Ms Wendy

2004年10月掲載

日常の『小さな幸せ』を大切に~。そうすればきっと『ハピネス』な世界になるよね

岩崎 宏美さん/歌手

岩崎 宏美さん/歌手
1958年東京生まれ。
1975年、『二重唱(デュエット)』でデビュー。『ロマンス』で日本レコード大賞新人賞を受賞し、抜群の歌唱力でファンを魅了し続ける。
1982年、『聖母たちのララバイ』では130万枚の大ヒットを記録。『屋根の上のバイオリン弾き』『レ・ミセラブル』など、ミュージカルでも活躍。
2004年、デビュー30周年を記念したアルバム『30TH ANNIVERSARY BOX」を発表。
10月16日オリジナルアルバム『Happiness』をリリース。10月16日(愛知)、22日(大阪)、24日(東京)に30周年記念コンサートを開催。
青森の美術教師から役者に転身

私が歌の世界にデビューしたのは16才のとき。なんと、この4月で30周年を迎えました。こんなに長く、よく続いたなって思いますね。そのとき生まれた赤ちゃんが、もう30才になっているわけですから。結構飽きっぽい性格なのに、歌だけは不思議に歌い続けられた。そのことに一番驚いているのは自分自身かもしれません(笑)。

デビューしたころに比べると、今の方が歌うことが楽しいですね。歌詞の内容も、以前はこんな感じかなって、想像で歌っていたんですが、だんだんその意味が深く理解できるようになって、歌の世界も広がりました。

もともと私が好きなジャンルはモータウンミュージックで、『ジャクソン5』とかよく聞いていたんです。そのころは、趣味で聞く音楽と表現する音楽はまったく違う世界でした。でも、今は自分が好きな音の世界も歌の中に取り入れて歌うことができるようになりましたし、そういう意味でも、今の方が断然面白い。

今まで体験してきたそのすべてが歌の糧になっているわけですから、辛いこと、苦しいこといろいろとあったけど、歌を続けてきて本当によかった、今は心からそう思います。

お転婆だった子ども時代

私が生まれたのは、深川の下町です。まだ、木場が近くにあったころで、川にはいかだがたくさん浮いていて、周りは材木だらけという環境でした。

私は三姉妹の真ん中に生まれて、一番のお転婆だったらしい。木登りなんて、得意中の得意でしたよ。近所の子を引き連れて駄菓子屋さんや紙芝居を見に行ったり、お金がなくなると、こっそり家から一升瓶とか持ち出して、酒屋さんで瓶代に変えてもらったり。妹にとっては姉というより兄貴のような存在でした(笑)。今でもお祭りが大好きで、チャキチャキの江戸っ子気質は抜けませんね。

父は剣道8段で師範の免許を持っていたので、小さいころは私も道場に通って、剣道を教えてもらいました。その後、親の希望で姉妹3人、世田谷の成城学園に通いました。クラスでは一番遠くからの通学だったんです。でも、すごく自由な校風で、ディズニーの映画を見せてくれたり、小沢征爾さんの母校ですから、講堂で音楽会を開いてくれたり。初めて本格的な生の演奏を聞くと、子どもでもシーンとなるんですね。今から考えると、とても贅沢な環境を与えてくれた親や学園にはすごく感謝しています。

「スタ誕」から歌手デビュー

小学校のころからお稽古事の一つとして、歌も習っていたんですが、歌手になろうと決めたのは、森昌子さんのデビューをテレビで見たのがきっかけですね。ごく普通の中学生がプロになれるなら、私にもチャンスがあるかもしれない、と。

すぐに「スター誕生」に応募して、高校2年でデビュー。でも、父には反対され、20才までという約束で歌手活動を始めました。急に寝る間もないぐらい忙しくなって、たまにお昼まで学校の授業に出られると、うれしくて食堂で泣いていたぐらい(笑)。

一緒にデビューした同期には細川たかしさんや片平なぎささんとか…。現役で活躍している方はだんだん少なくなりましたね。サザンオールスターズの桑田さんも同じレコード会社だったんですが、「デビューしたころ、芸能界は特殊だと思っていたけど、岩崎さんと仕事をしたらあまりにも普通の人なので、これならやっていけると思った」なんて言われたんですよ。

芸能界の中では、東京に出て、故郷に錦を飾るためにがんばってるという方も多いんですが、私の場合は、東京に生まれ育って気楽に仕事を始めたので、何の気負いもなかったんですよ。よく言えば自然体だし、その反面ハングリー精神には欠けていたかもしれません。

子どもは生きる力をくれる存在

その後、30才で結婚し、しばらく歌はお休みして、主婦の仕事に専念しました。実は、それまで家事は一切やったことがなかったので、お料理とかアイロンがけとか、初めてのことばかりでしたが、それがすごく楽しかったんですよ。友だちと刺繍を習ったり、子育ても楽しくて、毎日を心からエンジョイしてました。

でも、主婦の仕事って朝起きたときから夜寝るまで、終わりがないし、専業主婦が一番大変だなってそのとき思いましたね。ご主人や家族から、感謝されればやりがいもあるけど、ほとんど評価されないし、当たり前のように思われてしまう。子どもを育てながら立派に主婦の仕事をこなしている方を見ると、思わず尊敬しますね。

結婚生活は本当に楽しかったんですが、いろいろとお互いの気持ちがすれ違い、7年後に離婚。その1年後、再婚した主人が2人の子どもを引き取ることになったんです。一時は、子どもと離れている寂しさで心がかきむしられるような思いも経験しました。でも、それも自分で決めたことですし、今は、ときどき会える息子の成長を楽しみに、がんばろうと思っています。離れていても、息子たちが誇りに思ってくれるような仕事をしたい、そう思わせてくれるから、私にとって、子どもは生きる力を与えてくれる大きな存在なんです。

