Ms Wendy

2014年9月掲載

「何か」を持って今日を生きれば、人は頑張れる

浅野 ゆう子さん/女優

浅野 ゆう子さん/女優
1960年、神戸市生まれ。13歳でアイドル歌手としてデビュー。中学生ながらテレビドラマ『太陽にほえろ!』に警察署・捜査第一係の2代目内勤員(お茶くみ)役として出演。水着キャンペーンモデルなど企業広告で活躍。88年フジテレビの連続ドラマ『抱きしめたい!』で「W浅野」と呼ばれた浅野温子との共演で女性からの圧倒的な人気を得た。以降「トレンディードラマの女王」と称されるほどにブレイク。最新の出演作品は『ほっとけない魔女たち』(9月1日スタート・フジテレビ系列)、舞台『疑惑』(10月4~26日・京都四條南座)。
「大きくなったら宝塚に」

出身地の神戸は宝塚が近いので、小さいころから母に「あなたは大きくなったら宝塚に入るのよ」と言われて育ちました。それで「私は大きくなったら宝塚に行くんだ」とずっと思っていました。でも、実は小学校6年生になるまで1度も(宝塚を)見たことがなかったんですよ(笑)。だから、実際はどんなことをするのかも知りませんでした。

それが宝塚を受験する前の、小学校6年生のときのことです。神戸の街中に、関西放送というラジオ局の公開スタジオがあって、通りがかりに番組を見ていたとき、その番組に携わっていた事務所の方から「歌を歌ってみる気はありませんか」と声をかけられ、スカウトされました。ちょうどその事務所の歌謡教室が神戸にあったので、そこで1年間、歌のレッスンを受けてから上京しました。

うちは私が小さいころに両親が離婚して、母は神戸でお店をしながら1人娘の私を育ててくれました。母は礼儀作法にとても厳しい人でしたね。ですから、芸能界に入っていろいろなところにごあいさつ回りに行ったとき、「優等生すぎるね」と言われたのですが、それが私には理解できませんでした。きちんとあいさつすることは、普通だと思っていましたので。

1人で上京して、寮に入って学校に通いながら、テレビの歌番組で優勝したことがきっかけで歌手デビューしたのが13歳のときでした。歌番組の予選では森昌子さん、決選では山口百恵さんの曲を歌ったような記憶があります。

お仕事を始めて感動的だったのが、中学校2年生のときにテレビドラマ『太陽にほえろ!』で石原裕次郎さんとご一緒させていただいたことです。私の本名「裕子」は、裕次郎さんのファンだった母がお名前の1文字をいただいて付けたもの。母は撮影現場に来るようなことはありませんでしたが、とても喜んでいました。

撮影現場では、まだほんの子どもでしたから、皆さんにかわいがっていただきました。

20代半ばに「女優1本で行く」と決意

その後も歌と並行して、テレビドラマやCMに出させていただいていましたが、14、5歳のころ、演出家の久世光彦さんから「あなたは、見た目と年齢のギャップが埋まったときに、初めていい仕事ができるでしょう」とおっしゃっていただいたんです。私はデビュー当時から「大人っぽい」とか「老けている」と言われ続けてきましたので、「そうか、私は見た目と年齢のギャップが埋まったときにいい仕事ができるんだ」と、ずっと楽観的に考えていました。だから、芸能界を辞めたいと思ったことは1度もありませんでしたね。

芸能人というのは名刺を持たないのが普通ですが、20代の半ばになったころ、「もし私が名刺を作ったとしたら自分の肩書きは何がいいだろう」ということを考えたんです。私は、「女優・浅野ゆう子」、そういう名刺が作れる人になりたいと思い、「これからは芝居1本でやっていきたい」ということを事務所と話し合いました。

そして27歳のとき、あるプロデューサーから「ドラマを一緒にやりませんか」と主役のお話が突然ありました。局からはとても反対されたそうです。「なぜ今、浅野ゆう子なんだ?」と。でも、その方は強硬に私を推してくださったのです。それが『晴海コンパニオン物語』という単発ドラマでした。賀来千香子さんと室井滋さんと私の3人が、薹(とう)が立ったコンパニオンを演じるというコメディーでした。とても楽しくて、すてきな作品でしたが、その番組は、要するにテストだったのだと思います。そこでOKが出て、その後のいわゆる「トレンディードラマ」と呼ばれた『君の瞳をタイホする!』『抱きしめたい!』への出演に続いていくことになったんです。このプロデューサーとの出会いが、その後の大きな分岐点になりました。

当時、メイクさんに支度をしていただきながら鏡を見て「あれ?私、もしかしたら今、実際の年齢より若く見えているかも」と思いました。十数年前に久世さんがおっしゃったとおりになっていたのかもしれません。

「女優1本で行きたい」という私の思いと、プロデューサーさんとの出会いが、本当にいい流れの中で一致したことは、とても幸運なことでした。私のことをちゃんと見てくださっている方がいたということが、とてもうれしかったですね。

刺激を受けた室井滋さん、尊敬する野際陽子さんのこと

今回のドラマ(9月1日スタート『ほっとけない魔女たち』)では、『晴海コンパニオン物語』で共演した室井滋さんと久しぶりに共演させていただきます。

『晴海〜』の撮影時、まだ私の頭の中には、「女優=銀幕のヒロイン」的なイメージを強く持っていましたので、室井さんのお芝居を間近で見たときにものすごくびっくりしたんです。

