Wendy-Net トップページ > Ms Wendy > Back Number > 156号 注目の人 写真家/織作 峰子さん

Ms Wendy

BackNumber

156号 注目の人 写真家/織作 峰子さん

「『私って、こんな顔しているんだ!』と感動させたいんです」
織作 峰子/写真家
Profile

織作 峰子/写真家
1960年、石川県生まれ。
81年度ミス・ユニバース日本代表。
82年、大竹省二写真スタジオに入る。87年、独立。
世界各国の風景や人物を、女性らしい視点でとらえ続けている。海外政府観光局から依頼された撮影のほか、紀行番組のキャスターとしても活躍し、年に数ヵ国を飛び巡っている。
日本全国で写真展を多数開催するかたわら、テレビや講演に幅広く活躍中。今年4月より開始した新番組「キーパーソンズ 今週の主役」(NHK衛星第一放送・毎週土曜日・18時~、再放送24時~)で、1年間インタビュアー・パートナーとして出演


生番組での挑戦”今までにない表情“を撮る

 この4月から、新番組「キーパーソンズ 今週の主役」(NHK衛星第一放送)で、インタビュアーとして出演しています。この番組では毎回いろいろな「時の人」をお招きしてインタビューし、撮影させていただくという生番組。番組のスタートとともに私がゲストをデジタルカメラで撮影し、インタビューを交えながら撮った写真を選んで、最後にポートレートに仕上げてお見せするという趣向です。コンビを組む山本アナウンサーがゲストに突っ込む役で、私は場の空気を和らげる息抜き的役割といったところでしょうか。

 ちなみに第1回目のゲストは、読売新聞社社長で巨人軍オーナーの渡辺恒雄氏でした。このときはご本人の希望でスタジオでなく、オーナー会議の席上で報道カメラマンたちに交じって撮影に臨みました。時間も情況も非常に厳しく限られたなかでのポートレート撮影でしたので、ちゃんと撮れているかどうか、最後までドキドキ(笑)。無事仕上がった写真は、渡辺氏が柔らかに微笑むものでした。「これがあの会議上での写真?」と意外に思えるほど、穏やかな雰囲気の顔です。渡辺氏は世間一般ではコワモテのイメージが強い方。笑顔が見られる日はとても珍しいという方のようです。でも重厚なインタビューの合間でも、趣味の野鳥の写真の話になると途端にうれしそうに語りだす1面もある。そんな、彼が今までに撮られたこともない表情をとらえようと、それを見せるほんの一瞬を狙ったんですね。先日も「4代目尾上松緑 襲名記念展」の写真を担当したのですが、そこでは4代目松緑のプライベートを撮影しました。仕事以外の彼の素顔を撮りたかったんです。

ミス・ユニバースから、写真家へ転身

出会いと経験、努力を重ねることが大切

出会いと経験、努力を重ねることが大切

(C)Mineko Orisaku

 私は81年度ミス・ユニバース日本代表に選ばれ、翌年、大竹省二写真スタジオに入門して、写真の道に入りました。

 よく「なぜミス・ユニバースが、突然写真の世界に?」と問われるのですが、私にとってはミス・ユニバースになったことが自分らしくないことをしたという位置付けなんです。友人が応募したら、受かってしまったという形。ちなみに、そのとき私はひっつめ髪のスタイルで出場したのですが、周囲からは「ロングヘアにした方が印象がいい」とうるさく言われました。ところがなんと私が選ばれてしまったので、翌年の大会では出場者の3分の1ほどがひっつめ髪にしてきたとか(笑)。

 ですから写真の世界に入ったのは、いわば元の私に戻った形なんです。父が日本建築の大工をしていたこともあり、「自分のやったことを形に残したい」という願望が元々強かったですから。さらに、ミス・ユニバースの撮影を通して出会った大竹先生の「写真やってみたら。写真も立派な芸術だよ。」という1言が、写真の道を目指すきっかけになりました。

