連載コーナー
本音のエッセイ

2026年5月掲載

あきらめではなく、手放す

飯田 一史さん/出版ジャーナリスト、ライター

飯田 一史さん/出版ジャーナリスト、ライター
出版社勤務を経て独立。出版産業や子ども・若者の読書、マンガ、教育などについて取材・執筆。著書に『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』『「若者の読書離れ」というウソ』『作文ぎらいのための文章教室』など。

国の定義では、不登校は年間30日以上欠席した児童・生徒を指す。そういう意味では、2015年生まれの息子はギリギリ不登校ではない。月に2、3回は休むし、登校する日もたいてい3、4限目から行く。「行きしぶり」というやつだ。

わが家は私が主にライター業、妻はひとり出版社の編集者。ともに在宅仕事が中心であり、子どもが遅れて学校に行くときの送りはふたりで分担している。

平日は毎朝、学校に行くのか、行くなら何限目から行くのかの交渉をし、その時間に合わせて送る。なるべく行きたくない子どもと、可能な限りは行ってほしいこちら側で折り合える地点をさがす。これが正直言ってめんどうくさい。

息子は小1の6月には「学校イヤだ」と言いだし、児童精神科につれていくとADHDだとわかった。並行して「学校に行くのがむずかしいなら」と、不登校児向けの教育支援センター、ちゃんとやれば出席日数としてカウントされる家庭学習サービス等々をあれこれ試してみたが、すべて合わなかった。

「不登校でも学べる」と言うひとがいる。だがそれは「本人にやる気があり、合う場所が見つけられた場合に限る」。うちの場合はそうではなかった。

それで結局、行ける範囲でだけ学校に行くスタイルに落ち着いた。

息子は好きなこととそうでないことが極端に分かれていて、やりたいことしかやらない。

最初のうちは毎日学校に行かせよう、勉強させようと思っていたから衝突した。だが、だんだん「この子はこういう生き方しかできない」と悟った。できるなかでやればいい。というか、現実的にそれしか選択肢がない。

子育てで一番大事なのは「手放す」ことだと思う。こちらの願望を押しつけなければ、子どもと揉めることもなくなる。それがわかった。

子育ての話になると、私はよくこういうことを言っている。

ただ経験上、自分が望むふるまいをしない子どもにイライラしている大人ほど、「手放すのが大事」という話は響かない。「でも、娘が着替えた服を脱いだまま脱ぎっぱなしにするのは許せない」「私は不登校は絶対に認めないと息子に厳しく言っている」云々と返ってくる。

そういう姿を見るたび「子どもみたいだな」と思ってしまう。

人生は思い通りになることのほうが少ない。未来がどうなるかも、だれにもわからない。自分のことでさえそうなのに、子どもをコントロールするのはムリだ。コントロールできたとして、それでうまくいく保証もない。

そのあたりまえのことを受けいれるのが、とてもむずかしい。

(無断転載禁ず)

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