Ms Wendy

2005年5月掲載

『人生に偶然はない』と思えば楽しく生きていけるし、感謝もできる

千葉 麗子さん/ヨーガ・インストラクター

千葉 麗子さん/ヨーガ・インストラクター
1975年、福島県出身。
91年アイドルとしてデビュー後「チバレイ」の愛称で人気を得てTV・CM・ラジオに多数出演。
95年アイドルを引退、(株)チェリーベイブを起業、代表取締役に。CD-ROM・ゲーム・WEBのプロデュースや制作を行う。
99年ヨーガを始め、2002年成瀬貴良氏の下にてインド哲学やヨーガ教典の勉強を開始。2003年からインドでの修行滞在を重ねる。
現在ヨーガ・インストラクターとして活動中。昨年東京都渋谷区代官山駅前に「インテグラルビューティー代官山スタジオ」を開設し、インテグラルビューティー(株)取締役に就任。ヨーガのレッスンや各種プロデュースを行っている。最新著書は「千葉麗子のスタイリッシュ ヨーガ バイブル」(学習研究社)。
チェリーベイブHP www.cherrybabe.co.jp
育児ノイローゼ、父の死… ヨーガに救われて

私がヨーガに出逢ったのは5年半前、24才のとき。出産後の体型を元に戻したかったのが、始めた動機でした。最初はフィットネスクラブで行われているようなヨーガをしていたんですが、やっていくうちに物足りなくなって、今のヨーガの先生に出会い本格的に学んだ末、自分のライフワークにしたいと思うようになったんです。

ヨーガはただ外側を鍛えて美しくするという運動ではなく、実はとてもスピリチュアルなもの。じっくりと自分の心に向き合えるのが魅力です。始めた当時は、長男を出産して半年間の育児休業中。アイドルをやめて20才のときに起業した会社での多忙な日々から一転、育児に追われていた。仕事のブランクに焦り、「社会から取り残されてしまった!」とひとり思い込んで、育児ノイローゼに。うつ病やパニック障害を起こして心療内科に通院し、身も心も疲れきっていました。そんなとき出逢ったヨーガによって、身体が引き締まると同時に、心も元気になれたんです。

また4年前の、父の死の影響も大きかったですね。たいへん落ち込んで心のバランスを崩したんですが、そのときもヨーガに大きく救われたと思います。 それからはインド哲学やヨーガ教典の勉強を開始し、一昨年にはヨーガの修行をするため、ヨーガ発祥の地インドに向かいました。「行きたい!」と思ったらすぐ行動に移してしまうのは、私の性格。ヒマラヤの山々のふもとにあるヨーガの聖地・リシケーシに行き、2週間滞在しました。向こうに行くと、人生観変わりますよ。テレビなど情報から隔絶した地域で、アルコールもタバコももちろんなく、食べ物は麦、米、野菜とミルク、作りたてのギー(バター)ぐらい。ヒマラヤの水は冷たく、手を入れただけで涙があふれてきて。修行は現地の師匠について青空の下でやりました。

今年の3月には、2回目のインド修行に出発。1回目のインド行きのテーマは「自分探しの旅」でしたが、今回は「自分のコア(芯)を見定める」こと。自分の生き方そのものを見つめ直したかったんですね。その結果、これから自分がやりたいことも明確に見えてきました。

そして帰国後再び東京での激務に戻ったんですが、不思議なかゆみと痛みが身体に出た。医者に行くとなんと、子どものころ済ませたはずの“水ぼうそう” (笑)。強いストレス状態になると、身体に眠っていた水ぼうそうの芽が出てくることがあるんですって。それほど、インドと東京での生活にはギャップがあったみたい。

人を癒せるのは、あたたかい人間の手

昨年東京・代官山に、ヨーガのレッスンが受けられるスタジオを開設しました。私はその会社の取締役であり、また講師としていくつかのレッスンを持っています。

ヨーガの会社とスタジオを作った動機は、私が得られたことをほかの女性にも返したかったから。ヨーガによって育児ノイローゼや父の死を乗り越えられて、スタイル的にも子持ちに見えないプロポーションを得たわけだけど、自分がもらったこうしたいい影響は、独り占めしないで誰かに返さないとズルいと思っちゃう。愛をもらったら、今度はまた誰かに返さなきゃ。愛はキャッチボールなんです。

