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ドッグホリスティックケアアドバイザー/松江 香史子さん

松江 香史子さん
「犬と人をつなぐドッグマッサージ」
Profile

松江 香史子さん/ドッグホリスティックケアアドバイザー
1971年広島県生まれ。日本女子大学卒業。米国にて、犬猫のマッサージとボディワークを学び、資格取得。2004年、主にドッグマッサージ、犬のためのバッチフラワーレメディの使い方を指導する教室を始める。現在はバランス・ドッグマッサージを軸に、独自のドッグホリスティックケアを取り入れた犬のケアができる人材の育成に力を注ぐ。日本ドッグホリスティックケア協会名誉顧問。
http://jdhc.jp


 「話しかけたり、なでたりするだけでなく、苦しみを少しでも和らげてあげたかった」。2001年、死にゆく愛犬のそばで感じた思いでした。愛犬を失ってからも、しばらくその思いが続いていました。

 折しもインターネットが普及し始めていたころで、時代の変化を感じ、自分も社会に良いインパクトを与える何かができないかという気持ちが生まれるようになりました。

 そんなある日、インターネットで調べものをしているときに、アメリカに馬のマッサージを教える学校があり、その学校では犬のマッサージも教えていると知りました。「これだ!これこそ私のやりたいことだ!」。雷に打たれたような衝撃が走ったのを、今でもよく覚えています。いてもたってもいられず、勤めていた会社を辞め、肺ガン闘病中の父が気になりつつも、アメリカに行きました。それが今の私の始まりであり、現在の活動の中心である犬へのマッサージ、「バランス・ドッグマッサージ」の始まりです。

 アメリカではホームステイをしており、アメリカの動物を愛する人たちがどのような視点で世界を眺めているのかを、共に過ごす時間の中で肌で感じることができました。ある人は日本人はベジタリアンだと思っていたり、また別の人は日本には犬を食べる文化があると思っていたり…。街中では、私が動物愛護についての話ができる相手と知るやいなや、日本人の捕鯨、イルカ漁に対する考えについて尋ねられたこともありました。

 偏見ではなく、純粋に知りたいという好奇心で聞いてくれるのはありがたく、私も偏見なく説明しなくてはと責任を感じました。日本では「何となく」ですんでいた自分の考えを明確にしなくてはならないので、動物愛護について考える良い機会になりました。

日比谷公園(東京都千代田区)でのイベント
日比谷公園(東京都千代田区)でのイベント

 帰国後は、自分が「これだ!」と思い、社会に微力ながらも良いインパクトを与えられると信じていることを実現すべく、出版社やラジオ局などに電話やファックスで、犬のマッサージの講座を始めたことをお知らせしました。2004年のことです。犬のマッサージは日本初ということもあり、雑誌やラジオ、テレビで何度も取り上げていただきました。本を書かせていただく機会も得て、多くの方に犬のマッサージの魅力について知ってもらえるようになりました。

 会社を辞めて、アメリカに犬のマッサージの勉強に行くと言ったときに、「そんなの誰が求めてるの?」とか「マニアック過ぎる」などと、大半の友人からは変わり者扱いをされました。しかし、私は「自分が愛犬にしてあげたかったことなのだから、他にも同じように老いていく愛犬にしてあげられることを探している人はいるはずだ」と、強く確信していました。

 そして、私の本や講座を通して出会った方が、「終末期にマッサージしてあげられたことで、ペットロスにならずにすんだ」、「シニア期になり、あまり歩けなくなってきたのに、マッサージを始めたら、歩く距離も伸び、若いころのように遊ぶようになった」などというお話を喜びとともにたくさん頂き、人の役に立てる幸せを実感しました。

アメリカでの実習風景
アメリカでの実習風景

 アメリカで学び、日本で教える中で、つくづく感じたのは、「アメリカ人にとっての犬」と「日本人にとっての犬」は違うということでした。犬との生活に関わる歴史や文化の違いを考慮し、教える内容を日本向けに変えていきました。そして、できあがったのが、この3月に初めて体系立ったものとして、単行本で紹介させてもらった「バランス・ドッグマッサージ」です。

 また、造語ですが「ドッグホリスティックケア」という概念も当初から提唱しています(ホリスティックケアとは、健康について広い視点で、心身両面から対処していくことを指します)。「ドッグホリスティックケア」には「飼い主こそが犬の環境の全てである」という意味を含ませています。犬をケアするときに、体全体をみるのはもちろんですが、飼い主の様子、属する地域社会の様子までよく観察しましょうと、強調しています。加えて、「人がリラックスし自然体でいるのが、犬にとって大切だ」ということも。

 ところで、アメリカで犬のマッサージの勉強を終えて日本に戻った私に、肺ガン末期の父が「アメリカから大自然のパワーを持って帰ってきたみたいだ」とよく言っていました。確かにそのときの私には大自然の気が充実したような状態にあったのかもしれません。帰国直前まで、馬と触れ合い、庭で摘んだ野菜を食べ、夜は月明かりに照らされたオークの木の下で、フクロウの声に癒やされ、コヨーテの遠吠えに耳を澄ましながら、友人とネイティブアメリカンに思いを馳せるといった時間を過ごしていたからです。

 今は子育てなどで多忙な毎日ですが、子どもを育てる上でも、大自然の気を感じる時間を持つようにし、人間は地球に生かされているのだという意識を大切にしていきたいと思っています。これも一つのホリスティックな考え方として。

ボランティアしていたアメリカのアニマルシェルター
ボランティアしていたアメリカのアニマルシェルター

 「これだ!」と思って始めた犬のマッサージを通じて得たものがベースとなって、今の私があるわけですが、最近は「アメリカ人にとっての犬」と「日本人にとっての犬」の違いを感じたように、「日本人にとっての動物愛護」について考えるようになりました。

 アメリカ人に日本人の動物愛護観について聞かれて私が答えた内容は、あくまでも私の動物愛護観であり、一般的な日本人のものではありませんでした。犬だけでなく動物に対する接し方は、文化によって異なります。動物愛護という概念には、キリスト教や仏教といった宗教による死生観と動物観の違いもあるのでしょう。その違いについても知る必要があります。

 いろいろな人との出会いに刺激を受け、好奇心を持って学びたい気持ちが湧いてくるのは幸せです。そして、好奇心を持つことができる平和は貴重です。動物に対し、やさしい気持ちになることができる人が増え、良い社会が長く続くように願いつつ、これからも自分にできることに精を出していきたいと思います。



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