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グリーンディレクター/国吉 純さん

グリーンディレクター/国吉 純
「ひと鉢の植物から広がる世界」
Profile

国吉 純/グリーンディレクター
有限会社ジュリエッタ・ガーデン代表取締役。園芸講座、執筆、造園などを通して、植物と触れ、育て、楽しめる家庭園芸の普及に力を注ぐ。またマンションでのベランダガーデニングを得意としている。ガーデナーの立場から市場調査、商品企画などを行い、住居、商業スペース、農業などへの緑のコンサルティング事業も展開。フマキラー株式会社専属のカダン・アドバイザー、野菜ソムリエでもある。3月末にはベランダで手軽にできる家庭菜園の本を出版予定。
HP: http://www.juliniwa.com/



 春は桜の木の下でお花見、初夏は朝顔市、秋は紅葉狩りと、私たち日本人は古くから四季折々に咲く花や植物を見て楽しんできました。江戸時代の庶民の生活を描く浮世絵を見ても、季節ごとのさまざまな祭礼や行事、装い、風景などにも植物が描かれ、植物が身近な存在であったことが想像できます。

 狭い狭いといわれ続けた日本の住環境ですが、電車の中から外を眺めると、ビルの屋上に緑が豊かに茂り、小さなベランダにミニトマトなどの野菜がたわわになっています。エコや環境を多くの人が意識するようになった昨今では、植物の存在に立ち止まる人たちが増え続けているような気がします。

季節の花の寄せ植え

季節の花の寄せ植え

 私が園芸と出合ったのは、子育て中でした。会社員を続けている最中は、子どもを保育園に送り迎えをし、家事をこなし、と余裕のない毎日。子どもが3歳を過ぎたころに退職し、1日中子どもと過ごす生活の中で、たまたま街で配っていたパンジーの種を、花が咲くことなど期待もせずにプランターにまいたところ、発芽し、ある日可憐なかわいらしい花を咲かせたところから私の植物との付き合いが始まりました。

 それまで園芸のことなど何も知らない私でも花を咲かせることができた、ということが大きな達成感と意欲につながりました。それから、園芸店や庭先で、見たこともない花や植物を見つけては片っ端から購入し、園芸書を見て育てる毎日。子どもは保育園から帰ると、お母さんどこにいるの?と真っ先にベランダに直行するくらい、1日のほとんどの時間をベランダで過ごすことも…。マンションという無機質な空間でも、小さな自然をつくりだすことの楽しみを感じ、決して十分とはいえない環境の中でも健気に生きる植物の生命力に感嘆する毎日でした。そして、上手に育てることのできた鉢花や寄せ植えを人に譲ったり、育て方を教えたりすることから、徐々に園芸の楽しさを広める仕事をつくり出そうと、園芸家としての人生を歩むこととなりました。

子どもも花が大好き(子どもの園芸教室)

子どもも花が大好き(子どもの園芸教室)

無事トマトができるかな?(子どもの園芸教室)

無事、トマトができるかな?(子どもの園芸教室)

マンションの菜園講座

マンションの菜園講座

 私が園芸を面白いと感じるのは、小さな子どもでも、人生経験豊かな大人でも、「平等」に植物を育てる能力が備わっているということです。多少の技術や知識は必要ですが、育てる環境や、ちょっとした水やり、肥料をあげるタイミングなどで、年齢には関係なく、上手に育てて花を多く咲かせたり、枯らしてしまったりなどをみんな繰り返しています。園芸歴が長い私でさえ、仕事で忙しくしていると、植物を気に掛ける時間がなく、大事な植物を枯らしてしまうことも。植物を育てることは、毎日忙しい生活の中でふと立ち止まることを教えてくれる時間でもあります。短い時間でも、元気がないようだが虫はついていないだろうか、病気にかかっていないだろうか、肥料は足りているだろうか、水を欲しがっていないだろうか、と植物の様子を気に掛けるということは、私たちが生活の中で忘れがちな人との関わり合い方とも似ているような気がします。植物への興味が広がれば広がるほど私の生活や人間関係の幅をどんどん広めてくれる、素晴らしい職業に出合えたことに感謝しています。

 さて、これから春に向け、いよいよ園芸シーズンです。植物と長く付き合い、また楽しむポイントをいくつかご紹介しましょう。

 本来、土のないベランダや狭い庭などで植物を育てるには、どのような工夫をすれば良いのでしょうか?

 まずは、植物を選ぶより先に、「どんな園芸が自分に合っているのか」を考えてみましょう。水やりや花がら摘みなど、日常の手入れにどのくらい時間を割けるのか、鉢数や植物の種類が決まってきます。大事なのは決して無理をしないこと。徐々に鉢数を増やすなど生活のペースに合った園芸をすることが、植物を枯らさずに長く付き合うコツでしょう。

手軽に楽しめるリーフレタス

手軽に楽しめるリーフレタス

ベランダで収穫した野菜を食卓へ

ベランダで収穫した野菜を食卓へ

 植物や園芸用品は、近くの大型の園芸センターやホームセンターなどで購入することができます。最近では、園芸のネットショップなども多く存在します。近所の園芸店ではなかなか手に入らない園芸用品、いつかは育ててみたいと思うバラ、ラン、クリスマスローズなど「憧れ」の植物や珍しい品種も紹介されています。園芸関係の団体や、企業、個人のホームページ、ブログなどを検索していくと、植物の育て方から個人の庭の様子まで、さまざまな情報が載っているので参考になるでしょう。

 また園芸技術を実践的に習得するには、地域や大学機関などで開催する市民講座やカルチャースクールなどの教室に参加する方法もあります。植物の管理や寄せ植えの技術などを専門家に直接教われば上達が早いでしょう。

 園芸には、単に植物を育てるだけではなく、育てた植物を加工する魅力 もあります。キッチンガーデンで育てた野菜やハーブは料理やお茶に使えますし、きれいに咲かせた花は、押し花やドライフラワー、ポプリにもできます。さらに自然の風合いを残した草木染めなどの染料にも利用できます。また、きれいに咲かせた花は、写真に撮ったり絵を描いたりして、その姿を残すことも可能です。

パンジーを押し花にして楽しむ

パンジーを押し花にして楽しむ

 植物好き同士が集まって、ガーデニングショー見物や、国内外の植物、庭巡りをするのも楽しいものです。また、仲間と一緒にグループをつくり、今までに得た知識や技術を生かして、地域の施設や学校などの花壇の手入れをするボランティア活動に打ち込む人もいます。気の合った仲間と園芸情報を交換したり、お互いの庭で育てた種や苗を融通し合ったりして、交流の輪が広がることも、ガーデニングの楽しみの一つだと思います。

 この春、ひと鉢の植物から広がる生活の豊かさを、皆さんにもぜひ味わっていただければと願っています。



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