自然と会話が生まれ、応援し合う中で、仲間意識が育まれていきます。
当初は「なぜ今さら運動会なのか」と言われることもありました。それでも私は、こういった場こそが、今の社会に絶対に必要なのだと信じ、活動を続けました。企業や学校、自治体を中心に、現在は世界8カ国で2500回以上の運動会を実施するまでになりました。
今こそ運動会の魔法
そして今、その想いは「君ノ高校」へとつながっています。
運動会も学校生活体験も、本質は同じです。人と人とがつながり、共に笑い、同じ時間を過ごして仲間になること。
デジタルでなんでも済む便利な時代になったからこそ、人が顔を合わせ、応援し合い、感動を共有する時間の価値は、ますます大きくなっています。私はこれからも、この「運動会の魔法」を通じて、世界中に温かい人と人とのつながりをつくり続けていきたいと思います。
(無断転載禁ず)
