Wendy-Net トップページ > Woman > Back Number > ツナ缶コレクター 山下 東子さん

Woman

BackNumber

ツナ缶コレクター/山下 東子さん

山下 東子さん
「貯めて良し 食べて良し」
Profile

山下 東子さん/ツナ缶コレクター


ツナ缶の原材料は3種類

写真1 缶詰用マグロ3種の刺身(上)と缶詰(下)
写真1 缶詰用マグロ3種の刺身(上)と缶詰(下)

 「ツナ缶って、シーチキンとか?それを集めてるんですか?」。これは私がよく受ける質問です。答えは、「はい」。ツナ缶をはじめとする水産缶詰は、貯めて良し、食べて良し、誰でも気軽に始められて、奥行きも広がりもあるコレクションなのです。

 ツナ缶に入っているツナ=マグロは主として3種類。カツオ→キハダ→ビンナガの順に高価になります。その主な理由は肉色にあります(写真1参照)。

 ビンナガは、「海のチキン」と呼ばれるように、ピンクホワイトに輝き、缶の中にソリッド(かたまり)で入れると、木目調の文様が浮かびます。一方、カツオは大衆向き。比較的資源が豊富なため1缶当たりの価格が安く、製造過程で扱いやすいフレーク(ほぐし身)が一般的です。

 日本で売られているツナ缶には規則により原材料名が記載されているため、3種類を食べ比べてみられてはいかがでしょう。おいしさは必ずしも価格と比例せず、むしろ好みによるところが大きいです。

バラエティー豊かな海外ツナ缶

 海外のスーパーマーケットの缶詰売場には味付きのツナ缶が並んでいます。「ツナ・マヨネーズ」、「ツナ・トマトソース」、「ピリ辛ツナ」は定番としても、インドネシアなら「ツナ・ナシゴレン」、フィリピンなら「ツナ・アドボ」、韓国なら「キムチ・ツナ」といったように、ご当地料理の味がついているものや、野菜、豆、コメ、パスタなどをあらかじめツナと和えてあるものがあります。
 
 私の知る限り、いまだ油漬けと水煮が主流なのは日本、米国、台湾で、他の国々では、開けてすぐ食べられる惣菜缶詰のバラエティーが広がっています。

 手のひらサイズの缶の中に各国の料理が凝縮されているので、お土産や旅の思い出になります。しかも、ツナ缶は1缶数10円〜数百円と手ごろな価格で、スーツケースに入れても壊れません。加熱殺菌されているので、衛生的です。

 しかし良いことずくめとはいきません。難点も正直に告白します。

 1つめはその味付け。たとえ「ツナ・マヨネーズ」といっても日本の味とは違うことを覚悟してください。国によってマヨネーズの好みはこんなに違うのか!とびっくりさせられます。品質も日本で売っているものが世界最高品質であると考えておいたほうがよいでしょう。

 2つめは重いこと。たとえ内容物が100グラムでも缶重量は倍近くになってしまいます。水分を含んでいるので、手荷物で機内に持ち込めないこともあります。

 3つめは産地。海外旅行がまだ憧れだった昭和の時代、帰国した人から頂いたお土産がメイド・イン・ジャパンだったという笑い話がありました。今は誰でも海外に行ける時代ですが、メイド・イン・チャイナではないお土産を探すのに一苦労します。ツナ缶に関しては、どこで買ってもメイド・イン・タイランドということが多いです。実は、世界で生産されるツナ缶の30パーセントはタイ製なのです。「OEM生産」といって、外国のお客の注文どおりに外国のブランド名で作ります。この仕事が得意なタイが世界の王者となり、中南米・アフリカ諸国の追随をまだ許していません。

 私は先日、タンザニアで英国ブランドのタイ製ツナ缶を買って帰ったのですが、家にはオランダとパキスタンで買った同一製品がありました。

100種のツナ缶を収集

写真2 自宅書棚でツナ缶をコレクション
写真2 自宅書棚でツナ缶をコレクション

 お土産という視点で見ると残念な結果ですが、世界のツナ缶を収集している私にとってはモノとブランドの流れをつかめるラッキーな出合いでした。わが家の本棚には世界20カ国、100種類ほどのツナ缶が並んでいます(写真2参照)。

 水産経済の研究者である私は、東南アジアのマグロ関連産業を研究テーマにしています。東南アジアからは日々、日本に刺身用のマグロが空輸されているのですが、もう1つ、より大きな商流としてカツオ・マグロを獲って缶詰加工して輸出するという流れがあります。しかし、国内ではツナ缶を食べていませんでした。そこで国内市場も開拓しようと、メーカーが郷土料理風の味付けをした缶詰を作り出したのです。輸出先の外国にも、開けてすぐ食べられる惣菜缶詰を提案し、それが世界各地に広がってきています。新製品がどんどん開発されるので、同じ国に行ってもまた新しいものを見つけられます。それが楽しくて、コレクションが貯まっていくわけです。

 パッケージのバラエティーも楽しみの1つです。写真3のように、縦長のシリンダー缶、お一人さま用の超小型缶、クラッカーとセットになったおやつパック、省資源のレトルトパウチ、食卓に置けるカップ型などがあります。

国内で水産缶詰巡り

写真3 国内外の水産缶詰。左端はすり身煎餅、右端はレトルトのサーモン
写真3 国内外の水産缶詰。左端はすり身煎餅、右端はレトルトのサーモン

 ツナ缶にこだわらず、水産缶詰に視野を広げるのも面白いです。イワシとサバは水産缶詰の定番で、途上国を中心に売られています。サケは寒いところでしか獲れませんが、「サーモンを食べれば頭が良くなる」といううわさが熱帯の人々の間に広まり、いまやツナと双璧をなす人気缶詰食材となっています。サンマも寒いところを泳ぐ魚で、北欧では餌として利用されています。焼いて食べていたのは日本と韓国くらいでしたが、なぜか2010年にだけ、タイで「トムヤム・サンマ」が売られていました。

 「海外には行かない」という方には、国内のご当地缶詰巡りをお薦めします。全国に約50校ある水産高校の中には食品製造実習として缶詰を作っているところもあります。数の少ない「実習製品」をゲットできればプレミアもの。また、千葉では勝浦産カツオだけを使ったツナ缶を、佐渡の女性グループはワカメの缶詰を、三陸岩手では復興支援のバラエティー缶詰パックを作っています。ちょっと、ダサいパッケージデザインだからこそ、生産者の思いが伝わってくるというものです。

 「いつもツナ缶を食べてるの?」。これもよく聞かれる質問ですが、実はほとんど食べていません。

 缶詰の裏側には製造日から3年後くらいの日付が賞味期限として刻印されているものの、日本缶詰協会のホームページには「10年くらいは保存できる」との記載。だから今は収集に専念し、10年の期限がきたところで、一斉に開けるつもりです。 

 前回開缶したのは、2004年。このときは3カ月で84缶を試食しました。現在のコレクションは、それ以降の備蓄なので、次の期限は2014年。今度は100缶を超えますが、そんなに開けて食べきれるのかは心配ご無用。私の仕事は、大学教員。なぜかいつもお腹をすかせている学生諸君が、変わった味に大騒ぎしながらも、完食してくれるのです。



BackNumber

(無断転載禁ず)