Wendy-Net トップページ > 本音のエッセイ > BackNumber > 映画評論家 渡辺 祥子さん

本音のエッセイ

BackNumber

239号 映画評論家 渡辺 祥子さん

「『やったね、日本映画!』」

映画評論家 渡辺 祥子

映画評論家 渡辺 祥子さん

渡辺 祥子/映画評論家

共立女子大学文芸学部 映画専攻。卒業後、雄鶏社「映画ストーリー」編集部入社。PR誌編集長を経てフリーのライターになり、今日に至る。現在、映画雑誌、新聞などで映画紹介、批評等で活躍。「ラジオビタミン[とっておきシネマ]」(月1回)に出演。趣味は料理作りと花を咲かせること。


 今年第81回を迎えたアメリカのアカデミー賞は、アメリカ映画芸術科学アカデミーが主催するアメリカ映画人の年に1度のお祭りです。映画製作の現場で働く人々が、仲間の仕事ぶりをたたえてその年のすぐれた業績を、6000人を超える会員の投票で顕彰します。

 作品賞部門をはじめとしてさまざまな部門があるのですが、今年は、そのうちの外国語映画賞を日本の『おくりびと』、短編アニメ映画賞をこれも日本の『つみきのいえ』が受賞、ということで、日本映画は思いがけず脚光を浴びることになりました。

 近年の日本映画界はバブル的状況で、昨年日本で製作された映画は400本ほど。大変な数の多さです。これだけたくさん製作されると、良質な映画が生まれるチャンスも増えるようで、『ぐるりのこと。』『トウキョウソナタ』など魅力的な作品が楽しめました。その頂点に立ったのが、昨年、カナダのトロント映画祭で最優秀作品賞を受賞して以来、日本アカデミー賞など多くの賞をさらい、ついに日本映画界の夢だったアカデミー外国語映画賞を受賞した滝田洋二郎監督の『おくりびと』です。

 アカデミー賞の外国語映画部門は第29回のときに生まれたのですが、それ以前にも、名誉賞としてすぐれた外国語映画に賞が与えられていて、日本映画は黒澤明監督の『羅生門』、衣笠貞之助監督の『地獄門』、稲垣浩監督の『宮本武蔵』の時代劇三作が受賞。外国語映画賞部門ができて以来はじめて受賞したのが『おくりびと』でした。初の現代劇でもありました。

 受賞できたのは、作品そのものが優れていたからなのは当然ですが、戦争や金融不安、底なしの不況など、アメリカの暗い社会状況が受賞のための後押しをしたようにも思えます。死という普遍的な題材を、美しい日本の四季の中に人間味豊かなドラマに仕立てて見せたこの映画は、誰もが見るだけでしみじみと安らかな気分になれるはず。そこに受賞の大きな要因があったのかもしれません。せめて映画の中ぐらいは平和で穏やかに。

 映画は社会を映す鏡、とはよく言われること。映画を見れば、時代や社会の動きが分かります。歴史の勉強にもなるし、恋の手ほどきも、ネ。日本映画がはじめてアカデミー外国語映画賞を受賞したということで、私としては、長らく見続けている映画のことや、アカデミー賞のことをしみじみ考え、やはり映画っていいなとあらためて思ったのでした。


BackNumber

(無断転載禁ず)