本問の「掲示したら名誉毀損で訴えてやる」との発言は、刑事告訴と民事損害賠償をする趣旨のいずれかと考えられます。
まず、刑事告訴の場合、公然事実を摘示して人の名誉を毀損した場合は、名誉毀損罪が成立することになります。しかし、本問の場合、氏名を掲示することは公然事実を摘示したということに該当するといえますが、公共的必要があり、摘示した事実が真実であると証明された場合は、処罰されないことになっています。
この公共的必要とは、国家や社会全体に関するものだけでなく、小規模の集団に関するものでもよく、滞納している事実が真実であれば、名誉毀損罪が成立しないといえるでしょう。
次に、民事損害賠償の場合、プライバシーの侵害が問題となります。
管理費の滞納を放置しますと管理業務にも影響し、また多数の遅滞なく管理費を納めている他の組合員にも影響しますので、管理費の徴収はマンション管理の重要な課題です。
そこで、滞納者に各種の督促手続を行い、これらの督促にも関わらず支払わなかった場合、一般的にはプライバシーの侵害にならないともいえますが、プライバシーの関係、家族に子どもがいる場合の配慮、管理組合へのリアクションの問題もあり、この方法はあまり実施されていません。ただ、所在不明者や連絡不能者に対して、また、その債権者(住宅ローン会社などの債権者)に対して、債務があることを告知する意味がある場合は、氏名の公表は有効な方法でもあります。
いずれにしても、氏名を公表する場合には、督促文言や掲載場所にも慎重な対応と配慮を要します。本問では、理事会で決議したとのことですが、訴訟提起の必要に迫られている状況では、そのための情報として総会で滞納者の氏名を公表することは許されるといえるでしょう。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2000年12月掲載