地域再生を考える

2025年11月掲載

つづきをつくる
空き家とともに始まる、市原・加茂の新しい暮らし

合同会社開宅舎 代表 髙橋 洋介さん

合同会社開宅舎 代表
髙橋 洋介さん
1989年生まれ。千葉県市原市出身。2021年に合同会社開宅舎を設立。“つづきをつくる”を合言葉に、千葉県市原市加茂地区で空き家と移住希望者のマッチング事業を行う。2021年からの4年間で30組50名の移住者を受け入れ、空き家のつづきをつくり、地域のつづきを生み出している。
空き家を“開宅”するということ

房総半島のちょうど真ん中、千葉県市原市加茂地区。低くなだらかな山々、その間を流れる養老川、ゆっくりと走る小湊鐵道…。この地域が、私たち「開宅舎」の活動するエリアです。

地図を片手にまちを歩き回り、一軒一軒ノックしながら、空き家を確保し、体を動かして片付けを行い、手を動かして修繕を行い、移住者を受け入れていく方法を私たちは“開宅”と呼んでいます。この方法を用いて、4年間で35軒の空き家を開宅し、30組50名の移住者を受け入れてきました。

課題解決ではなく、まちづくり

加茂地区の人口は5000人を切り、10年後には約半分の2500人になると言われています。空き家は現在150軒ですが、10年後には全戸数の40%の約800軒が空き家になります。3軒のうち1軒は空き家になる未来が見えているこの地域ですが、私たち開宅舎は空き家を、解決しなければいけない“課題”ではなく、新しいことが始まるかもしれない“可能性”として捉えています。空き家だった場所に新しい住民が住み始めれば、今よりもっとおもしろい地域になるんじゃないか、そう考えます。

・今まで空き家だった場所に、新しい住民が住み始める。
 ・今まで空き家だった場所で、新しいカフェや宿が始まる。
 ・地域になかったもの、地域に足りなかったことが始まる。

3軒のうち1軒が空き家になってしまう未来ではなく、3軒のうち1軒に新しい住民が住み始めて地域がさらに発展していく未来を私たちは作りたいと考えています。

空き家と移住希望者のマッチング

私たち開宅舎は、取得した空き家の片付けや修繕を行い、移住希望者に貸し出しすることで得た賃料収入を元に活動しています。

また賃貸事業のほかに、開業サポート事業も行っています。住居としてではなく、店舗や宿泊施設として空き家を活用したい方向けのサービスです。具体的には、事業内容に応じた物件の紹介のほかに、開業に必要なロゴマークやパンフレットなどの各種印刷物のデザイン、SNSやウェブサイトのデザイン、クラウドファンディングなどの資金調達のサポートを行っています。

社員は20代と30代が1人ずつ。賃料収入などの安定的な収入で、人件費などの固定費をまかない、利益率の高い開業サポート事業で利益を出しています。

移住者や新しい事業者が地域に増えれば増えるほど、私たちの活動も地域も持続可能な形になっていくビジネスモデルです。

源流をつくる

地域に移住者や事業者が増えると、地域に新しい仕事が生まれます。移住者が1人増えれば、住宅の整備で工務店や大工さんが必要になり、生活が始まればガス屋さんや車屋さんなど、さまざまな事業者に仕事が生まれます。事業を始めれば、デザイナーや建築家、ウェブデザイナーや写真家、飲食店であれば農産物を作る生産者など、さまざまな事業者に仕事が生まれます。

移住者を地域に受け入れることは、地域経済の源流を作ることだと思っています。私たちが新しい移住者を受け入れると地域に仕事が生まれるのです。

外国産の建材を使うのではなく、裏山の木を使う。知らない職人さんに頼むのではなく、近所の大工さんに頼む。地域の事業者さんや職人さんと対等な立場で付き合うことも地域に受け入れられる近道です。

内側への広報

地域で事業をしていくうえで、外部向けの発信と同じくらい大事なのが、内部向けの発信です。私たちは新しい移住者を地域の人に紹介するための冊子を発行しています。移住者の人となりや移住理由などをインタビュー形式でまとめたもので、地域の商店や公民館に置いています。自分たちがどんなことをしているのか、どんな人たちを増やしたいのかを知ってもらい認知が広がると活動しやすくなります。

また空き家に関わるようになると、「人口減少」「高齢化」「過疎化」などといったネガティブなワードに触れることが多くなります。そんなネガティブな課題や問題を前面に出すよりも、空き家で始まる新しい可能性を前面に出していくことで協力者や賛同者が増えていきます。『月刊開宅』では、移住してきた人の顔が見えるような写真を表紙で使い、人柄や暮らしぶりがわかるような誌面にしています。

つづきをつくる

活用できるのは空き家だけではありません。地域には魅力的な資源がたくさんあります。

空き家のつづき、もののつづき、風景のつづき、技術のつづき…。地域にもとからあるものに光をあてて、つづきをつくっていく、そんな姿勢がこれからの地域を育てていく力になると信じています。

「地域再生を考える」編集委員会

  • 移住希望者向けの案内会。空き家とその周りの地域を案内する

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  • 自宅でカフェを営む移住者。カフェの他に各地でマーケットを開催する

    自宅でカフェを営む移住者。カフェの他に各地でマーケットを開催する

  • 移住した3人家族。子どもは加茂地区の小中一貫校に通う

    移住した3人家族。子どもは加茂地区の小中一貫校に通う

  • 古着の循環事業を営む移住者。地域で資源の循環に取り組む

    古着の循環事業を営む移住者。地域で資源の循環に取り組む

  • 『月刊開宅』。1冊で移住してきた1組を紹介している

    『月刊開宅』。1冊で移住してきた1組を紹介している

  • 空き家の片付け。サポーターや地域の方々と一緒に片付けを行う

    空き家の片付け。サポーターや地域の方々と一緒に片付けを行う

  • 修繕が終わった空き家。SNSにて移住希望者向けに入居者募集を行う

    修繕が終わった空き家。SNSにて移住希望者向けに入居者募集を行う

団地再生まちづくり4
進むサステナブルな団地・まちづくり
編著
団地再生支援協会
NPO団地再生研究会
合人社計画研究所
定価2,090円(税込)/水曜社

団地再生まちづくり5
日本のサステナブル社会のカギは「団地再生」にある
編著
団地再生支援協会
合人社計画研究所
定価2,750円(税込)/水曜社

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