ヨーガ的ライフスタイルを広めていくのも目的。ヨーガを知ると、自分の身体の声が聞こえてくるんですよ。今日取るべき水の量もわかるし、暴飲暴食なんかしなくなる。私もときにお酒を飲んで食べて楽しむときはあるけれど、次の日の食事でコントロールして体調管理しています。だから20才前半のときより、いまのほうが体力もついて強いくらい。

受講者のなかには、1時間半のレッスンが終わって、涙を流す人もいます。身体や心のつまりがとれて、気持ちよくなったのね。また、私が今後考えているクラスには0才からの子どもを対象としたキッズ・ヨーガもあります。これは子どものおけいこごとでなく、実はお母さんたちのためのプログラム。子育てにストレスを感じるお母さんたちにその場で息抜きしてもらって、楽しくやろうよというのが主旨です。

「どうしてIT業なのにヨーガなの?」とよく聞かれます。それは、ITでは人を癒せないから。10年間自分の会社でIT業をやってきて、そういう結論にたどりついたんです。癒す手助けのツールとしてITは役立つけれど、直接人を癒すことはできない。だから話題のロボット犬なんて私はほしくない。ペットなら生身のほうがいいじゃないですか。

IT業界の第一線でやってきたからこそ、「手と手が触れ合ってあったかいね」という究極のアナログであるヨーガにたどり着いたんだと思う。デジタルのIT業とアナログのヨーガ、あるいはライフワークとしてのヨーガと経営者として見るビジネスのヨーガ、それぞれ2極相反することを私はしていますが、バランスを保って両立していきたい。もともとヨーガには「太陽と月」といった相反するものを、バランスを以って統一するという思想がある。逆にどちらか一方しかないと崩れてしまう。いかに両者のバランスをとって冷静な自分を保てるかが課題だし、それが修行でもあると考えています。だからいまでは、決算書読むのもヨーガ修行のつもり(笑)。

これからヨーガをやろうという人にアドバイスしたいのは、よい先生について指導を受けてほしいということ。それが長く続けていくポイントです。本で見て真似するのと、直接指導を受けて体験するのとではやはり何倍も効果が違う。ぜひ自身の身体で気持ちのよさを実感してほしいですね。

30代のテーマは、内面豊かに過ごすこと

16才で親元を離れてアイドルになり、4年で辞めてパソコン関係の会社を起業して、社長業をやってきてちょうど10年。この10年間を振り返ると「日本の社会を存分に勉強したな」と感じます。たくさん稼いだし、遊んだし、倒れるまで働いて自分の身体を苦しめた。摂食障害や婦人科系の病気も多く経験した。特に20代前半はITバブル期だったので、徹夜して、倒れて、点滴打って…という日々。眠っている時間がもったいなくて、人が寝ている間に数倍働きたかったのね。そんな仕事を通して得た一流の経営者の先輩たちなど、多くの人脈は今も生きています。私がヨーガの仕事をするというと、みなさんいろいろな形で応援してくれますね。

20代で仕事も遊びもやりつくした感じ。いま30才になったけど、これからの30代は「いかに豊かに過ごすか」をテーマにしたいと思います。

加えて、「美(ビューティー)」も追求したい。外側だけの美しさより、内面を磨き上げてしなやかに鍛え上げられた本当の美を。先日そうしたテーマでヨーガの本を出しましたが(「千葉麗子のスタイリッシュヨーガ バイブル」学習研究社)、これ以上のものは将来も2度と書けないし、日本ではこの先も出ないだろうと師匠たちに言っていただいたくらい力を入れた本です。同世代の30~40才代の女性にぜひ読んでもらいたいですね。

