Ms Wendy

2020年11月掲載

「若見え」の呪縛から解き放たれ ありのままの姿を受け入れて

近藤 サトさん/フリーアナウンサー

近藤 サトさん/フリーアナウンサー
1968年岐阜県生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒。91年4月、フジテレビ入社。報道番組や情報番組などのナレーションを担当。98年9月、フジテレビ退社。フリーランスに転身後は、落ち着いた声質をいかして『有吉反省会』、『梅沢富美男のズバッと聞きます!』などのナレーションを中心に活躍。40代後半からグレイヘアに移行しテレビにも出演、グレイヘアという選択肢を世に広める第一人者に。2019年4月初めての著書『グレイヘアと生きる』を上梓。03年に再婚、夫と息子との3人暮らし。
小さい頃から世渡り上手

父は会社員でうちは転勤族。両親と私と弟、4人家族で育ちました。子どもの頃から好きなようにやらせてもらっていて、特に何か厳しくしつけられたという記憶はないですね。

小・中・高校生まで住んだ岐阜県の土岐市が私の故郷。いい意味の田舎で、学校は高校までずっと公立校に通いました。

父はすでに他界して母も東京に呼んで近所に住んでいますので、実家はもう岐阜県にはないのですが、今もこの地域とつながりを持ってお仕事をさせていただいています。ふるさととつながりが持てるというのは、とてもうれしいことです。

運動はあまり得意ではなくインドア系の子どもでした。当時、どこの家にもあった訪問販売の文学全集や百科事典が愛読書。百科事典で外国の写真を眺めては「このお城に行ってみたい」「この絵画を見てみたい」と妄想を膨らませていました。

大人になって海外旅行が好きになったのも、子ども時代の読書がベースにあります。なんといっても妄想が時を経て熟成されていますから(笑)。

今も読書や活字が好きですが、ジャンルはバラバラ。今は政治関連や感染症関係など社会性のあるものを選ぶことが多いですが一時漢詩にハマりました。寝る前に1本ずつ読むのがオススメです。

好きなアニメやマンガは『あしたのジョー』をはじめ全部男の子のものでした。愛読したのは『少年ジャンプ』『少年マガジン』など少年雑誌ばかり。少女漫画を読んでいないのでそこに関しては女性と全然話が合わないです(笑)。

小学校高学年になるとNHK『ニュースセンター9時』の宮崎緑キャスターに憧れテレビの世界に興味を持つようになりました。どちらかというと番組をつくる側になりたいと思っていましたね。

小さい頃から世渡り上手。先生受けが良く「できそうに見える雰囲気」を醸し出していたのでしょう。中学校に上がるとたいして成績も良くないのに生徒会長をやったりしました。

演劇部を立ち上げた高校時代

高校受験では無理と言われていた進学校(多治見北高校)にするっと入ってしまいました。勘が鋭いのか、本番だけ良い点が取れたようです。

高校では演劇部を自分たちで立ち上げました。といっても、部員は2人。脚本は顧問の先生に書いていただきましたが、2人ではお芝居ができません。

そこで友達に「お芝居の時だけ出てくれない?」と声をかけてメンバーをかき集め、文化祭で発表したり地域の発表会や他高の演劇祭に出演したりしました。時代劇や『夕鶴』など文学作品もやりました。今思えば渋い高校生です。

2年生の時に父が福岡に転勤になったのですが、父は体があまり丈夫ではなかったので両親と弟の3人が福岡へ引っ越し、私は岐阜に残ることに。

当時親しくお付き合いさせていただいていた2人暮らしのご夫婦のお宅に下宿させてもらって、卒業までお世話になりました。それまで身の回りのことはすべて母にやってもらっていたので、ここで一気に社会性が身についたと思います。

超難関を突破してフジテレビに入社

大学受験の時期は両親と別々に暮らしていましたから、進路は電話で相談。両親も私は東京に行くものと思っていたようで、すんなり上京できました。

大学は日大芸術学部の放送学科。卒業後はテレビの世界で働きたいと思っていました。私は田舎者なので、就職も「東京」にこだわりました。東京でダメだったらアナウンサーはあきらめようと思っていました。

学生時代はアルバイトでNHKの制作裏方をずっとやっていました。NHKはもし合格しても新卒者は地方局勤務になることを知っていたので、就活の受験は民放だけ。

正確なところは定かではありませんが、その年のフジテレビは2000人くらいの応募者があったと聞いています。なぜ私が超難関を突破して採用されたのかはいまだに謎ですが、採用されたのが中村江里子ちゃんと私の2人だけでしたから、自分は運が強いと思います。

