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レザークラフト作家/関根 美代子さん

レザークラフト作家/関根 美代子
「革のおもしろさ」
Profile

関根 美代子/レザークラフト作家
1958年群馬県生まれ。1981年千葉大学教育学部卒業。1983年革工芸を始める。1994年レザークラフト&ハンディーワークショップぱれっとを開く。現在、レザークラフト材料の販売とレザークラフト教室を運営している。名古屋市緑区在住。



タンニンなめし革との出会い

 学生時代デパートをぶらぶらしているとき、レザークラフトの体験コーナーがありました。面白半分で参加し、1本のベルトを作りました。ベルトの素材として用意されていた革は、後に知ったことですが植物から抽出したタンニン(渋)でなめされたヌメ革でした。教えられるままに表面を水で湿らせて刻印を打つと、模様がくっきりと残ります。そのときの新鮮な驚きと作る楽しさは、今でも忘れられません。当時私は、大学の授業の中で染色や木材、金属の加工などの勉強もしていました。造形の素材はたくさんあります。でも初めて手にした「タンニンなめし革」の水にぬらして形をつけると元に戻らない性質は、すごくインパクトがありました。

 大学を卒業して教師になりましたが、退職したときには本格的にレザークラフトをやりたいと考えていました。結婚と転居のため2年で教師を辞め、念願のレザークラフトを始め、20年という月日があっという間に過ぎました。

写真① タンロー、バッグとウォレット

写真①
タンロー、バッグとウォレット

写真② タンロー、バラの花と籠

写真②
タンロー、バラの花と籠

写真③ タンロー、人形

写真③
タンロー、人形

写真④ クローム、写真を撮ってプリントしたバッグとポーチ

写真④
クローム、写真を撮ってプリントした
バッグとポーチ

写真⑤ きがわ、ステンド風ライトとツリー

写真⑤
きがわ、ステンド風ライトとツリー

タンニンなめし革のおもしろさ

 革のなめし方には、主にタンニンなめしとクロームなめしがあります。タンニンなめしは植物のタンニンを使い、古くから行われています。その革は比較的硬くてコシがあり、染色する前は淡褐色をしています。写真①はタンニンなめし革(以下、タンローといいます)で作ったバッグとウォレットです。水分、油分を吸収しやすく使い込むほどに色が飴色に変わっていきます。初めは硬い感じの革ですが 使い込んでいくうちに革の繊維がほぐれて柔らかくなりなじんできます。手縫いで仕立てると縫い目がきれいで、切り口(コバ)は磨くと美しい艶が出てきます。また、植物でなめされているので燃やしても有害な物質は出てきません。最近、タンローの革独特の風合いが好きな手作り愛好家が増えていると思います。

 そして、このタンローは私が初めてベルトを作ったときに驚かされた「水で湿らせて形をつけ乾くと元に戻らない性質(可塑性)」も持っています。

 写真②は薄くすいた革を染めて作ったバラの花束とバスケット模様に刻印を打って作った籠です。

 写真③の五月人形もタンローで作りました。このようにタンローは、湿っている状態で好きな形に整え、乾くとその形が定着しているので、思いのままに造形できるのです。また、染められていないタンローでしたら、革用の染料によって容易に着色できます。そして、染料染めでしたら中に浸透するので、表面の革本来の風合いが損なわれることはありません。好きな形に造形し、染色もできるタンローは、手工芸の素材として本当に奥の深い物です。

 クロームなめしは、クロム塩でなめす方法でタンニンなめしに比べなめす時間も短く量産に向いています。柔らかく伸縮性もあり、革ジャンやコート、スカートなどの衣料用、バッグ、袋物、革張りのソファーなど幅広く使われています。

 写真④は、わが家の愛犬の写真を撮って特殊なシートにプリントし、それをクローム革にホットプレスして仕立てたバッグとポーチです。

透けるきがわ

 ちょっと変わった素材として愛好者に使われている皮に、きがわという物があります。これはなめす前の豚皮のことでローハイドともいいます(以下、なめす前のかわは皮、なめされた後のかわは革とします)。この皮もタンローと似たような性質があります。適度に水分を含ませた状態で形をつけると、乾いたときその形が固定しています。

 写真⑤は、きがわを使ったステンド風ライトとクリスマスツリーです。この皮もアルコール系の染料や顔料などで着色を楽しめます。透明感を生かして、ランプシェードなどにすると素敵な作品ができあがります。

ショップを始めて

 今から10年前、レザークラフト材料と自分で作ったオリジナル革製品のショップをオープンしました。このお店が結構楽しいのです。「初めて作るんですけど、材料と工具がほしい…」などと言って来られるお客さまには、ここぞとばかり目一杯説明してしまいます。また、ブルンブルンという大きな音がするとバイクから若者が降りてきて「厚い革でワイルドなサドルシートやバッグなどを作りたい」と言ってきます。これら手作り愛好家の人たちは、自分で使う大事な物は自分の手で作りたい。自分の使いやすいように工夫して作り、それを大切に使いたい、という思いを持っています。街中には欲しい物は何でも売っています。手作りで一針一針縫って作っていく作業は思っているより時間も掛かり、しんどいものです。でもその物作りを通して物への愛着もわいてくるし、大事に使おうという気になります。そして何より、できあがったときの達成感は格別です。このような気持ちを材料を買いに来られたお客さまと共有できる時間はとても楽しいひとときです。

 店の奥では、レザークラフト教室を開いています。これまで男女問わず、若い方から年配の方まで多くの方と出会いました。初めての作業は最初はぎこちないけれど、慣れてくるとそれぞれが納得のいく物を仕上げていきます。技術を習得していくにつれて「今度はこんな物を作りたい」という思いも膨らんでいきます。子ども会の集まりに呼ばれて子どもたちと一緒に革で動物を作ったり、PTAの講習会などでお母さんたちとレザーアクセサリーを作ったりします。

リメイクや修理

 最近多いのが、長年使っていたお財布やバッグなどが壊れてしまったときに修理に持って来られる方です。その中にはくたくたになっているお財布など、もう十分使いきったんじゃないかと思われるような物もあります。でもこれを直して使いたいと言われます。毎日の生活の中でそのお財布がなくてはならない物になっているのでしょう。リメイクは革のコートやスカートなどをバッグやポーチなどに作り変えるというものです。タンスの中で捨てるに捨てられなかった革のコートも気に入った革だったらほかの物に生まれ変わります。

 もともと、動物の体を保護している皮はなめし方などいろいろ研究され今日に至っています。その革は私たち物作りをしている者には素材の限りない可能性を示してくれ、造形の楽しさを与えてくれました。また多くの人々は、日常生活の中で欠かせないものとして革製品を使っています。革1枚1枚はそれぞれ個性と特徴を持っています。それらを生かした作品を作り、それをほかの人にも伝えていきたいと思っています。時々、何をどんな風に作ろうかと思い悩むこともあります。そんなときはタンローに出会ったときの感動を思い出します。すると気持ちも若返るような気がします。またがんばって作ろうという気になるのは、自分でも本当に不思議です。



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