限られた時間を濃密に子どもと過ごす

長男は5才になりました。母親業は…うーん、あまりできてないな(笑)。忙しくて彼と一緒にいる時間がなかなかとれなくて悪いなあと、いつも自己嫌悪してますよ。

今日もおけいこごとのお迎えが済むとそのあとはスタジオに入ってしまうので、旦那さんにバトンタッチ。ご飯作って食べて、お風呂入れて絵本読んで、寝かしつけてもらう。旦那さんは育児や家事にすごく協力的なので、とても助かっていますね。

ネガティブな角度でこの状況を見ると「母親といる時間が少なくてかわいそう」となりますが、逆にポジティブに見ると、子どもにとってはいい経験ができてるんじゃないかな。世の中にはこんな母親もいるんだとわかって(笑)。保育園でも私より忙しいお母さんはいないと思っています。だから普段たっぷり会えない分、一緒にいるときはもう私にべったりしてくる。時間が短いけど、母子で過ごすときはすごく濃い。

11月にまたインドに行く予定ですが、このときは彼を連れていこうと考えています。もう連れていっても大丈夫かなと思って。彼には不思議な世界を見せたいの。孔雀が歩き、動物や人間の糞までそこここに落ちている世界。日本の子どもは清潔な環境で育っているから、びっくりするでしょうね。そしてお金をちょうだいと寄ってくる幼い子もいる。彼にはインドで「生きていく」とはなにかを見せるつもりです。

「今度はこんなこと!?」と期待を裏切りたい

ヨーガをやるうちに「人生に偶然はない」と確信するようになりました。人生に起こるあらゆることは偶然でなく、必然だと。そう思えば、身に降りかかる苦難も受け入れることができるし、乗り越えることもできる。そして楽しく生きていこうとする気持ちも出てきて、あらゆるものに感謝ができるようになりましたね。

思い起こせば、亡き父はヒンドゥー教や仏教の研究者でした。娘の私がインドに興味を持ち、足を踏み入れたのも、そんな父の血を受け継いでいたからなのかも。不思議だけれどそんなところで繋がっていた。いまでは父の死に感謝したいくらい。やはり、人生に偶然はないんだと思います。

よく「肩書きは何にしますか?」と聞かれるけれど、「何でもいい」って答えてる(笑)。アイドルとか社長とか、○○の、でなくて、個人の千葉麗子でいいじゃない。自分のカラーはこう、と決めつけることは元々いやなの。かつてアイドルをやめたのは、「アイドルの千葉麗子」と決めつけられるのがいやだったから。いまは肩書きなんか関係ない時代。どこかの大会社に所属していれば安泰、ではなくなったし、個人の能力とスキルが問われる時代です。

現在私はヨーガにはまっていてライフワークにするつもりだけど、将来は全然違うことに興味が向くかもしれない。たとえば、長野に行ってレタス作りにはまるかもしれない。それならそれでもいい。つまり、自分がそのとき最高と思えることで生きていきたいんです。未来は作り上げていくものだし、そのときそのとき自分のアンテナに引っかかったことを、クリエイトして極めていきたい。これからもそんな人間でありたいし、やりたいことを始めるのに年齢なんか関係ないですよ。これからもフットワークを軽く、人の期待をいい意味で裏切っていきます。「えっ、チバレイって今度はそんなこと始めたの?」ってね(笑)。

将来は、日本とインド、半々くらいで過ごす生活にしてみたい。3ヵ月ごとに行って帰ってくる生活。何年後に実現できるか…。いつか、実現したい夢ですね。

(東京都渋谷区にて取材)

  • インドにて。 ヨーガの師の妹バイニちゃんと。

    インドにて。
    ヨーガの師の妹バイニちゃんと。

  • インド、ガンジス河のほとりで メディテ-ション中。

    インド、ガンジス河のほとりで
    メディテ-ション中。

  • 千葉 麗子さん
  • ヴィリクシャ・アーサナ。 樹のポーズです。

    ヴィリクシャ・アーサナ。
    樹のポーズです。

(無断転載禁ず)

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