Ms Wendy

2002年6月掲載

『人マネ』ばかりの若い日本女性 もっと自然な個性を大切にして

マークス 寿子さん/秀明大学教授

マークス 寿子さん/秀明大学教授
1936年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。都立大学大学院博士課程修了。
1971年ロンドン大学LSE研究員として渡英。
1976年マイケル・マークス男爵と結婚。英国籍と男爵夫人の称号を得る。
1985年離婚。
エセックス大学現代日本研究所講師を経て、現在秀明大学教授として日英間を行き来している。主な著書に「大人の国イギリスと子どもの国日本」「ひ弱な男とフワフワした女の国日本」「自信のない女がブランド物を持ち歩く」(いずれも草思社刊)など。
化粧するほど、みんな同じ顔になる?

ついこの間、新聞の取材を通して、びっくりしたことがありました。いま”二重まぶた“にするグッズが若い女性の間で流行しているそうですが、最近では娘を二重まぶたにしようとする若いお母さんが多いらしいですね。それも、生後2~3ヵ月の赤ちゃんにですよ。ついに日本人もここまできたか、と呆れてしまいましたね。

「二重まぶたが可愛い」と言われると、日本の若い女性はなぜ、みな二重にしようとするのでしょうか。二重にしない方が綺麗な人も多いのに。

最近の日本の女性は足も長くなったし、体型も堂々としていて、昔と比べてずいぶん綺麗になりました。素材もよいし、それぞれが個性的。それなのに、お化粧するとみんながみんな同じ顔になってしまう。そして、女性誌などで「知的メイク」が流行るとみんながそれを真似る。でも世の中全員「知的」になっちゃったら困りますよね(笑)。

知的な人、官能的な人、ぶしつけな人、素朴な人というように、いろんな個性を持った人がいるからおもしろいんです。顔の表情にしても、楽しいときはイキイキ輝いたりと、本来は内面を映し出すべきもの。お洒落したい気持ちもよくわかりますが、せっかくのすばらしい個性をどうしてみなと同じにして隠してしまうのかと、私は残念に感じます。

ブランド物を見せびらかすのは勘ちがい

先日イギリスから帰国する際に、ロンドン・ヒースロー空港で異様な光景を目にしました。40才くらいの両親と中学生くらいの子の日本人家族がいたのですが、みな全身ルイ・ヴィトンで固めていた(笑)。本人たちとブランド物がちぐはぐだったんです。

本来ブランド物とは、自分にふさわしい気に入ったものを、何年も大事に使うもの。それがいまの日本では、“その年の流行”で買われている。ブランド会社もそんな日本のマーケットを見越して、毎年毎年、流行のものを出しています。「日本の若い女性は、流行ならどんなものでも買う」と思われているようで悔しいですよ。

そんな若い女性たちに、なぜブランド物に走るのか聞くと、「周囲に見せびらかして、自信をつけたいから」。でも本来ブランド物は、地下鉄などで見せびらかすために持つものではないんです。イギリスでは、地下鉄にブランド物を持った人はいない。そもそも買えるようなお金のある人は車で移動しますから。またあるイギリス女性はシャネルのバッグについて、「シャネルのマークさえなければ買うのに」と言っていました。「お金を出して、なぜブランドの宣伝までしなければいけないの?」という考えです。ロゴを見せびらかしたい日本女性と全くちがいますね。

ブランド物は自分の人生経験を積んでいくなかで、それを好きだと感じられたら買えばいい。「自信をつけたいから」持つものではないはずです。

周囲を気にせず化粧、キスする子たち

若い人たちといえば、マナーについても気になります。周りの人の存在はどうでもよい、気にならないという子が最近増えましたね。例えば電車の中で、他人の足を踏んでも平気でいたり。また肌の露出が多い服装で平気で歩いたり。先日も私の教え子である、ネパールから来た奨学生の男の子がびっくりしていました。「あんな格好して、親の前に出て恥ずかしくないのかな?」って。

