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本音のエッセイ

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235号 映画衣裳デザイナー 黒澤 和子さん

「子育てはアート」

映画衣裳デザイナー 黒澤 和子

映画衣裳デザイナー 黒澤 和子さん

黒澤 和子/映画衣裳デザイナー

1954年、黒澤明の長女として東京に生まれる。1988年父の進言で、映画界に入る。時代考証や日本民族衣裳の勉強に励み、時代劇の仕事が急増。「汚し」のテクニックの評価が高く、時代衣裳デザインの素晴らしさに目覚めて経歴を積む。


 このごろ、誰も彼もが子育ては大変だとばかり連呼する。

 わが子を自分の手に抱いたときの幸せや、1人1人の違う個性の人間を育てられる喜びを語る人は少ない。

 私は、子育てはアートだと思っている。

 手がかかるほど楽しいのだし、皆違うのが面白い、思うようにならずに考え付かないようなインスピレーションもくれるのだから、なんて幸せなんだろうといつも思う。

 自分がハンドリングできる程度の人間、楽できる人と生きても成長なんて期待できないから、家族でも競争で成長できる環境が望ましいのだと考えている。

 忌憚なく物を言い合えて、何でも曝け出せるのが家庭だから、緊張感と安らぎがある、それこそ家庭なのだ。

 仕事で家庭での大変さを気分転換して、家庭で仕事の大変さを気分転換して、4半世紀の母子家庭を運営してきた。

 家族は仲間でもあり、同志でもあり、1番辛辣な評論家でもあり、ライバルでもあるのだと考えている。

 「あなたたちのことは世界1大切で、何があってもどこにいても、命を捨てても助けます」

 それさえ伝えて信じてもらえていれば、エキセントリックな大騒ぎの親子喧嘩も笑い話にしかならない。

 父黒澤明を共に支えた日々も、結束の固さにはなったけれど、つらい過去だとか愚痴の種にはならない。

 思いっきり自分を主張しあい、話し合って分かり合うまで話し合う。

 1個の人間の持つ個性は尊重して、自分の尺度ばかりで測らない、1つ1つの言葉を丹念に積み重ねて、丁寧に分かり合えば後は気楽なものだ。

 そして進路や将来のことは、最後は自分で決めるのが自分に責任を持つという大切なことの第1歩だと思っている。

 進学だってご勝手に、嫌なら行かなくてもいい、どんな仕事を選ぼうが自分の人生、どれが1番なんて誰も分からないのですから。

 わが家が心底明るい家庭であるのは、嫌なことから目を背けないで、とことん話し合ってきた成果である。

 笑いが絶えないわが家では、皆お互いのことが大好き。大声で歌を唄いながら家族旅行に行く車中、今までの旅行での失敗話で大笑いして、今回の旅行はどんな順番で観光するか何を食べるかということで意見が分かれ、本気で言い合いになったりする。


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