歌で応援するのが私の仕事

私の歌を聴いてくださる方の中にもいろいろな悩みを抱えている方がいらっしゃいます。全国でコンサートをすると、ファンの方が『私も同じ境遇です』って。中には泣き崩れる方もいて、本当につらいんだろうなと思います。

私の場合は、幸いなことに歌うことを支えにして、乗り越えることができましたから、主婦であっても何か自分が好きで打ち込めるものを持つといいと思います。難しいかもしれないけど、自分の意識を変えることが一番大事なんです。今どんなに大変でも、母親が一生懸命輝いている姿を見せれば、いつか必ず子どもに伝わると思います。だから、負けないでがんばってほしいですね。

今私にできることは、歌を歌って応援することだけ。私の歌を聴いてくださった方に、「元気が出ました。明日からがんばります」って言われると、本当にうれしいんです。歌を通して、ささやかでも生きる勇気を感じてほしい。それが私たちの仕事だと思うし、多くの方々の力になれる、そんな音楽を作っていきたいと思っています。

ポジティブに、ハピネスに生きたい

この10月、5年ぶりにオリジナルアルバムを出しました。タイトルは『ハピネス』。

世界中で紛争やテロがあったり、こんな不安定な時代だからこそ、「小さな幸せ」を大切にしたい。普段何気なく、当たり前のように思っていることにあらためて感謝する、みんながそんな気持ちになれば、もっと優しい世界になるのにって、そんなメッセージも込められています。

今回は曲目もポジティブで、ものすごく前向きになれる歌ばかりなんです。ハピネスというタイトルの通り、私自身も幸せを感じながら歌えたので、レコーディングもすごく楽しかったですね。岡本真夜さんに作っていただいた新曲『手紙』は、愛しい人を大切に想う気持ちが歌詞になっていて、私も大好きな曲なので、今年の締めくくりになるように大事に歌っていきたいと思います。

そして、30周年記念コンサートも10月に3ヶ所で行います。初めて来てくださる方にも、ずっと応援してくださっている方にも楽しんでもらえるようなステージにしたいと思っています。

不思議なもので、40代になってから、コンサートでの歌い方もずいぶん変わりましたね。昔は、レコードと同じように歌わなくちゃいけないと思っていたんですが、今はその日の気分や空気に合わせて、自由に歌えるようになりました。例えば、バンドの方の演奏がいつもとちょっと違っていたり、素敵なフレーズだな、なんて思った瞬間に、今までとは全然違う声が出たりするんですよ。そういう楽しみ方って、今までの自分にはなかったような気がします。

子どもは生きる力をくれる存在

何年も歌を続けていると、新しい発見があって面白いですね。ただ、やはり年齢を重ねる分、体調をいつもベストに保つことが一番大変かな。

健康のために特別に何かをしているわけではないんですが、ストレッチとスクワット、それに夜腹筋を100回ぐらいはしています。あとは、犬を飼っているので、犬の散歩ぐらいかしら。睡眠時間もたっぷりとって、よく眠るようにしています。一度、のどのポリープで手術しているので、これからは自分の体と上手につきあっていくしかないですね。

それと、最近凝っているのは、家の中の整理整頓。風水の本を読んだら、部屋をかたづけられないと運を逃すって書いてあったので、早速実行しています(笑)。私は物をたくさん貯めこむ方なんですが、古いものをどんどん捨てて、おかげで部屋がずいぶんきれいになりました。たったそれだけのことなのに、何だかとても心地いいんですよ。だから、妹にもすすめているんです。

そういえば、去年、カバーアルバムを出したときに、妹と初めてデュエットをしたんですよ。そしたら、声が溶け合って、どっちの声だかわからないぐらい似ていました。おかしいことに、音程が下がるところまで同じなの。やっぱり同じDNAを持ってるんだって、妙に納得してしまいました。妹とは、仕事が同じということもあって、親に話せないことも、何でも話せるし、とてもありがたい存在ですね。

この30年をあらためて振り返り、家族や友だち、仕事仲間など、いろいろな人に支えられ、本当に恵まれていたなと思います。これから、あと何年続くか、自分でも楽しみなんですが、楽しいと思えることを大事にしながら、歌っていきたいですね。実は、まだ息子にも私が歌っている姿を見せたことがないんです。でもいつの日か、こんな風にがんばってるよって見せてあげたいな。

私が自分なりにいつも大切にしてきたのは「姿勢」ですね。武道でも何でも姿勢が大事ですが、心や体の姿勢も含めて、姿勢を正すこと。音楽に対しては、真正面から取り組んできたので、この姿勢は変えないで、これからも歌い続けていきたいと思います。

(江東区の事務所スタジオにて取材)

  • 姉・初美さんと左が宏美さん、4才ごろ

    姉・初美さんと左が宏美さん、4才ごろ

  • 2004年4月1日 倉敷チボリ公園内野外ステージにて

    2004年4月1日
    倉敷チボリ公園内野外ステージにて

  • カバーアルバム「Dear Friends II」にて。 良美さんとのデュエット曲 「白い色は恋人の色」のプロモーションビデオ撮影にて

    カバーアルバム「Dear Friends II」にて。
    良美さんとのデュエット曲 「白い色は恋人の色」のプロモーションビデオ撮影にて

  • 発売中アルバム 「Happiness」

    発売中アルバム
    「Happiness」

(無断転載禁ず)

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