紫色部分は中性化していない。
表面のコンクリート色の部分が
中性化の進行した部分
「一般的に、コンクリートの建物の寿命は65〜70年」ということを耳にしたことがある方は多いと思います。その根拠は、85年前の実験から得られたコンクリートの中性化(アルカリ性の性質を失うこと)の進行速度にあります。
鉄筋コンクリートの柱や梁の鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚は30ミリと規定されています。その30ミリが中性化すると、中の鉄筋がさびるようになります。その30ミリのコンクリートが中性化するのに、計算上65年かかるという実験結果が発表されたことに起因しています。
鉄筋がさびると膨れて、コンクリートを膨らませることで、爆裂という現象が起きます。要するにコンクリートが剥がれ落ちるのです。そうすると鉄筋コンクリートが設計された強度を失い、壊れてしまいます。その時期を鉄筋コンクリート建物の寿命と見なしたのです。しかし実際に解体された建物を見てみると、特に建物内部はほとんど中性化は見られず、鉄筋もさびてはいません。中性化の進行の実験は、試験体はコンクリート打ち放しで、屋外露出の条件で行われたものなので、現実の建物とは条件が違うのです。実際のマンションの外壁は、タイルや塗装で覆われていて雨や炭酸ガスから遮へいされています。大規模修繕工事で外壁や軒裏の修繕をしますが、美観的な修復だけでなく、構造躯体を保持することも大きな目的です。
マンションの価値を評価する場合には、設備の時代ごとのニーズや耐震強度もありますが、躯体強度に限定すれば、定期的な計画修繕を行い躯体の中性化を管理すれば、100年でもそれ以上でも維持できるはずです。マンションも含めて実際の建物の寿命は、物理的な寿命ではなく、社会的寿命または経済的寿命で決められ、建て替えられているのが現実です。
2014年8月掲載
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