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キャンドル・ワックスアーティスト/笹本 道子さん

キャンドル・ワックスアーティスト/笹本 道子さん
「炎は、さまざまな感情を引き出し、豊かな気持ちを与えるもの」
Profile

笹本 道子/キャンドル・ワックスアーティスト
映像会社にてCGデザイナーとして働くかたわら、独学でキャンドル制作を開始。その後独立し1999年3月からオンラインショップPearlRoseを開設し運営。教室の開催を主に、オリジナルキャンドル、ロウ細工、ワックスペインティングの創作、展覧会の出品を行う。著書『キャンドル・レッスン』(誠文堂新光社)
http://www.pearlrose.com



キャンドルアーティストを志したきっかけ

 キャンドルというのでなく、素材であるワックス(ろう)が楽しい素材だと感じています。

 一度溶かすと、色、形、ディティールを自由自在に加工でき、何度でも失敗を繰り返すことが可能です。

 あらゆる素材との組み合わせもでき、何より入手が容易で、コストの低い素材ですから、小さな作品から大きな空間演出まで、発想だけでも夢が膨らみます。扱う者にとっては、そんな柔軟性のある素材は、とても魅力があり可能性が広がります。

専門の知識や技術を身に付けるまで

 私のキャンドル創作は全て独学で、我流です。キャンドルは、伝統工芸などのように、師匠の元で修行を積まなければ始まらないというものではありません。また生け花のように、先生の元で指導を受けたいという意志も、私にはありませんでした。

 もともと芸術家を夢見ていた私には、「まずは人から学ぶ」という思いはなく、初めから「自分だけのやり方を探す」という発想しかなく、プロセス自体から独自の創造力を身に付けようと思いました。

 キャンドルは、火が点火するという化学現象を持つ存在ですから、素材や材料別によるテスト研究は常に必要です。そのゼロからの実験的姿勢は、知識を誰からどうやって学ぶかよりも、純粋な追求精神の方が重要だと感じています。それは芸術から学んだことです。

 今は、ネット上で他人が得た知識を共有することが可能ですが、できるだけ私自身の経験で積み上げた知識を大切にしています。その流れが、自分自身の表現の探求にもなり、自信にもつながります。

キャンドル教室で伝えたいこと

 キャンドルを直接に教えてはいますが、ゼロから生み出すモノづくりの精髄を伝えられたらと思っています。

 創作の工程には、さまざまな知識や技術も必要ですが、それ以上に大切な要素は、作者独自の第六感や、知恵、応用力だと感じています。それらを一つにまとめた集大成には、何ものにも代えられないオリジナリティーがあります。そして創作には、結果も過程も重要です。

 創作の過程は静かで穏やかな時間であり、自分自身と向き合う時間でもあります。どのようなものを制作されても構いません、このような創造的行為を、多くの方に日常の生活の中に取り入れてほしいと願っています。

蜜ろうの薄い膜を幾重にも変則的に重ねた作品
蜜ろうの薄い膜を幾重にも変則的に重ねた作品

キャンドル作りの道具へのこだわり

 個性的で新しい作品を作るには、材料と同様に、道具のセレクトを始め、その使い方も独創的でありたいと思っています。

 私が使用する道具は、熱に強い素材で、面白いと想像できるものは、どのような目的で作られる道具であっても、利用したいと思っています。

 例えば、ホイッパー、画用紙、スケッパー、ピンセット、パレットナイフ、茶こし、目打ち、麺棒、パイカッター、紙ヤスリ、大根おろしなど、キッチン用具から画材、工具道具など、多岐に渡ります。

 ときどき、珍しい道具などを目の当たりにすると「この道具は元々何に使うのか?」という質問を受けますが、大切なのは、道具の誕生エピソードよりも、道具の持つ(特に素材の)特徴をよく知ることです。制作には、「これを、こう使わなければいけない」 というルールがないからこそ、より一層の楽しさが生まれます。

 また、選ぶ道具はできるだけ、無彩色あるいは着色されていないもの(色彩があっても、その素材そのものの色)を選びます。制作では、これから生み出す色をより正確に判断し、また集中力を高められるように、作業テーブルの上だけではなく、周囲の環境にも、物や色彩が散乱していない状態を心がけています。

キャンドルとともに過ごす時間

 昔は、近所の人々が集まって、家の軒先や神社で焚き火をしたものです。

 炎の変則的なゆらぎを眺め、ぱちぱちという音を聞くのは、太古から人間の原始的な快楽であり安らぎでした。人間の文明は炎とともにあり、今なお人間のDNAに組み込まれているように感じます。

 キャンドルという小さな炎でも、その要素は変わりません。誕生日やお祝いの日だけではなく、普段から部屋のあちこちにキャンドルを置いて、日常の生活のシーンで取り入れていただきたいです。家族が集まるテーブルの中央やドレッサー台の前、ベッドサイド、窓辺に。大きな不燃材のトレーの上に、色、高さ、形もさまざまなキャンドルを寄せ集めたり、点在させたり…。演出の仕方もさまざまです。 日々、火を灯して、キャンドルが変形していく様子を眺めて、時の流れを感じるのも、小さな至福です。



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