地域再生を考える

2026年2月掲載

高架下で育てる、ちいさな経済
市民起業家による小金井市の「コウカシタパーク」

株式会社タウンキッチン 代表取締役 北池 智一郎さん

株式会社タウンキッチン 代表取締役
北池 智一郎さん
1976年大阪生まれ。大阪大学卒業後、経営コンサルティング会社等を経て、2010年に株式会社タウンキッチンを設立。公共施設の運営や民間連携を通じ、スモールビジネスを軸とした創業支援とまちづくりを行い、持続可能な地域経済の形成に携わる。

JR中央線・東小金井駅の高架下に広がる「コウカシタパーク」。150を超える起業家が集い、シェアオフィスやシェアキッチンを拠点に日々の営みを重ねている。かつては通り過ぎるだけの場所だった高架下が、いまや地域の挑戦が交わる”創業のまち“へと姿を変えた。

この取り組みは、国土交通省「地域価値を共創する不動産業アワード」で特別賞を受賞。高架下から生まれる共創の物語は、地域と日本のスモールビジネスの未来を照らしている。

まちと挑戦が交わる高架下の拠点

JR中央線沿線の高架下に位置する三つの創業支援施設「KO‐TO(コート)」「PO‐TO(ポート)」「MA‐TO(マート)」。それぞれがオフィス、キッチン、ショップ、教室など異なる機能を持ち、150以上の起業家やクリエイターが利用している。業種は飲食、物販、工房、デザイン、教育、福祉など多岐にわたり、地域に根づく”小さな仕事“が数多く生まれている。

中でもMA‐TO内のシェアキッチン「8K(ハチケー)」は、飲食分野における創業の第一歩を支える場として高い人気を誇る。ここで経験を積み、近隣エリアに実店舗を構える卒業者も多く、飲食のインキュベーション拠点として機能している。

運営を担うのは、東京都小金井市に本社を構える株式会社タウンキッチン。高架下という制約の多い空間を、創意と工夫で魅力的な店舗やオフィスへと変えてきた。企画構想から事業スキーム設計、運営マネジメントまでを一貫して担うことで、持続可能な地域型ビジネスの基盤を築いている。スモールビジネスを核とした地域経済の自律的な循環や、共創型まちづくりの実践事例としても注目され、全国の自治体や企業、支援機関から年間を通じて多くの視察を受けている。

学びと実践がつながる創業支援の仕組み

タウンキッチンは施設運営にとどまらず、創業支援にも力を注いでいる。その中核となるのが「コウカシタLAB」だ。2014年から続くプログラムには延べ約340名が参加し、地域での創業やプロジェクトの立ち上げを支援してきた。学びと実践を行き来しながら、構想を”地域で形にする“ことを重視しており、参加者は自らのアイデアを実験的に試しながら、地域との関係を編み直し、新しい共創の関係を築いていく。

さらに、空き店舗や空き家などを紹介する不動産仲介も行い、シェア施設やプログラムの卒業者の事業拡大をサポート。これにより挑戦の芽がまちのあちこちへと広がり、地域全体が「創業のフィールド」として機能している。

また、ウェブメディア「リンジン」を通じて、起業家のストーリーや地域の取り組みを継続的に発信。記事をきっかけに新たなコラボレーションが生まれるなど、情報発信そのものがまちづくりの装置として機能している。

これらの事業が相互に連携することで、単なる空間活用にとどまらず、”人を育て、仕事を育てる不動産“という新しい価値を提示した点が高く評価され、国土交通省の不動産業アワード特別賞の受賞につながった。

コウカシタパークから全国へ

こうした取り組みは、東京都、小金井市、JR中央線コミュニティデザインとの連携によって進められてきた。官民が一体となり、人と地域をつなぐインキュベーションの仕組みを育ててきた点も大きな特徴である。

近年では、全国の鉄道会社とも協働を広げ、鉄道インフラの遊休資産を地域に開かれた共創拠点として再生するプロジェクトが各地で進行中だ。大阪や京都など関西圏にも活動のフィールドを広げ、東小金井で培ったモデルが全国へと波及している。

2026年1月には、KO‐TO、PO‐TO、MA‐TOの3棟に加え、全体をつなぐ管理棟「CLUB HOUSE(クラブハウス)」が誕生。管理機能を担うとともに、創業やまちづくりに関する総合窓口としての役割を持ち、各施設をつなぐハブのような存在となる予定だ。

また、施設内には「コウカシタスタンド」を設置。ここでは、各施設の案内や内覧受付のほか、コーヒーや書籍の販売を通じて、地域に開かれた日常的な立ち寄り機能を担う。さらに、創業予定者やスモールビジネス志向の人々に向けた創業相談、空き家活用を含む不動産利活用の専門相談にも対応するなど、多面的なサポートが可能となる。

働く・学ぶ・遊ぶ・出会うが交差する場所として、高架下の風景はさらに豊かに彩られていくだろう。150を超える起業家が生み出す無数の”小さな仕事“が、まちの風景を少しずつ変え、地域経済に新たな循環をもたらす。高架下という都市の余白から、人とまちの未来をつむぐ。コウカシタパークは、これからも共創の舞台として進化を続けていく。

「地域再生を考える」編集委員会

  • JR中央線東小金井駅から徒歩5分にある「コウカシタパーク」

    JR中央線東小金井駅から徒歩5分にある「コウカシタパーク」

  • 小商い事業者によるマルシェで地域のにぎわいづくり

    小商い事業者によるマルシェで地域のにぎわいづくり

  • 創業支援プログラムを開催し、多くの創業者を輩出している

    創業支援プログラムを開催し、多くの創業者を輩出している

  • 集合住宅、商業施設、商店街、公共空間などをスモールビジネスの拠点として活用

    集合住宅、商業施設、商店街、公共空間などをスモールビジネスの拠点として活用

  • 創業支援施設を卒業し、地域で開業する循環をつくっている

    創業支援施設を卒業し、地域で開業する循環をつくっている

団地再生まちづくり4
進むサステナブルな団地・まちづくり
編著
団地再生支援協会
NPO団地再生研究会
合人社計画研究所
定価2,090円(税込)/水曜社

団地再生まちづくり5
日本のサステナブル社会のカギは「団地再生」にある
編著
団地再生支援協会
合人社計画研究所
定価2,750円(税込)/水曜社

(無断転載禁ず)

地域再生を考える

Wendy 定期発送

110万部発行 マンション生活情報フリーペーパー

Wendyは分譲マンションを対象としたフリーペーパー(無料紙)です。
定期発送をお申込みいただくと、1年間、ご自宅のポストに毎月無料でお届けします。

定期発送のお申込み

マンション管理セミナー情報

お問い合わせ

月刊ウェンディに関すること、マンション管理に関するお問い合わせはこちらから

お問い合わせ

関連リンク

TOP