Ms Wendy

2013年4月掲載

「違うことはいいことだ」それに気づけば人生の輝きが変わる!

大宅 映子さん/評論家・公益財団法人大宅壮一文庫理事長

大宅 映子さん/評論家・公益財団法人大宅壮一文庫理事長
1941年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、PR会社勤務を経て、1978年からマスコミ活動を始める。扱う評論ジャンルは国際問題・国内政治経済・食文化・子育てまで幅広く、大所高所からの視野と同時に個人の立場で発言する切れ味のよいコメントが好評。民間企業では、(株)高島屋社外取締役をはじめ数社のアドバイザリーボードメンバーも務めている。家族は夫、娘2人、孫3人。故大宅壮一の3女。趣味はゴルフ。著書『私の雑草教育』(三水社)『だから女は面白い』(海竜社)他多数。最新刊に『女の才覚』(ワニブックスPLUS新書)。
毒舌の社会評論家大宅壮一家の末っ子に生まれて

1番近い姉と5歳、長姉と8歳、兄とは9歳離れているので、ある意味放っておかれたのが良かったのか悪かったのか、小さいころから何でも1人でやるような女の子でしたね。

姉2人がまた母に似て美少女なのに対して、「1番下のお嬢さんは先生にそっくり」と家に来るお客さんが10人いたら10人に言われるんですよ。ブスだと言われているようでそのたびに腹を立てて、ふくれて1人で奥の部屋に入っちゃう。世間では毒舌の社会評論家で知られる父に逆らう人がいない中、父と真正面からやり合ったのは4人兄妹でも私ぐらいでした。

豪快な野人が施した雑草教育

そんな父が「うちは雑草教育です」と社会に向かって公言しました。

「雨が降れば傘をさし、虫がついたら取ってやり、倒れそうになったら支えてやり…と全部やってやれば立派なバラは咲くかもしれないが、それでは親という庇護がなくなったとき、すぐに萎れてしまう。踏みつけられても自分で立ち上がる雑草のように育ってほしい」。そういう父なりのメッセージが込められていたと思いますが、要はタブーなしの放任主義です。

「あの豪快な野人・大宅壮一がそう言うからには、さぞかしすごい娘たちに違いない」と世間では思われていたようです。

ところが、母は漢学者の娘で元教師ということもあり、しっかり子どもたちにニラミを利かせていましたから、「雑草」と言われたわりにはまともな「いい子」の道を4人ともが歩んだのです。

ちなみに、わが家には門限もありませんでした。
 私はロカビリー少女で、高校1~2年のころまでは制服のままジャズ喫茶に入り浸っていました。今のホリプロファウンダー・堀威夫さんや田辺エージェンシーの田邉昭知さんも若いころ演奏していたお店です。あのころはそれだけで不良のレッテルを貼られたものですが、そう遅く帰った覚えはありません。

「門限がないのに、どうしてそんなに早く帰るの? 最後まで聴いていけば?」
 仲良くなった堀さんらからよくそう言われましたが、私は「門限がないから早く帰るのよ」と。それを聞いて、母はしめしめと思ったそうです。

門限がない=「あなたを信頼しているから門限なんかつくらないのよ」という無言のメッセージを裏切るわけにはいかないと、よほど自己規制が働いたんでしょう。後から考えればもっと悪さをしておけばよかったねと、大人になって2人の姉たちとも悔しがったものです(笑)。
 ともかくわが家の雑草教育は、奔放な父としっかり者の母との連携プレーによって、まんまとうまくいったわけです。

ジャーナリスト大宅映子の視点は父によってつくられた

父から受けたもっとも大きな影響は、物事を客観的に「タテ」「ヨコ」「ナナメ」から見た上で総合的に判断するという、ジャーナリストの視点です。

父の職業柄、わが家には新聞や雑誌が毎日束になってドサッと届きました。日刊紙は4紙、週刊誌・月刊誌の類も数十冊はあったでしょう。字が読めるようになってから先、私も自由に読んでいました。

あるとき、父から「同じ事件でも、新聞によってこれだけ書き方が違うだろう。100紙あれば100の意見がある。1つの意見、情報だけをうのみにして考えを決めてはいけないぞ」と言われました。これは大宅壮一を父に持たなければ理解するのが難しいことだったと思います。

ただし、それが分かったのは自分が世間に出てから。大宅壮一家にいる間は当たり前だと思っていましたが、一歩外へ出てみると、多くの人が一方的な情報に踊らされ、「テレビでこう言っていたから絶対にこうだ」「○○さんがこうだと言っていたから間違いない」と、いちいち大騒ぎしている。ウソ、みんなそれだけで信じちゃうんだ?とびっくりしました。

日本の場合は、7割ぐらいの人がそうだという意見が「いい意見」で、残りの3割の意見は「おかしい」と言われますが、世界的に見ればそのほうが変です。それはすごく怖いことだと思います。だから、あえて主流派とは違う意見、前提がこうならこういう見方だって存在するでしょう、こういう考え方も成り立ちますよと、私は意図的に3割の意見を言おうとしています。

それから、日本は「平等」という意識が特に強いけれど、平等とは同じということではない。違うことはいいことですと、私はずっと言い続けているの。運動会のかけっこでもスタートラインだけが平等なのであって、そこに競争を認めるなら結果に差が出るのは当たり前。その結果を差別だ、格差だと言うのはおかしいと思います。

