世界共通語はアニメ

- ヤマサキオサムさん/アニメ監督
- 日本アニメーター・演出協会元代表理事。『精霊幻想記』『あんさんぶるスターズ!!』『薄桜鬼』『地球へ…』『イタズラなKiss』などを制作。30代から20年間、監督業と並行して専門学校の講師を務め後進の育成にも力を注ぐ。
『映画ランキングトップ10』にアニメが必ずランクインする時代。日本のアニメも世界に同時配信されるようになり、他国のファンからダイレクトに声が届くようになった。
かれこれ40年以上この業界にいるが、昨今の進化には興味深い現象があるのでお話しようと思う。
海外ファンの中にはアニメ好きが高じて独学で日本語を学び、日本文化を好きになる人たちが少なくない。さらには、翻訳やイベントの通訳をしたり、来日してアニメ会社に就職し作り手として活躍したりする人も現れるようになった。
彼らが子どもの頃に感動した日本のアニメを「自分でも作りたい」とこの世界に飛び込んでいる点は、日本政府の推し進める“技能実習生”とは、情熱が少し異なっている。
彼らは「日本語には英語や中国語、韓国語で翻訳できない文化がある」と言う。
それは私たちでも忘れがちな“わびさび”や“諸行無常観”のようだ。母国にはない独特の日本文化を理解しようと努力する若者を知るにつけ、アニメの持つ力を思う。
どんなに良い作品でも、見ている人が分からない言葉で描かれていてはその素晴らしさは伝わらない。そのために私たちは翻訳し、吹き替え版も作るのだがそれでも伝えきれない言語の壁=文化の壁がある。
日本で我々と共に作品を作る彼らはその壁を乗り越え、世界の人々に伝わるように“言葉をつなぐ役割り”を担っているように感じる。なぜなら、「はじめに言葉ありき」と彼らが新約聖書の言葉を口にしたことがあるからだ。
彼らは“言葉をつなぐ”ことを、『バベルの塔』の逸話にある「神によって言語の壁を作られ、分断され、争うように仕向けられた人類の運命」を乗り越える行為と思っているのかもしれない。
いま日本には「外国人が…」と言う排他的な空気も感じる。けれどそんな時だからこそ腹を割って話したい。
「はじめに言葉ありき」なのだ。
互いを理解するために人間には言葉がある。
心の垣根を飛び越え、言葉のキャッチボールをしたくなるアニメを目指し、私は今日も彼らを含むスタッフと来年の新作に取り組んでいる。
人種・性別・価値観などの違いを認める「ダイバーシティ(多様性)」の一翼を、アニメ業界が担っている手ごたえもある。
明るい未来を創っていきたい。
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