地域再生を考える

2026年6月掲載

「アキヤアソビ!」で商店街を線から面へ
空き家活用と創業支援でまちの隙間を埋める

日の出企画 代表取締役 山田 知弘さん

日の出企画 代表取締役
山田 知弘さん
総務省地域力創造アドバイザー。静岡県地域づくりアドバイザー。国交省不動産業アワード優秀賞受賞。積水ハウスで5年勤務後、税理士事務所で4年間の相続業務を経て、Uターンで静岡に戻りコンサル開業。静岡県を拠点に各地行政と公民連携で空き家対策を担う。
地域再生は『公民連携を取り持つ中間支援組織としてまちの隙間を埋めること』

公共機関は公共性を重視し、民間企業は収益性を追求する。一見すると相反する存在にも見える。まちづくりの現場では、公共が民間の力を活用することで地域づくりが進められている。「公民連携」という言葉も、公共と民間の連携の重要性を示している。

「中間支援組織」という言葉をご存じだろうか。国土交通省では、地域の活性化や課題解決に向け、住民やNPO、企業など多様な主体による地域づくり活動が、自立的・継続的に行われるよう支援する役割を「中間支援」と位置付けている。一般的には、NPOなど公共性の高い団体が担うことが多い。

一方、当社は有限会社という民間法人の立場で、まちづくりに取り組んでいる。それは、民間寄りの視点を持った中間支援組織として機能したい、という意思でもある。公共性の高い中間支援と、民間寄りの中間支援。その両者が重なることで、新たな「中間」が生まれると考えている。そうした立場で、既存の仕組みだけでは埋めきれない「まちの隙間」を埋めることが、公民連携をよりスムーズに進めることにつながると考えている。

街の課題解決を担う空き家活用

2012年に独立をして住宅・相続・まちづくりの分野でコンサル事業を始めた。ハウスメーカー営業と税理士事務所勤務での相続担当の経験を生かしてのスタートだった。

まちづくりと関わるようになったのは2015年に新規事業の一環で空き家再生と賃貸経営を始めたころからだ。静岡県沼津市で、駅から徒歩約25分、入居率4分の1ほどのワンルームアパートを購入した。築年数も古く、十分な利回りが見込めない、収益性の低い物件だった。それまで相続相談の中で空室率改善の提案にも関わってきた経験から、あえて条件の厳しい物件を選んだ。

2015年当時は、テレワークやフリーランスの働き方が注目され始めた時期でもあった。そこで、地方都市ではまだ珍しかったコワーキングスペース「Antiquedoor」を開設した。沼津市役所とも連携し、創業支援事業にも関わりながら、地域の開業率向上にも取り組んできた。こうした活動は行政区域を越えて広がり、現在では拠点数も6カ所ほどに増えている。

アキヤアソビ!

沼津市の隣町である長泉町では、「Scramble(チャレンジショップ&コワーキングスペース)」を拠点に半径500m圏内の空き家の調査を行っている。空き家を地域資源として捉え、古民家カフェやリノベーションに関心のあるフリーランスを発掘し、コワーキングスペースへ集める取り組みだ。さらに、1階のチャレンジショップを活用しながら創業支援を行い、一定期間活動を共にすることで仲間意識を育てている。チャレンジショップには卒業制度があり、成長した事業者が周辺の空き家へ出店していく流れをつくっている。

こうした遊び心を持った取り組みを「アキヤアソビ!」と名付け、街の変化につなげている。

空き家活用を自社物件だけで終わらせず、エリア全体で考えることによって、公共と民間の間にある「まちの隙間」を埋めながら独立開業者を増やしてきた。これまでの8年間で、約80事業者の開業を支援している。

地域再生に必要なこと

地方の商店街では、多くの店舗が閉店している。これまで商店街活性化に関する相談も数多く受けてきたが、共通して感じるのは、地域全体に閉塞感が漂っていることだ。会議をしていても、息苦しさを感じる場面が少なくない。

商店街がなぜシャッター通りになってしまったのか?理由はさまざまだが、大きな要因の一つは、人の動線が変わったことにある。もともと商店街は人の流れに沿って形成されてきた。しかし、時代とともに生活動線が変わったにもかかわらず、以前と同じ感覚で集客を続けているケースも多い。

ただ、商店街周辺には今も人が暮らしている。そこで私たちは、商店街を「線」ではなく「面(エリア)」として捉えることを意識している。裏通りも含めて空き家活用や出店支援を行い、地域全体の魅力向上につなげていく考え方だ。

「アキヤアソビ!」では、商店街では少なくなった30代~40代の店主世代が集まっている。SNSを活用した情報発信にも積極的で、それぞれが独自のコミュニティーを持っている世代でもある。現在の商店街を「線」とするならば、その周囲では、後継者世代が裏通りへ出店し、縦横無尽に補完するように新たな広がりを生み出している。こうした小さな出店をコツコツと増やしていく取り組みが、やがてまちを変えていく。そう信じながら活動を続けている。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 富士宮市での高校探究学習支援の様子、空き家課題解決チームとまち歩き

    富士宮市での高校探究学習支援の様子、空き家課題解決チームとまち歩き

  • 三島市の自社所有の空き家改修。移住支援により東京からカレー店誘致。DIY作業中

    三島市の自社所有の空き家改修。移住支援により東京からカレー店誘致。DIY作業中

  • 創業支援や空き家活用に関する勉強会も定期的に開催している

    創業支援や空き家活用に関する勉強会も定期的に開催している

  • JR富士宮駅近くに2024年オープンした「エキマエChallenge House CHILL IN(チリン)」。30代以下の若者やZ世代、大学生、高校生らの交流・チャレンジ支援拠点となっている

    JR富士宮駅近くに2024年オープンした「エキマエChallenge House CHILL IN(チリン)」。30代以下の若者やZ世代、大学生、高校生らの交流・チャレンジ支援拠点となっている

  • 長泉町のコワーキング「Scramble」拠点に集まる多世代プレーヤーたち。稼働2年半の創業支援により周辺の出店が5店舗以上増えた

    長泉町のコワーキング「Scramble」拠点に集まる多世代プレーヤーたち。稼働2年半の創業支援により周辺の出店が5店舗以上増えた

団地再生まちづくり4
進むサステナブルな団地・まちづくり
編著
団地再生支援協会
NPO団地再生研究会
合人社計画研究所
定価2,090円(税込)/水曜社

団地再生まちづくり5
日本のサステナブル社会のカギは「団地再生」にある
編著
団地再生支援協会
合人社計画研究所
定価2,750円(税込)/水曜社

(無断転載禁ず)

地域再生を考える

Wendy 定期発送

110万部発行 マンション生活情報フリーペーパー

Wendyは分譲マンションを対象としたフリーペーパー(無料紙)です。
定期発送をお申込みいただくと、1年間、ご自宅のポストに毎月無料でお届けします。

定期発送のお申込み

マンション管理セミナー情報

お問い合わせ

月刊ウェンディに関すること、マンション管理に関するお問い合わせはこちらから

お問い合わせ

関連リンク

TOP