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本音のエッセイ

304号 プロスキーヤー・博士(医学) 三浦 豪太さん

家族で広がる冒険の場

プロスキーヤー・博士(医学) 三浦 豪太さん

プロスキーヤー・博士(医学) 三浦 豪太さん

三浦 豪太/プロスキーヤー・博士(医学)

1969年神奈川県生まれ。博士(医学)。ミウラ・ドルフィンズ低酸素・高酸素室のトレーニングシステム開発研究所長。執筆活動やプロスキーヤーとして活躍するかたわら2003年、父・雄一郎とともに世界最高峰エベレスト山登頂、初の日本人親子同時登頂記録を達成する。

 逗子は僕にとってかけがえのない場所だ。現在の職場であるミウラ・ドルフィンズに勤め始めたころ、東京の遊びが全くできなかった僕はいつも友人が住んでいる逗子に遊びに行っていた。

 普段生死をかけたヒマラヤ登山を行っている僕にとって、逗子の豊潤な海で釣りやスノーケリングをすることがいいリセットとなっていた。

 逗子の海に惚れ込んで10年前に引っ越した。引っ越した当時は春から冬にかけて毎晩ライトを持って海に潜った。自分のマンション前の海に毎日入ると、定点観測ができる。季節によって変わる潮や海の生物たちが織りなす景色が新鮮で飽きることがなかった。

 引っ越してきて初めて気がついたことだが、逗子は海だけではなく山も面白い。俗称三浦アルプスとも言われる逗子、葉山、横須賀付近にある山道は奥深くトレッキングやマウンテンバイクが好きな僕にとってまさに身近にある冒険であった。

 そんな僕も7年前に結婚をして子どもができた。そうなると今度は家族を中心とした逗子やその周辺に住んでいる家族との付き合いが始まる。逗子周辺で海遊びや山遊びをして子どもたちを鍛え、そしてまとまった休みが取れると本格的な山や離島でキャンプを行うのが最近の大きな連休の使い方になってきた。

 不思議なもので、これまで自分本位で行っていたスポーツやアウトドアだったが家族とそれを行うと喜びが何倍にもなる。

 もちろんこれまでのような激しい登山やドキドキするような崖をスキーで飛ぶようなことはできない。むしろ逆で最初に子どもの安全を考え、そのための装備や環境を整える。さらにキャンプをするために家族分の荷物を背負い子どもがけがをしないか、暑くないか寒くないか、蚊にさされないかと心配事が増えるばかりだ。

 それでも家族や友人たちと山頂に立ったり、離島で魚を捕まえる、一緒に弁当を食べる、何よりも子ども同士が山や海、そしてお互いに刺激をし合って成長する様子を見ることが楽しく感じるようになった。

 こう考えるのは年をとったからなのかなと思ったが、よくよく考えてみると三浦家は祖父の時代から家族で冒険をするのが習わしであった。祖父は病気がちで学校を休んでいた僕の父、三浦雄一郎を冬の蔵王や八甲田の山奥に連れて行き山とスキーを教えた。それがきっかけとなり世界的な冒険スキーヤー三浦雄一郎が出来上がるのだが、その父も僕たちを子どものころからキリマンジャロやエルブルースといった世界的な冒険に巻き込み、最近では80歳になりエベレストに登り、5年後にはチベットのチョ・オユーの計画もある。

 多くの人たちにとって家族ができることは冒険時代の終わりと感じるかもしれないが、僕たち三浦家は家族ができるからこそ冒険の場が広がると考える。さて、来週は逗子の友人たちと八ヶ岳に登りに行こう。

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