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ハーバリスト/若林 葉子さん

ハーバリスト/若林 葉子さん
「ハーブ香る暮らしを求めて」
Profile

若林 葉子/ハーバリスト
ハーブスクール&プロデュース ウィズハーブ代表。自宅アトリエで100種のハーブを育てながら、生活に役立つハーブ活用法を、講演会、コラム、スクール開催などを通して提案。ハーブイベント・提案型カフェ、ハーブガーデンを企画プロデュース。日本園芸協会H15年度ハーブコーディネイター部門最優秀成績賞受賞
http://with-herb.com/



 一枝のハーブ。その香りは豊かで、誰をも惹きつけてやまない。心揺さぶる存在、優しさの象徴。

 出合いは、約15年前。ハーブという表現がまだ一般的ではなく、香草や薬草と呼ばれていた時代でした。

 テレビでふと知った「香り高きハーブ」という言葉に惹かれ、持ち出し禁止の刻印が押された分厚い薬草書をめくるために、私は足繁く図書館に通うようになりました。ページを開くと、そこには鮮やかで精密なボタニカル画や、楚々とした草花の写真。目も心も奪われ、まさに穴があくほど読みあさりました。

 インターネットから情報が溢れている現在と違い、その頃はハーブの資料は乏しく、図書館で目にすることができるのは、難解な薬草書のみでした。

ハーブが咲く庭

ハーブが咲く庭

フレッシュハーブティーで優雅な一時

フレッシュハーブティーで
優雅な一時

 そんな中、関西ハーブ界の草分けである故・谷口多恵子先生と出会えたのは、奇跡のようなことでした。素敵な先生に圧倒されながらも、少しずつ「いつかは先生のように…」と憧れるようになりました。子供もいる普通の主婦である私でしたが、谷口先生も主婦経験を持ちながら自宅サロンから教室を広げていった経緯を知り、夢はさらに膨らむばかりでした。

 恩師の下で、助手を務め5年の月日が経ったころ、私は自らの足で歩き始めることを決めました。それは、「決心」というよりも、「決意」のような少し挑戦的な思いでした。

 娘の小学校入学を期に、それまでのパート勤めを辞め、自宅玄関前に手作りのささやかな看板を立て掛けたのです。スクール名は決めていました。「With Herb 葉子」(ウィズ・ハーブ ようこ)。ハーブと共にある暮らしのすばらしさを伝えたい。そして、そこに自身の名前「葉子」を足すことで、葉子印、つまり葉子オリジナルの素敵なハーブのレシピを広げたいという責任保証のような気持ちを込めました。

 名前を掲げ、曲がりなりにも「先生」と呼んでいただくことが、いかに大変なことかを実感することになるのは、実は看板を掲げてからでした。

 ハーブについて人一倍勉強をし、ハーブに関する書物を暗記するほど読み込んだ自信は、独りよがりな過信であったと分かるのに大して時間はかかりませんでした。

 ハーブは生きています。本から得た知識だけでは、本当にハーブが香る暮らしを多くの人に伝えることはできないと実感しました。そこにいろいろな失敗や成功、喜びや悔しさなどの肉付きが必要だったのです。

 その時に思い浮かんだのが、谷口先生の素敵な自宅とフロントガーデンでした。足を踏み入れるだけで満たされる優しい風、繊細な葉に触れるだけで溢れ出る香り。そして、窓辺に飾られた野バラの小枝。本を広げれば栞代わりのラベンダー。セージで染められたテーブルクロス。

色とりどりのハーブを集めて

色とりどりの
ハーブを集めて

 つまり生活に根付いたハーブ。先生から教わった「生活の中のハーブ」という最も大切な考えを忘れ、難しい栄養学の本や薬草書を読む「机上の学び」だけに終始してしまっていました。そこから「私が伝えたいハーブの世界」に、よううやく立ち戻ることができました。

 土を耕し、種を蒔き、その成長を慈しみ、収穫に感謝し、暮らしに生かす。ハーブは特別なものではなく、毎日欠かすことのできないものなのです。遠回りでしたが、このことに気づくことで、ハーブを学ぼうとする方に、自信を持って向き合うことができるようになりました。

 「ハーブとは何ですか?」。よく投げかけられる問いです。私はこう答えます。「毎日の暮らしに、喜びと優しさ、そして元気と安らぎを添えてくれる生命です」と。ハーブは生きています。乾いたドライハーブだけでなく、多くの方に、太陽と土と水のもとで成長するハーブに触れ、その生命力のすばらしさを感じてもらいたいと願って、これからも活動の場を求めていきます。




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