強運を運んだ?「サト」は本名

アナウンサーになった後は、結婚、離婚、再婚、出産と、決してここまで順風満帆にきたわけでもありませんし、数々の失敗も重ねています。にも関わらず、多くの方々の支えがあって今こうしてお仕事ができているということ自体、本当に強運だと思っています。

私の「サト」は本名です。大叔父が高島易断の易者で、うちの一族は男性は15画、女性は5画の名前がよしとされているのです。私が生まれた時に大叔父がすすめてくれた名前は、ひらがなの「さと」。それを両親がカタカナの「サト」に変えたようです。大事なのは画数で、ひらがなでもカタカナでも漢字でも問題はなかったようです。

親戚に易者がいるからといって特別に縁起を担ぐことはありませんが、もしかすると強運はそのせいかもしれませんね。

失敗も驚きも受け入れて

著書『グレイヘアと生きる』には自分自身の経験や失敗もたくさん書きました。一足飛びに全部真っ白にしたくてブリーチにチャレンジして失敗したり、グレイヘアだから白が似合うだろうと買い込んだ服が全然似合わなかったり。それまでと違う自分の姿に日々一喜一憂、右往左往しました。

グレイヘアの自分と向き合うことは、ある意味で自分自身に負荷をかけることになります。すると筋トレと同じで精神というか、心が鍛えられていくようです。

白髪姿の自分にまだ慣れていない頃は、ショーウインドーに映る自分の姿に「すごいおばあさんがいる!誰?うわ、私だ!」ギョッとして一人突っ込み(笑)。それを何度も繰り返して白髪の自分に少しずつ慣れ、ありのままの自分の姿を受け入れられるようになるのです。打ちのめされて立ち上がるたびに、何かが強くなるように感じます。

安心な変身術

一時、私のグレイヘアをすごく話題にしていただき、70代では白髪染めをやめる方がどっと増えました。だからといって、40代や50代にグレイヘアの人が倍増したかというと、意外とそんなことはありません。

だいたい身内や友達、会社や組織など周囲の人たちは必ず反対します。私が40代半ばでグレイヘアにしたいと話した時には事務所や、周りの人たちからも大反対でした。

向き不向きもありますしみんなグレイヘアにしましょうと言うつもりはありません。ただ、グレイヘアの良いところは「やっぱりダメだ」と思ったらすぐに元に戻れること。白髪を染めてしまえばリセット、なかったことにできるのです。

「若見え」の呪縛

女性は年齢を重ね、閉経を迎えたり子育てを終えたりしていく中で、皆さん「若い頃より今の方が人間的に精神的に成長して充実している」という実感を持っているはず。

それなのに、「10歳若返る!」と言われると、つい心がざわついちゃうんですね(笑)。これは強力な刷りこみです。

若々しくいたいとか、100歳まで元気に歩きたいということと「10歳若見え」は全然ベクトルが違うのに、若見えの呪縛から逃れられないのです。

40代半ばくらいで髪を黒く染めてテレビに出ていた頃は「近藤サトは劣化した」などと言われたりもしました。でも、グレイヘアにしてからは、おかげさまで「劣化」とは言われなくなりました。

グレイヘアで人前に出ると、やはり老けて見られるようになります。私は「グレイヘアは10歳年とりますよ」と言い続けています。「若見え」どころか「老け見え」(笑)。

でも、もう人が何と言おうといいじゃないですか。「劣化じゃなくて老化ですけど、何か?(笑)」。自然にそう思えるようになりました。

女性の自由を後押ししたい

日本女性特有の遠慮なのか謙虚さなのか、よく「グレイヘアはサトさんだからできるのよ。私には無理」と言われます。

でも、私たちにはどんな行動を選ぶかという「選択の自由」があります。すでにその自由を持っているのに気づいていない人が多いと実感しますね。誰かがほんの少し背中を押してあげるだけで、女性はもっと自由になれると思います。

今後も日々の学びの中でナレーターとしてやりたいこと、伝えたいことは出てくると思いますが、「ああします」「こうします」という大風呂敷をあまり広げすぎず、言葉や行動で女性の自由を後押しする活動を続けていきたいと思っています。

(東京都内にて取材)

  • 幼稚園のころ、弟と

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  • 大学の文化祭で

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  • フジテレビアナウンサー時代

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  • ナレーションの収録現場にて

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  • 池上本門寺でのテレビ番組収録前に

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  • 近藤 サトさん

(無断転載禁ず)

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