車内でお化粧する光景も、いまや当たり前になりましたね。化粧は見えないところでするという常識は関係ないようです。そして周囲に注意を払う人すら少ないのが現実。

電車内で、若い男女がキスしている光景もときどき見かけます。欧米でも、車内でキスする姿はよく見かけますよ。でもどこがちがうかと言えば、欧米のカップルはキスをしていても周囲に対してちゃんと目配りをしている。一方、日本人は周りなど目に入らず、やりたい放題でしょう。

私が初めてイギリスに行ったころの話です。車内で男女がキスしているのを見て、私は目のやり場に困っていました。すると突然、キスしている男性が私に、パッとウインクした。もうびっくりするやら、おかしいやら(笑)。周囲に目配りしていたわけだし、あれならこちらも楽しい気分になれますよね。

周囲に気遣いをしながら自分のしたいことをするのが、共同生活のルール。私は電車で、荷物を網棚に上げてもらったときなどは、精一杯相手に感謝します。「どうもありがとう。おかげさまで」と自然に言葉をかけ合えるような雰囲気を大切にしていきたいですね。

家庭の主婦が自信をつける方法

茶髪、ピアス、ルーズソックス、ブランド集め…。自己表現としてやっているんだと言いますが、その実、多くは単なる人マネです。

本当は、人マネなんかすることはないんです。それぞれの人に、生まれたまんまの自然な個性が備わっているのだから。しかし若い女性は、そんな自分に自信を持てずに、流行にハマってしまう。

さらに最近では、専業主婦、特に40才辺りの世代に自信のない人が多いですね。自分に自信が持てないから、子どもをいい学校やタレントスクールに通わせたり、化粧させたりすることにエネルギーを費やすのです。

大家族だった昔は、専業主婦のお母さんは家族の中心。お母さんが病気したら家族は困ってしまったから、お母さんも自分がいかに大切な存在かを知ることができました。しかし核家族時代のいまは、ものはなんでも買うことができるし、主婦としての存在に自信が持ちづらいとき。そこで焦ってブランド品集めやメール友だち、整形美容にはまって抜けられなくなってしまうのです。

そんな自信を持てない人には、ちょっとしたボランティア活動をおすすめしたいですね。例えば隣に一人暮らしのおばあさんがいたら、「買物手伝ってあげよう」と声をかけて、荷物持ちを手伝ってあげたりするんです。すると相手から感謝され、ほめられますよね。そんな役に立ったという経験が、自信につながっていく。さらに情報に振り回されずに、自分の勘を信じることが、子育てや家事にイライラしないコツといえるでしょう。

男性はもっと妻や娘をほめるべし!

日本女性に自信がないのは、男性のせいでもある。男性には「もっと妻や娘をほめなさい!」と声を大にして言いたいですね。

「釣った魚に餌をやらない」といいますが、どうも日本の男性は奥さんに直接「綺麗だね」と言わないですね。その点、フランスやイタリアの男性などは、女性をほめるのがたいへん上手ですよ。

娘に対しても同じ。「成績がよくなったから、ほめてやる」のではなく、自然なそのままの姿をほめてあげるべきです。私は父から、外見について茶化す言葉をしょっちゅう言われて、傷ついた思い出があります。女性には、ほめてもらいたい時期があるんです。だから洋服や成績をほめるのではなく、本人のよいところをみつけて、ほめてあげてほしい。正当にほめられなかったこと、満足感のなさが、若い女性に自信を失わせ、ブランド物を持つことで周囲の目を引きたいと思わせるのですから。

だから最後に、世の男性たちにも強く言っておきましょう。

「女性をほめるのは男性の仕事。日本流に“言わなくてもわかるだろう”なんてのはもうダメ!」とね(笑)。

  • ブランドや流行に頼らず自然な個性に自信を持って

    ブランドや流行に頼らず自然な個性に自信を持って
    photo hiroshi kiuchi
    (C)WENDY

  • 狂ってしまった日本を一刀両断

    狂ってしまった日本を一刀両断
    (C)草思社

  • イギリスの自宅にて

    イギリスの自宅にて
    (C)Toshiko Marks

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