商店街の活性化とは何か?
100円商店街事業を通した「商人力」の再生

- 特定非営利活動法人アンプ(NPO‐AMP)理事長
齋藤 一成さん - 山形県新庄市教育委員会教育総務課課長補佐、内閣府地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザー。商店街活性化三種の神器といわれる事業の一つ「100円商店街」の考案者。これまでの100円商店街導入地域は、全国で180市町村400商店街を超える。
商店街の活性化とは?
商店街の活性化とは何をもっていうのだろうか。これについては、これまでもさまざまな議論が行われ、さまざまな事業によって活性化がなされようとしてきた。しかしながら、私はこの「活性化」という言葉があまり好きではない。なぜなら、あまりにも抽象的すぎて、単なるイメージを誘導するにすぎない言葉のような気がするのだ。
はじめて自分の街の商店街を元気にしたいと考えるようになった時、最初にぶつかった壁がまさにその「活性化」という言葉だった。そのぼんやりしたイメージのような、そのものズバリを指し示すことのない、まるで霧の中につつまれているような状態の中で模索し、自分なりの方向性にたどりつくまで1年以上悩み続けた。
そうしてようやく自分が考える商店街の活性化とは、「そこに在る個々のお店の収益の増加」という考えに達する。商店街を生き物に例えるなら、いくらきれいな装飾を施しても、体がうまく機能していないのであればそれは活性化とはいわない。元気な体を再生するためには血液が必要なのだ。そしてその体を流れる血液こそが「金」なのである。お店に買い物をしに来てくださるお客様が、10人、20人、30人と増えてくる。そしてそういったお店が、5軒、10軒、20軒と増えてくる。それによって、通りを多くの買い物客が流れるようになり、結果的に商店街を大勢の買い物客が闊歩(かっぽ)する。それこそが私の求める活性化の姿なのだ。
ゆえに私の考案した100円商店街という事業は、よくイベントと言われることがあるがそうではなく、その実態は販促事業なのである。
100円商店街とは?
一言で言ってしまえば、「商店街全体を一店の100円ショップに見立て、そのすべての店頭で100円の商品を販売する事業」とでもなるのだろうか。しかしお気をつけいただきたい。これまでもさまざまなマスコミ等にも取り上げられてきたが、報道の絵では、商店街に大勢の買い物客が押し寄せ、ワゴンに山ほど入った100円商品と、店主と買い物客が一緒に笑顔で話しをしている絵しか伝えられない。
実は、これだけを見て安易に踏み込んで失敗した地域がかなりあるのだ。重要なのは、見た目の絵だけではなく、その裏に隠された部分にまで考えが及ぶかどうか。前述したとおり、100円商店街は単なるイベントではなく販促事業である。店頭に陳列した100円商品を、その場で販売するのであれば、100円均一セールという名のイベントだろうが、100円商店街の場合、その100円商品の精算は店内で行うシステムとなっている。
これにより、「買わなきゃ入りにくい、入ったら買わなきゃ出にくい」という消費者の圧迫心理を解消し、原価に極めて近い売価の100円商品からではなく、今まで知らなかった店内の様子や商品、それらの「ついで買い」を誘発させ、プロパーの商品から収益を回収するという、方向性を持ったファシリテーションをシステムとして実装している。いわば100円商店街における100円商品とは、スーパーの特売の「卵」なのである。
商人力とは?
商店街の歴史とは個々のお店のキャリアチェンジの歴史でもある。先々代は豆腐屋だったが先代から金物屋になった、などの例である。過去の商人は、常に時代の流れや客のニーズに敏感なアンテナを張っており、〇〇屋を継続するという目的のためではなく、商業で収益を上げることを目的として時代を生き抜いてきた。しかし昨今では、収益が上がらないとすぐに廃業に直結する例があまりにも多い。
「考える力」の低下、これこそが商人力の低下を意味する。100円商店街で店頭に並べる100円商品は、そのお店の物でなくてもよい。それどころか、むしろそのお店の物以外の自由な発想が求められる。
100円商店街の開催地に勉強会等でお伺いすると、特に年配の方々から聞かれるのが、「うちでは100円で売れる物がない」。言い換えれば、自分は100円で販売する物を考える力がありませんと言っているに等しい。そういった方々も含め考え方が柔軟な店主のためにも、その引き出しを増やす意味でグループディスカッションのような勉強会を実施し、100円商品のアイデアの幅を引き出している。最初のきっかけは、勉強会のグループディスカッションで無理やり考えさせられたのかもしれないが、いずれこの事業を繰り返していくうちに、その考える力が徐々に高まり、自店の成長か、もしくはキャリアチェンジにつながってくれるだろう。
今後加速する人口減少によって、特に郊外型の大型店は立ち行かなくなる。それまで、姿を変えながらでも商店街を維持していかないと、消費者が生活できなくなる状況がいずれ発生するだろう。そのためには、昨今のインフレによりますます価値が高まっている「100円」商店街事業を通して、商人力を再生し、日本全国のさまざまな地域の活性化の一助となりたい。100円商店街とは、地域を憂う公務員が考えた、商店主による、そこに生活する人たちのための、商店街活性化事業なのである。
「地域再生を考える」編集委員会
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