彼女のお芝居はもちろん計算し尽くされたものなんですが、とても自然で、「この人は本当にこういう性格の人なんじゃないか」というふうに見ている人に思わせてしまう力がある。それに女優なのに「えっ?こんな顔していいの?」という表情、今で言う「ヘン顔」をしたり。私は彼女の演技にとても刺激を受け、勉強になりました。

それから一緒にお食事に行くようになり、友人関係ではありましたが、このたびガッツリ組んで久々にお仕事をさせていただきます。

今はもう私も負けていませんよ(笑)。

憧れの女優は野際陽子さん。まず、人として大変尊敬しています。『抱きしめたい!』で共演させていただいて以来、一緒に旅行に行ったり、お食事をしたり、個人的なお付き合いを密にさせていただいています。

野際さんの生き方、人生に対する向き合い方というのは素晴らしいと思います。いろいろなことをしたい、見たい、聞きたい、勉強したい。そのお気持ちを、今なおずっと持ち続けていらっしゃる方なんですよ。素晴らしいですね。好奇心のかたまりです。本当に見習いたいと思います。

私は50歳を過ぎても、社会情勢から政治の問題、世の中のこと、いろいろなことを野際さんから教えていただいています。そういう方が身近にいると、とても幸せな気分になります。「野際さんが演じる鬼姑の跡を継ぐのは私」と、ひそかに自負しております(笑)。

守りに入らず、チャレンジ精神で

10月には、京都の南座で、初の舞台化となる松本清張原作『疑惑』に出演します。この作品は『抱きしめたい!』からかわいがっていただいている演出家・河毛俊作さんが手がける舞台で、私は本能のままに行動し、男たちを次々と災難に巻き込んでいくという、主人公の悪女・鬼塚球磨子(くまこ)を演じます。

そのお稽古が9月から始まるのですが、とても楽しみにしているお仕事です。悪女を演じるのは大好きです。

舞台は皆さまと直接お会いして芝居を見ていただける良いチャンスなので、お声をかけていただける限り続けていきたいと思っています。仕事に対する夢は、限りなく広がっていますね。舞台もテレビも、守りに入らずに、どんどんチャレンジしていければ、と思っています。

私は映像の世界で育ってきましたので「もういい」と言われるまでお仕事をさせていただきたいと思っています。その映像も最近はどんどんデジタル化され、日々進化しています。その日の体調や気分が全部映像に写ってしまうんです。その緊張感が良いのだとは思いますが、実はとっても怖いのですよ(笑)。

そして舞台も映像も、演技力はもちろんですが体力勝負の世界でもあるので、私たち俳優は美容よりも健康が第一。女優業って、本当に肉体労働者だと思います。

「美と健康」について聞かれることもありますが、「美」については年相応に(笑)。抵抗しても致し方ない部分についても、人工的な抵抗はしたくないですね。自然のままでいたいと思いますし、その中で努力できる部分については、できるだけ頑張っていきたいと思っています。

今やっているのは酵素浴、ピラティスと、毎日1杯必ずいただく青汁くらいでしょうか。ストレス解消は読書。子どものころから活字がとても好きなんです。小説が好きで、お気に入りの作家さんの新刊が出ると、ランダムに買って読みます。

少し前までは今、なぜ?なのですが、山本周五郎先生の本をしこたま買い込んで、読み始めるとお風呂でもキッチンでも読みました。

最近は本が重いのと、「目に優しいからいいよ」とすすめられて、Kindleペーパーホワイト(タブレット)を買いました。持ち歩くには楽でいいですね。今は撮影で本当に寝る時間もないほど忙しいんですが、寝る前には何か活字を見ないとダメなので、Kindleペーパーで、なぜか与謝野晶子訳の『源氏物語』を読んでいます。

私は主婦業や母親業を体験していないので、そうした方々に対してメッセージめいたことは何も申しあげられないんですが…。「1人だから気楽でいいわよね」と言われてしまったらそこで終わりなので。ただ、人として生まれてきたのだから、「いただいた人生を、最後まで楽しく生きていきたい」という気持ちを持ち続けたいと思っています。

後悔って、たとえそれが小さなものであっても、誰もが持って(あの世に)旅立つものだと思うんですよ。1分たりとも時間を巻き戻すことは誰にもできないわけですからね。

でも、たとえ人生に後悔が残るとしても、心の中に「明日が少しでも温かく、楽しくなるような何かを持つこと」が大切だと思うんですよ。夢でもいいですし、やりたいことでもいいですし。

例えば、私は今日、深夜まで撮影があって、明日は朝5時出発で三浦海岸でロケがあるんです。でも、「この撮影が終わったらお休みをもらって、ゆっくり酵素浴に行こう!」と、それが楽しみでここ何日かのハードスケジュールを生きているんです(笑)。

小さな楽しみですが、「明日これが食べたい」とか、そういうことでもいいと思うんですよ。そういう何かがあると、明日もきっと頑張って生きていけるんじゃないかという気がするんですよね。

(都内にある事務所にて取材)

  • 誕生のころ

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  • 3歳の七五三参り

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  • 5歳・幼稚園

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  • 小学校4年生のころ。母親と

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  • 小学校5年生

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  • 中学校1年生。学校の前で

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  • 30代のころ。スキューバダイビング

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  • 浅野 ゆう子さん

(無断転載禁ず)

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