大規模修繕工事

大規模修繕工事 入門編

 「大規模修繕工事」。言葉では聞いたことがあるけれど、実感がわかないという人も多いでしょう。ましてや現在、新築や築2・3年くらいのマンションに住んでいる方々には、自分たちのピカピカのマンションが劣化していくとは考え難いものです。しかし、マンションは必ず劣化します。劣化をいかに食い止め、手入れしていくかによって、20年、30年後のマンションに大きな差が出てきます。安全で快適な暮らしを送るため、資産価値を維持するために必要なのが“修繕工事”です。ここでは入門編として、工事の必要性や現時点でできることなどを見ながら、マンションの将来について考えてみましょう。

修繕工事って何?どうして必要なの?

劣化の順序はひび割れ→錆→破壊

 マンションは鉄筋コンクリートで造られているので、一見とても強固に見え、半永久的な建物というイメージが強いのですが、年月の経過とともに劣化が進みます。
 立地条件や風雨にさらされる状態、仕上材などによって、劣化の速度はさまざまですが、劣化自体は避けられません。
 もちろん、鉄筋コンクリートは木造建築物に比べると、燃えにくいだけでなく、耐震性の面で優れており耐久性は抜群です。
 ただし、コンクリートも永久のものではありません。コンクリートはセメント、砂、砂利と水を練り上げたものです。その成り立ちから乾燥するにつれ収縮し、収縮した分がひび割れとなってあらわれる傾向があります。ひび割れが大きくなると、そこから雨水などが浸入し中の鉄筋が錆び、その体積が膨張します。この体積膨張が周辺のコンクリートを圧迫し、コンクリートを破壊させます。
 外装の塗装やタイルは、見ばえをよくするだけではなく、このようなコンクリートの構造体を保護するための要素も含んでいます。
 また、バルコニー・階段などの手摺や鉄製の避難階段などの錆、屋上などの防水機能が低下することによる雨漏り、給排水管の詰まりや管内にできる錆による赤水、水漏れなど、年月が経過することによって起こってくる劣化現象が、建物全体の性能を低下させます。

定期的な修繕工事(計画修繕)は不可欠だ

 こうした機能低下、材料劣化は避けることができません。ただし、それらを最小限に食い止め、建物を最良の状態に維持することはできます。劣化を放置したままでは、劣化の進み具合もどんどん増していきます。それとは逆に、小さなひび割れを埋めたり、定期的に給排水管などの清掃を行えば、劣化の進行を最小限に抑えることができます。
 劣化するだけ劣化してから補修するのと、定期的に初期の段階で補修するのとではかかる費用も全然違ってきます。何の手入れもせず放っておいて、劣化しつくしたコンクリートの一部が崩落することなど、絶対に起きてはならないことです。
 計画修繕とは、生活に支障が出るまで劣化してから初めて行なうものではなく、常に建物を最良の状態で維持していくために、定期的に行っていくものなのです。

コンクリートは永遠不滅のものではありません。
経年とともに、老化も起こる だから、手当(修繕)が必要です。

初めの一歩は何から?

修繕工事といっても外壁、屋上や共用廊下などは共用部分にあたるため、区分所有者全員の意思を反映させながら行なうことになります。
 頭の中では、定期的な修繕が必要だと分かっていても、区分所有者それぞれの考え方や資力がまちまちなので、実際はなかなか足並みがそろいません。また、定期的に初期のうちにといっても外壁のひびや給水管の錆などは自分の目で簡単に発見できるものではなく、ましてや日々点検するわけにもいきません。
 そこで、管理組合では各部位ごとに劣化の平均的なデータを基に、いつ、どの部分の修繕が必要かという予測を立て、その予測にそって修繕を計画していく必要があります。もちろん築後数年で劣化が目に見えて表れるわけではないので、たとえば外壁補修は10年前後、給水管修繕は15年くらいを目安にするなど10年、20年先までを見すえた計画を立てなければなりません(細かい項目は別表参照)。
 これが、「長期修繕計画」(以後、「長計」)と呼ばれるもので、適正なマンション運営には欠かせないものです。「長計」の中で大切なものは、名前の通り長期にわたる修繕の実施計画とその際必要になってくる費用の概算です。
 現在、月々支払っている修繕積立金は、このような修繕を実施するときに使われるもので、逆に言うと、修繕積立金が不足していれば、どんなに必要があっても修繕工事を行うことはできません。「長計」は、いざ工事というときに資金不足に陥らないため、また、資金不足のために各戸から一時金を徴収する事態を防ぐため、将来必要な額を算出する根拠となる重要なものです。
初めの一歩は何から?  ただし、一度決めた「長計」は絶対のものではありません。10年後、20年後の工事までを計画するのですから、材料や工法の進歩、工事金額の変化なども十分考えられます。思いの外、劣化が進んでいないこともあり、計画の時期が近付いてきたときに、本当に修繕が必要かということも含め、細かい調査検討を行いましょう。
 「長計」の作成にあたっては、管理会社にアドバイスを受けながら、自分たちのマンションにあった計画を立てることが大切です。




主な修繕項目
工事項目 工事項目 工事概要 修繕周期の目安
建築 塗装工事 住棟鉄部・鋼製建具塗装 手摺や玄関扉、防火扉などの発錆・防錆・美装を目的とした塗替 5~8年
外壁補修 外壁、共用廊下や階段などの壁石をモルタルの浮き・きれつ・欠損等補修を行った後に塗り替える 10~15年
防水工事 屋根防水 防水層の劣化・漏水事故に対する計画的な全面改修工事 10~15年
バルコニー・外廊下・階段室床防水 漏水事故に対する防水改修 10~15年
目地・建具廻りシーリング防水 PC版目地・外部建具廻りのコーキング材を打ち替える防水 10~15年
そ の 他 郵便受・掲示板・ネーム板等取替 各部の取替 15~30年
集会所・管理事務所内装 塗装・クロス・襖・畳などの改修 10~18年
機械
設備
給排水設備工事 屋内外給水管修繕 台所や洗面所など屋内給水管の発錆・腐食に対する更生・交換工事や屋外給水管の改良・取替 20~25年
屋内排水管修繕 台所・洗面所等の排水管の改良・取替 15~30年
屋内汚水管修繕 トイレ内の管の改良・取替 30~36年
給水計器・ポンプ修繕 受水槽や高置水槽の各種計器やポンプのオーバーホールや取替 オーバーホールは5年ごと、取替は15~20年
ガス設備工事 屋外ガス管修繕 引き込み管の改良・取替 20~25年
消防設備工事 消火ポンプ修繕 消火水槽内ポンプの取替 25~30年
屋内消火栓、警報設備修繕 消火栓、屋内外消火管、警報機器やそれに伴う配線などの取替 20~25年
昇降設備工事 エレベータ修繕 メンテナンス契約に含まれていない部分の修繕 25~30年
電気
設備
電気設備工事 共用灯・屋外灯設備修繕 共用部分にある灯のバッテリー自動点滅器器具の取替 7~20年
受電・変電設備修繕 引込開閉器盤及びその関連設備の取替 20~25年
動力設備修繕 受電盤・配電盤などの変電設備の取替 15~30年
テレビ受信設備 共聴設備・機器ケーブル修繕 テレビの受信アンテナやブースター・分配器などの機器及びケーブルの取替 アンテナは20年前後、他は15~25年
外構 外構工事 道路・道路修繕 敷地内の道路・アプローチの舗装などの改修 10~20年
遊戯施設修繕 ブランコなど遊具の塗替や取替 20~30年
囲障修繕 パイプ柵やネットフェンスなどの塗替や取替 20~30年