自然を肌で感じながら走る『バイクでカルガモ親子』が夢です
- クリステル・チアリさん/タレント
- 1976年、兵庫県西宮市生まれ。父は音楽家のクロード・チアリ氏。
地元神戸でDJをしていた1998年、NHK教育テレビ「えいごであそぼ」のクリスおねえさん役で全国的にデビュー。
その後、テレビやラジオ番組で、タレント、DJとして活躍。CSアニメ「お茶犬~ちょこっとものがたり~」ではナレーションを担当。
JR山手線をはじめ30路線以上の車内英語アナウンスも担当している。
大型2 輪免許と2台のバイクを持ち、モーターサイクリストとしても活躍。「MOTO NAVI」「モーターサイクリスト」などオートバイ専門誌でコラムを執筆中。
昼食はバナナ1本、お小遣いためて
「お母さんのおなかの中で、何か忘れ物してきたんじゃない?」
そう言われるほど、小さいころは男の子みたいな子でした。バービー人形で遊ぶより、男の子たちに混じって木登りしたり、野球したりするのが好き。いつも身体に青タン作って傷だらけで、しょっちゅう男の子と間違えられていましたね。
両親ともにしつけは相当厳しかったです。父(音楽家のクロード・チアリ氏)は白黒はっきりとつける、竹を割ったような性格の人。いわゆる九州男児のような亭主関白ぶりです。食事もはっきり父と私たちのものは分けられていて、父だけいいお肉を食べていた(笑)。
お小遣いももらえなかったんですよ。よく周囲から「芸能人の家庭だからぜいたくできていいねー」と言われたけれど、うちは全然違う。交通費や学校での昼食代など必要なお金は出してくれたから、お昼をバナナ1本だけにしたり、バスに乗らずに歩いたりしてお小遣いを捻出していました。だから、今の子どもはお金を持ち過ぎだと感じますね。
幼稚園から高校まで、神戸の国際学校に通いました。これは将来国際化時代に向けて英語をしゃべれなきゃいけないという両親の教育方針。授業は算数でもなんでもすべて英語で、何を言っているのか初めは全く分からなかった。家では完全に日本語しか使ってなかったから。楽しく英語をしゃべれるようになったのは、中学生になってからでしたね。
言葉に苦労したりとたいへんでしたが、よくよく考えてみるとすごく授業料がかかったはず。高いお金を出して通わせてくれ、18年間育ててもらったことに、両親に対してとても感謝していますね。
「歌手になろう」と決めたのは幼稚園のとき。歌はヘタクソでした(笑)。ギターは父が「やりたければ教えてあげるよ」という感じで、やれと強制はされませんでしたね。歌の仕事をしたいと思い続けていたから、中学高校とコーラス部に入って一生懸命練習しました。ただし父からは高校卒業まで芸能界に入るのはダメと言われていて。
父の名の力を借りてデビューするのは、すごくイヤだったんです。学校では「芸能人の子だから」といじめられたときもありました。そんなとき私は、「今に見てろ、覚えとけ!」と奮起しました。いじめられっ子で学校嫌いな生徒でしたが、そこでめげずに逆に悔しさを力にしたから、やってこれたんだと思います。
「えいごであそぼ」の人気おねえさんに
20才のときNHK教育テレビの番組「えいごであそぼ」のオーディションに合格。“クリスおねえさん"として全国にデビューしました。小さいころからテレビっ子で、教育テレビが大好きだったからすごくうれしかったですね。子どもたちが英語を好きになってくれればいいなと願いつつ、はっきりしゃべることを心がけました。ずっとミュージカルをやりたかった自分にとって、歌やお芝居ができたこの仕事はとても楽しかったです。
声の仕事としてはラジオのDJのほか、電車や地下鉄の車内英語アナウンスも担当しています。JR山手線や東京メトロ…今では30路線を超えたかな。乗るのは英語圏の人ばかりでなく、中国やインドネシアの人などそれ以外の人たちも乗るわけだから、はっきりと分かるように発音に努めました。最近では慣れましたが、はじめは電車に乗っていて自分の声が流れてくるとイヤで。そのたびに気になって、読んでいる本の内容が頭に入ってこなくなっちゃうんです(笑)。
アニメの声優にも挑戦しています。スカパーのキッズステーションで放映されている「お茶犬~ちょこっとものがたり~」では、ナレーション役を担当。今後もこうした声の仕事をメインでやっていきたいと考えています。
レースで「おりゃ~っ!」と疾走
近年オートバイの魅力にとつりかれ、レースに出場したり、ツーリングの旅に出かけたりしています。
バイクに乗りたいと思ったきっかけは、「仮面ライダー」(笑)。ヒーローはバイクに乗って現れ、悪い奴をやっつける。子どものころその姿に憧れて、仮面ライダーカードを何枚も集めていた。でも実家ではバイクはダメと言われていたので、20才で上京したときに原付バイクに乗るようになりました。実はプロダクションの寮でもバイクは禁止だったので、目を盗みつつ(笑)。その後中型、大型免許を取得し、いまは600ccと250ccの2台のバイクを所有しています。
念願だったサーキットも走りました。3年半ほど前にツナギを作ったのを機に仲間から誘われ、ミニバイクの7時間耐久レース“DE耐"に初参戦。最初は怖かったですね。街中を走るのとは全然違うんです。コーナーでバイクを寝かせることが、すごく怖くて。それから練習をいっぱい重ねてテクニックを覚えていきました。最近仕事でオフロードコースを走り、それで走りのレベルが格段に上がりました。バイクを倒すのに抵抗がなくなり、今はコーナーを「おりゃ~っ!」とばかりに突っ込んでます(笑)。