 とはいえ、それまで写真は男の人の仕事という認識でしたし、カメラのこと自体も全く知りませんでした。 フィルムに12枚、24枚、36枚撮りがあることだけは知っていたというレベルで(笑)。写真学校出の先輩方とはあまりに開きがあるのを愕然と悟り、大竹先生に写真学校に入ったほうがいいかを相談しました。すると先生は「まっ白の方が、吸い取り紙のように吸い取ってくれるから」とおっしゃってくれたんです。それから日曜の休みの日も、1日スタジオに1人でこもり、自主勉強を開始。1年365日、写真に打ちこんだことが自分にとって大きな勉強になりましたね。

ベッドルームで、大作家を撮影

 大竹先生からは「1枚1枚大切に、シャッターを切れ。1枚に神経を集中しろ」と教えられてきました。私が入門した当時、カメラマン全体100人のうち女性カメラマンは1人か2人いる、といったかんじで珍しい存在。まだ厳然たる男社会でしたね。記者会見会場では、撮影中突き飛ばされたりと、いじわるもされたり。そんなこともあって報道写真はやめ、「写真家になって、自分の作品を作ろう」と決めたんです。

 入門して1年経ったころ、私にテレビ局から世界を1周して撮影する企画がきました。「先輩をさしおいて、私なんかまだとんでもない」と遠慮していたら、先生は「行けよ」と薦めてくれました。「写真家は写真だけ撮っててはだめ。いろいろなチャンスがあるのだから、人生勉強しろ」と。この言葉でその仕事を引き受け、作家のアーサー・C・クラーク氏をベッドルームで撮影させてもらうなど、すばらしい経験をすることができました。今でも、当時大竹先生がおっしゃってくれた言葉をかみしめています。私が今写真の仕事と同時に、テレビの仕事をしているのも、あのときの先生の考えから。写真はそうしたさまざまな人生経験の積み重ねであり、経験は作品にすべて表れるんですよね。

 人生は出会いが大事。でも出会いだけでは成長しないから、あとはどれだけ努力して成長できるかが大切だと私は感じています。

日本の素敵さを世界にアピールしたい

日本文化の海外での展覧会開催が目標

日本文化の海外での展覧会開催が目標

(C)Mineko Orisaku

 写真は現像してみるまで、ちゃんと撮れているかどうかわからないもの。だから今でも現像するまで、不安で眠れないこともあります。

 だけど写真を撮るときに、焦ったら終わり。冷静さを保ちながら、どれだけ物事にあたれるかが勝負。撮影しようとする人が、フと見せる瞬間の表情をとらえ、シャッターを押すんです。その間合いというのは私が直感的に感じるもので、そこは動物的な勘と言えますね。

 被写体は、男性の方が女性よりも撮りやすいです。会った瞬間からクラーク氏のように気を許していただけるので、そこはトクな部分かもしれません。女優さんは、声をかける度に表情がグングン美しく変わっていくところがおもしろいですね。1番難しいのは、一般の素人さんの撮影。素人さんはどうしても緊張からか、まばたきの回数が多くなり表情がこわばりますから。ですから、失敗なく写真を撮られるコツとしては、撮られる瞬間まで目をつぶっていて、シャッターが押される瞬間にパッと目を開けるようにしてみたらどうでしょうか。

 特にキレイに撮られたい女性におすすめしたいのが、撮られる瞬間に”自分が気持ちのいいと感じるもの“を想像すること。青い空でも、なんでもいい。そんな清らかな気持ちは表情に出て、写真にも写るんですよ。自分が気持ちのいいと感じるもの“を想像すること。青い空でも、なんでもいい。そんな清らかな気持ちは表情に出て、写真にも写るんですよ。

 現在、私が興味を持っているのは「日本文化」。万葉集のプロジェクトもゆっくりですが進んでいますし、炭にも注目しているんです。炭の、モノトーンのつややかさをどう表現するか。炭焼き小屋に行ったりして研究しています。

 ゆくゆくはそれらを集めて、海外で展覧会を開くという企画も考えています。現在は、先の新番組も始まったばかりですので、それはいつ実現するかはわからないのですが、日本の素敵さを海外にもアピールしていきたい。それが今の私の願いですね。



BackNumber

(無断転載禁ず)