本音のエッセイ

311号 作家 椎名 誠さん

こんなモノいらない

作家 椎名 誠さん

作家 椎名 誠さん

椎名 誠/作家

1944年東京都生まれ。79年より、小説、エッセイ、ルポなどの作家活動に入る。『怪しいの大好き!とつげき!シーナワールド!!3』(椎名誠 旅する文学館)を2015年4月に刊行予定。公式インターネットミュージアム「椎名誠 旅する文学館」http://www.shiina-tabi-bungakukan.com

 結婚式で祝電を神妙に聞いているの、なんだかいまいましくないですか。こちらはかたくるしい服着て現場に来ているのに、電報の主はそこにはおらず、エライ人の場合なんかはたぶん「模範祝電用語集」なんて本を秘書がまる写しにしたのを司会者がうやうやしく読み上げる。しかもそれにいちいち全員の拍手を強要されるんですからねえ。 

 結婚式に限らず、仕事柄ときおりパーティーなどにも出る。おいしいサケに料理。久しぶりに会った人との語らい。いろいろ楽しいことがあるけれど、この頃よく出てくるのがアトラクションの太鼓ショー(とでもいうのかね)。

 いろんな太鼓が舞台に並び、しばしばフンドシ姿の親父が出てきてすんごい音で太鼓を叩きまくる。そうなるともう古い友人との話も何もできなくなる。隣にいる友人の声が聞こえないからだ。本日、我々太鼓を聞きにきたんじゃないけどなあ、とげんなりする。おばさんのハワイアンなどはまだいいか。

 はやりもので嫌なのは「ゆるキャラ」とかいうやつ。行政が作るケースが多いけれど、一体30万〜50万円ぐらいかかるらしい。あれは税金で作られているコトが多いんですよ。

 「かわいィー」なんて並んで記念写真なんか撮ったりしている大人などよく見るけれど、あの中にはやっぱりフンドシ姿のおとっつあんが入っていることが多い。中は暑いからね。あんなのが日本に1万体ぐらいあるらしい。いろんな国を旅しているけれど子ども遊園地ぐらいでしか見たことないですよ。

 テレビの旅番組(温泉とかね)やグルメ番組を見ていると、アナウンサーでもタレントでも必ず言うのが「すごーい!」。すばらしい景色を見ても「すごーい」。荒れてる海を見ても「すごーい」。山盛りの刺し身が出てきても「すごーい」。災害の惨状を見ても「すごーい」。日本のタレントは勉強をあまりしないみたいで語彙(ごい)がないから強くても弱くても熱くても冷たくてもとにかく「すごーい!」。やはり幼稚な国なんだ。

 ぼくは新宿近くに住んでいるけれど、新宿警察をはじめほとんどの警察署に「やさしさが 走るこの街 この道路」などと書いた巨大なタレ幕がさがっている。

 税務署では「いつもニコニコ明るい納税」なんてタレ幕を見たことがある。どういう人がニコニコしながら納税に来るのか見せてほしかった。

BackNumber

(無断転載禁ず)