バイクの魅力はなんといっても、自然を肌で感じることができること。車のドライブも楽しいけれど、箱のなかにいるのと生身で走るのとは違う。木の香りだったり、花の香りだったり、寒さだったり。風を切って自然を生で感じられるのがすばらしいんです。
今年の6月初旬、バイク雑誌の取材で女の子ふたりで北海道へツーリングに出かけました。フェリーに乗って、現地で3泊のバイク旅。ドラマ「北の国から」で有名な富良野へ寄り、馬がすごく好きなので日高へも足を伸ばして。日高では馬がすぐ近くで見られて、とても感動。ニセコでは雪が残っていてすごく寒かった一方で、美瑛では日焼けするほど暑かったのが印象的でした。
今やバイクは私にとって生活の9割を占めていて、身体の一部。眺めているだけで楽しい。もう“恋人”そのものかも(笑)。
バイク“のんびり旅”のススメ
今年6月、オートマチック限定免許が新設されました。これでバイク人口が増えると思いますが、今回新たに乗る皆さんに注意してもらいたいことがあります。車線変更する際には後方確認をしっかりとして方向指示器を必ず出すという決まりを守ってほしいですね。確認せずに無謀運転する人が結構いるので、走っていて怖いと感じることがあります。大音響で音楽を流しながら乗る人も。事故を起こして周囲を巻き込まないでほしいと思いますよ。高速道路でのタンデム(2人乗り)走行も解禁されましたが、人の命を預かって走るという重みを忘れず、運転してほしいです。
バイクってルールを守って乗りさえすれば、安全で楽しい乗り物なんです。それなのに一部の無茶なことをする人がいるために「バイクは危ない」と思われるのはとても残念。だからこそ私たちライダーからバイクをプラスイメージに変えていかなきゃいけないと思います。
若いころに乗ったことがある人は、また再開してみるのも素敵ではないでしょうか。のんびり、ゆっくりと旅に出て、皆さんにバイクライフを楽しんでもらいたいです。
乗る側として特に行政に要望があります。ぜひバイクも止められる駐車スペースを作ってほしい。駐車場にも停められないから、仕方なく路上駐車せざるを得なくなる。バイクユーザーのマナーを問う前に、バイクに乗らない人たちの意識改革も必要と感じています。
バイク雑誌3誌でコラムを連載していますが、「バイクファッションをおしゃれに」というテーマをずっと追求し続けています。バイク乗りは服装にかまわないイメージがありますよね。そうでなくて、バイクから降りてそのまま喫茶店に入ったりレセプションに出席したりできるような、カッコいいおしゃれを提案していきたいです。着る人のセンスが光る着こなしであれば、別にバイク専用の服でなくてもかまわないと思いますね。
子どもの将来を思うからこそ、叱る
今音楽関係の仕事をする友だちとともに、バンドを組んで活動しています。クラシックやジャズ、ロックなどいろんなジャンルの友だちが集まり、普段のジャンル以外の音楽を楽しもうというのがコンセプト。私の担当はボーカル。80s(エイティーズ)やABBA、オールディーズなど好きな楽曲をアレンジしたり、オリジナルも作ってます。いつかアルバムを出せればなぁと考えています。
また現在横浜のほうで、子どもたち向けの英語教室も開いています。決して勉強を強要せず、ゲームのようにヒントを出しながらジェスチャーを交えて教えています。授業では褒めるときは褒めて、マナーに反したときは叱る。そのへんは甘やかしません。授業の中でお説教するときもあります。でも子どもは素直だから、「○○だからいけないんだよ」ときちんと説明してあげると、すぐ怒った理由を理解してくれる。その後で親御さんにも、「これこれこういう理由でさっきお子さんを怒らせていただきました」と説明します。
他人だろうと子どもにはどんどん注意しますよ。先日も甲子園で怒ってきました。人ごみの階段でペットボトルを蹴飛ばして遊んでいる子どもに、「あかんやろ!」と。子どもはキョトーンとしてたけど。
子どもは悪くない。教育しない親がいけないんです。どうしようもない大人になったら、その子が将来かわいそう。子どもが好きだから、人としてまっとうに育ってほしいからこそ叱るんですね。
来年は30代に。いくつになっても大好きな子どもと触れ合える仕事をしていきたい。先日もファミリーコンサートで歌ったのですが、観客の子どもたちとは友だち同士で一緒に遊んだという感覚。仕事するときは、いつもそんな気持ちでいます。
もし将来、自分に子どもが生まれたら、3才ごろにはポケットバイクをプレゼントしたい。三輪車は飛び越して(笑)。それで週末になったら家族でサーキットへ行き、ハイキング感覚で過ごす。男の子女の子は関係ない。女の子が3人生まれても、3人ともポケットバイクを与え、そして連れ立ってファミリーツーリングに出かけたいです。カルガモの親子みたいに(笑)。そんな生活が、小さいころから私が持ち続けている夢なんです。
(中央区銀座源吉兆庵にて取材)
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