最近は、「ケンカになるから夫婦で政治の話はしない」という人もいるそうですが、人間の個性、性格、考え方も1人1人違っているからすばらしいんです。それを認め合えれば尊敬もされるし、誇りも高く、責任感も強くなるんですけどね。

子育ては免疫主義で

私たちが娘の時代は、夜の9時過ぎに女の子が1人で外を出歩いているなんてありえませんでした。でも世の中が変わって、私が子育てをするころには女の子だからと家に閉じ込めておくことはできなくなった。変な奴らとか危ない場所は自分で判断して、避けられるようにしなきゃダメだと思いました。

そのためにはできるだけ体験を増やすことが必要です。親の目が届く間に多少の失敗をして痛い思いをしてもらったほうがいい。それを悟って以来、私の子育ては「免疫主義」になりました。

例えばおつかいもそうです。お金を持たせ、1人で近所の八百屋さんに行かせていました。
 「小松菜を買ってきて。分からなかったら八百屋のおじさんに聞きなさい」。
 そうやって、親以外の大人とコミュニケーションする機会をつくることも子どもにとっては大事なこと。うちはマンション住まいでしたが、「ほんの少しですが」と口上を教えて届けものをさせたりもしました。

ときには冒険もさせました。よく覚えているのは、長女が小学校3年、次女が幼稚園の年少のときに、電車でおじいちゃんの家に2人だけで行かせたことです。1回目は私も一緒に行って、切符の買い方、乗る電車、降りる駅を教えて、次は子どもたちだけで行かせました。

いざ送り出したものの、内心はこちらも不安でたまりません。でも無事にたどりつくことができたら、彼女たちにとってものすごい自信になります。まさに「かわいい子には旅をさせろ」です。

今、一番ハマっているゴルフは人生そのもの

ゴルフの何がいいって、理不尽なところが楽しいの(笑)。その前はテニスをやっていたんですけど、テニスの場合は練習すればわずかでも上達します。ところが、ゴルフは突然下がる。芯に当たらなくなるわ、全部右方向にシャンクするわ、5合目まで登ったかと思うと麓まで落ちていて、でも誰のせいでもないんです。

個人競技で、審判もいないでしょう。OBになりそうなとき、人目を盗んでさりげなくポケットからボールを落として何もなかったように振る舞う人がいたり、スコアも自己申告だからごまかそうと思えばごまかせるんだけど、こっちも分かるから腹が立つわけ。そうすると次のホールで自分のほうがおかしくなる(笑)。

ラッキー、アンラッキーも神様の気まぐれで、木に当たって池ポチャもあれば、グリーンにのることもある。同じコースでも100%前と同じところにボールが落ちることなんてあり得ない。

ゴルフは人生そのものと言ってもいいくらい。だから面白いんです。うまくいかなくて落ち込むのも自分、気持ちを切り替えて調子を取り戻すのも自分。もう、日本中の子どもにゴルフをやらせたいくらい。これほど自己責任を教えられるものはないと思います。

70歳を過ぎてもおしゃれが楽しい!ポイントは色合わせ

「大宅さんはスタイリストがついているんですか?」とよく聞かれるけど、こんな楽しいことを何で人に任せなきゃいけないの?と思っちゃう。おしゃれは子どものころから大好きです。

私のファッションの基本は色合わせのコーディネート。肌がきれいに見えるきれいな色をいくつか組み合わせて、微妙なバランスを取るのが好きですね。あとはイヤリングとメガネをアクセントに。メガネは30本ほど持っています。

洋服は自分を語るメッセージだと思っているんです。自己表現、自己主張だから、人に与える印象もきちんと考えますね。だからと言って華美におしゃれをしましょうということではないけれど、「中身で勝負」と言ったって、フランス菓子ならやはりきれいな紙に包まれていないと、新聞紙で包んだら焼き芋だと思われてしまいますから。

年を重ねても素敵に見える人で共通しているのは、「自分の意思があるかないか」だと思います。あの人は美人だから、背が高いから、スタイルがいいからって人と自分を比べるのではなく、自分の持っているスペシャルなものを認識して、よりよく見せたい、きれいに見せたいと思えばいくらでも輝けます。

私がやっているのは、テレビのCMを見るときも、街を歩いているときも、いつでもアンテナをはっていること。「あれいいな」と思ったら手持ちの服を組み合わせたり、ワンポイントだけ差し色を買ったり。それでイメージとピタッと合うと、ヤッター!と思う。

ご近所に自分にとってのファッションリーダーがいてくれるのもいいですよね。その人にほめてもらおうとがんばるのもいい。また友達同士でファッションをほめ合うのもいいことだと思います。

「今日のコーディネート素敵ね」「ヘアスタイルが決まってるわね」。
 言葉はタダ。常に自分が人にそれをやってあげれば、自分にもきっと返ってきます。ほめられればほめられるほど、女性は美しくなりますよ!

(青山の事務所にて取材)

  • 七五三お祝いのとき

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  • 15歳のとき、家族と自宅にて(向かって右が本人)

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  • 20歳のころ。父親と公園にて

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  • 長女(2歳)と一緒に。28歳のとき

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  • 1985年44歳のとき。テニスジャーナル紙より

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  • 大宅 映子さん

(無断転載禁ず)

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