地域再生を考える

2025年9月掲載

聖地巡礼でまちおこし!?
旅が何倍も楽しくなる「ロケツーリズム」

ロケーションジャパン編集長 山田 実希さん

ロケーションジャパン編集長
山田 実希さん
1977年兵庫県宝塚市生まれ。雑誌『ロケーションジャパン』編集長。映画・ドラマの現場取材やインタビューの他、全国で観光アドバイザーとしてロケによるプロモーションのノウハウを指導。2020年に総務省「地域力創造アドバイザー」に就任。
ロケ地を訪れる旅はなんと70年前から!

作品ファンがロケ地に訪れる「聖地巡礼」という言葉が、年々注目を集めています。かつてドラマ『冬のソナタ』で舞台になった韓国へ行ってみたくなった方も、読者の中でいらっしゃるのでは。近年ではNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台になった岩手県久慈市は、当時32億円もの経済効果とニュースになり、今でも多くの観光客が国内外から訪れています。

映画やドラマのロケ地を訪ね、風景やグルメを楽しみ、人々のおもてなしに触れてその地域のファンになることを「ロケツーリズム」といいます。ロケ地巡りの醍醐味(だいごみ)は、その地域ならではの魅力を堪能すること。例えば、イタリアで「真実の口」を訪れた方が、映画『ローマの休日』のワンシーンをまねることは、70年以上も前から楽しまれています。

プラスαの楽しみ方を提案

私が編集長を務める雑誌『ロケーションジャパン』(発行元・地域活性プランニング、東京都港区)は、映画・ドラマのロケ地情報をはじめ、地域の隠れた魅力を発信し、日本中を元気にすることを目指しています。映像制作者や自治体の観光担当者に定期購読いただいているほか、一般読者からは、ロケ地情報に加えて、その地域のおすすめの観光スポットやグルメ情報が評判です。そのようなプラスαの楽しみを発信することで、訪れた方がその地域のファンになるよう意識しています。

ロケツーリズムは仕掛けられる!?

私たちの会社では出版業のほか、全国の自治体・企業に対してコンサルティングを行っています。実は、ロケツーリズムは「仕掛ける」ことができます。

例を挙げると、民間では、オリックス・ホテルマネジメントが運営する全国のホテルで、ドラマ『週末旅の極意』全話のロケ誘致に成功。ブランディングツールを作成するなど戦略的にプロモーションを展開。また、運転手不足が課題である東急バスは、バス車両を貸し出すロケ誘致に乗り出し、リクルーティングにつなげるべくアドバイスを行っています。

自治体では、長崎県島原市の名も知られていなかった無人駅で「キリンレモン」や「マクドナルド」のCM撮影がたて続けに行われたことで、今や観光バスも訪れるほどの聖地に。ふるさと納税寄付額はメディア露出の影響もあり2024年度は過去最高額に。静岡県西伊豆町では、廃校を利活用した宿泊施設がバラエティ番組『ナニコレ珍百景』で紹介されて大人気に。24年度のロケ活用による直接経済効果は約2060万円、広告換算効果は約6.5億円と町が試算しました。

神奈川県湯河原町では、映画『青春ゲシュタルト崩壊』の撮影が中学校で行われ、町民がエキストラ参加し郷土愛の醸成につながったとも。静岡県伊東市ではアニメ『ゆるキャン△SEASON2』に登場した大室山にロケ地看板を設置し、インバウンド誘客に成功。これらの取り組みや成果についても、『ロケーションジャパン』で詳しく紹介しています。

どんな地域にも可能性がある!

「ロケツーリズム協議会」(観光庁後援)では、こうした「成功事例」を全国に共有し、効果的なシティプロモーションのノウハウを伝えています。実は、私たちが事務局を運営しており、自治体・企業など延べ694団体が参加。年3回の権利処理(例えば俳優が出ている場面の写真を掲載できるよう許可・許諾を得ること)などを学ぶセミナーのほか、年2回は映像制作者と自治体とのマッチング大会を開催。『ロケーションジャパン』を公式テキストとして、私も講師を務めています。

ロケは「誘致して終わり」では意味がありません。行政、民間、住民が協力し合って観光客増加による経済効果まで見据えて、継続した取り組みが大切。協議会では、「支持率」「撮影サポート度」「行楽度」「地域の変化」をポイントとして、その後の展開ができているかどうか、「4つの指標」の必要性を伝えています。地元では何でもない風景でも、映像制作者から魅力的に映るロケ地はまだまだ眠っているはず。つまり、全国のどのような地域にも、ロケツーリズムの可能性はあるのです。

これからはひと味違う旅を

秋の行楽シーズンが始まりますね。私たちは約2万人の一般アンケートと有識者審査によって、その1年のうちにもっとも人を動かし盛り上がった「地域×作品」を選出し「ロケーションジャパン大賞」を表彰しています。これまでの受賞地域に訪れていただくと、作品ファンが楽しめるような仕掛けがあります。

また、ロケ地となったホテルに宿泊すれば、作品の世界観に浸ることができ、旅の楽しみも倍増します。これまでとはひと味違う旅のかたちとして、そんな楽しみ方を取り入れてみるのも一案です。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 『あまちゃん』オープニングで人気になった三陸鉄道

    『あまちゃん』オープニングで人気になった三陸鉄道

  • 観光客が訪れ聖地となっている長崎県島原市の大三東(おおみさき)駅

    観光客が訪れ聖地となっている長崎県島原市の大三東(おおみさき)駅

  • 聖地巡礼者に人気!ロケ地看板

    聖地巡礼者に人気!ロケ地看板

  • 国内唯一のロケ地情報誌『ロケーションジャパン』。9月16日発売の10月号では、魅力的なロケ地ホテルを特集している

    国内唯一のロケ地情報誌『ロケーションジャパン』。9月16日発売の10月号では、魅力的なロケ地ホテルを特集している

  • ロケツーリズム協議会(観光庁後援)の様子

    ロケツーリズム協議会(観光庁後援)の様子

  • ロケツーリズムの「4つの指標」

    ロケツーリズムの「4つの指標」

  • 「ロケーションジャパン大賞」昨年度のグランプリは函館市

    「ロケーションジャパン大賞」昨年度のグランプリは函館市

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