多くのマンションでは外壁の仕上げ材にタイルが使用されています。タイル自体は耐候性の高い材料です。しかし大規模修繕工事が近づいたマンションの外壁を調査すると、多少の差はありますが、不良箇所が見つかります。欠陥としては主にクラック(ひび割れ)と接着不良です。
クラックは下地のコンクリートのクラックにつられて起きることが多く、下地が健全でタイルのみ割れていることはまれです。雨でぬれる場所では、コンクリートの割れ目に浸入した雨水によってエフロレッセンス(コンクリートの石灰成分が染み出て白く汚れる現象)が生じます。エフロレッセンスが生じて、初めてクラックに気づく場合もあります。コンクリートに連動して割れるくらいタイルはコンクリートに密着しているので、ただちに剥落することはないですが、寒冷地では浸入した水が凍って膨張し、タイルが剥がれる場合もあります。
タイルが接着不良だと、浮いたタイルと下地の隙間に入り込んだ雨水により、エフロレッセンスが生じます。クラックの場合と違い、面に広がって現れることが多く、遠目にも目立って汚れて見えます。エフロレッセンスが現れていない場合でも、同じ壁面であるにも関わらず、雨上がりに乾いた部分と湿った部分がまだらに見えることがあれば、部分的にタイルの浮きが生じているかもしれません。接着不良が起きている部分は表面の温度が直接コンクリートに伝わらないので温度変化が速いのです。一方、十分に接着した部分は表面温度がコンクリートに伝わりやすく、前者との間に温度差が生じて、ぬれたタイルの乾燥に時間差が生じるため、目に見えるわけです。外壁の打診調査に代えて行われるサーモグラフィーでの調査は、この温度差を利用したものです。そういった目で日頃から建物を見ていると、今までと違ったものが見えてくるかもしれません。
マンションは特殊建築物定期報告が法的に義務づけられています。10年毎に外壁タイルの打診検査を行い、報告しなければなりません。タイルの落下による人への被害が発生し、将来もその可能性があるからです。大きな事故にならないように、外壁タイルのメンテナンスは定期的に行う必要があります。
2015年6月掲載
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