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団地再生 -団地再生を考える-

団地再生シリーズ180弾

夢と物語のある団地再生を!!
―誇りある意味空間の創造―

竹林 征三さん

富士常葉大学名誉教授・風土工学デザイン研究所理事長
竹林 征三さん

1967年京都大学土木工学科卒業。69年京都大学大学院修了後、建設省に入省。退官後、土木研究センター風土工学研究所長などを経て、現職。


団地再生とは

(1)団地とは

 団地といえば、住宅団地や工業団地、さらには農業団地等多様な団地がある。

 ある計画意図で作られた多くの者の集う一連の土地(地域)といえる。20世紀の中ごろに生まれた。できたものは村や町と同じ機能が求められる。

(2)再生とは

 再生、すなわち再度生まれるということは、元はある計画意図があって、それが時間の経緯の過程で、現実と合致せず、乖離(かいり)が生じてきたので、再度、ある計画意図を導入して、作り変えよみがえらせようということである。

 団地が生まれるということは新しい村が生まれるということである。村には村人の拠り所として鎮守の杜があり、夏や秋には祭りが行われ、洪水や飢饉等になれば相互に助け合ってきた。大団地になれば町や市が生まれることに等しい。初めは皆各地から集まってきた。異なる故郷を持つもの同士である。団地ができて10年、20年たつと団地で生まれた子どもたちが大きくなってくる。その子どもたちにとって故郷はこの団地だ。そのころが団地再生の時なのだ。団地再生は、団地が初めて生まれる時以上に重要な意味を持つ。

(3)団地創成時代から団地再生時代

 団地創成時代・憧れの団地生活の始まりの時代から、現在は、団地再生時代・成熟期で誇りある生活の舞台が求められる時代へ変わってきた。

 団地創成時代は憧れの三種の神器(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)のある団地生活から始まった。現在は、既に三種の神器は憧れでなくなり、かつて作った夢の団地は物理的に老朽化し、入居者も高齢化して補修再生の積み立てもなく、集団の合意も得難く、ゴーストタウン化への道を着実に歩んでいっている団地も出てきた。団地再生は喫緊の重要課題である。

(4)人生の老後設計と団地再生の設計

 人生60年定年時代から、現在は人生100歳時代に寿命は長くなってきた。定年後の長い高齢時代をいかに豊かに過ごすかが大切な時代になってきた。

 人間の真の老齢化は物理的年齢による身体能力の劣化によって決まるのではなく、精神的年齢により決まる。老齢になり、夢とやりがいを持ちますます元気に活躍し成熟した、若者にない豊かな老年期を過ごす人が増えてきた。若者のようにいつまでも夢を追い続け日々働く(人のために身体を動かす)人の辞書には老後などという言葉はない。

 定年後・老後は第2の人生の時代ではなく、その人の人生の本番の舞台である。精神的やりがい・意味があれば、老後は若者にない成熟人生を演出できる素晴らしい時代なのだ。

 かつて、ロンドンに行った時、古い建物に「FOR RENT」の張り紙がしてある建物が多いのに驚いた。補修塗装して再利用する文化である。日本は古い建物を壊し、新しい建物を作り変える文化である。文化の違いを感じた。

 分譲方式の団地は、いわゆる分譲マンションであり、修繕積立金を毎月各戸から集めており、外壁を塗り替える等の修繕を10年〜20年に一度行っている。建物の長寿命化の取り組みは進んできているが、団地再生は外壁の塗装等ハード面の修繕だけでよいのであろうか?

 団地で生まれ幼少期を団地で育った者にとって、故郷は生まれ育った団地である。第2の人生は懐かしい故郷で豊かな老後を過ごしたいと思うが、その者が60の定年を迎えた時、生まれ育った団地に戻りたいと思うであろうか。

 懐かしい故郷の思い出は鎮守の杜で遊んだことや、夏祭りでの盆踊りや山車の囃子や、太鼓の響きではなかろうか。

 団地は時代の変遷につれて、その時代ごとの快適生活空間の計画に相当意を用いてきている。しかしもう一度帰ってきたい団地・マンションの設計に意を用いてきているであろうか?

団地再生に求められている『風土工学』

図(1)景観十年、風景百年、風土千年
図(1)景観十年、風景百年、風土千年
(1)景観十年・風景百年・風土千年

 団地再生にあたっては、心の故郷づくりを目指す意味空間の設計が求められている。

 景観はいずれ損なわれる運命にある。すぐに損なわれる運命の景観を追い求めるのではなく、景観が損なわれずに残れば風景となる。さらに風景がその地の人々の心象に融けこめば、風土となる。したがって景観十年・風景百年・風土千年という(図(1))。

 団地再生にあたっては、風土千年を目指す風土工学によるべきである。

 目新しいモノの設計は時代の経過とともにどんどん風化して見られないものになっていく。有機塗料を塗ったものは時間とともに剥げ醜くなる。化粧も一晩ですぐに醜くなる。一方、風土の誇りを目的とする風土工学設計は、時間の経過とともに風格が備わってくる。無機の石積み等は時間の経過とともに風格が備わってくる。美しい心の者は化粧しなくても内面から美が醸し出される。

岩手県雫石町秋田街道沿いの道の駅「雫石あねっこ」。風土工学手法を用いて建設・整備された。コンセプトは、「秋田街道の交流の歴史を伝える橋場関所」「雫石あねっこ物語と温泉のある道の駅」
岩手県雫石町秋田街道沿いの道の駅「雫石あねっこ」。風土工学手法を用いて建設・整備された。コンセプトは、「秋田街道の交流の歴史を伝える橋場関所」「雫石あねっこ物語と温泉のある道の駅」
(2)団地再生にソフトな「意味と物語」

 私は地域づくりにおいて土木や建築の従来形の都市計画でなく、風土工学的デザインによるソフト・ハード一体の設計による意味空間デザインが重要と考え風土工学を構築した。ソフトとは名前や物語等形のないものである。ハードとは形のあるモノのデザインである。

 風土工学は、土木や建築の地域計画に代わって、その地の誇りうる未来や、夢のある地域づくりに向けて、その地の風土文化に、なじむ意味空間計画にすべきであるとし、それを具体的に作る手法として構築した。団地再生に求められているものはまさに、風土工学そのものではないだろうか。

(3)風土工学とは
図(2)四つの窓の分析
図(2)四つの窓の分析
図(3)誇りの六構造分析
図(3)誇りの六構造分析

・風土資産を調べる。どの地域にも誇りうる素晴らしい歴史や文化等がある。それを徹底的に調べる。

・風土資産に対する意識構造をアンケートして分析する。アンケートはその地の者とそれを取り巻くその地以外の者、の2集団の人々の、頭の中にある意識構造を連想アンケートにより、「開放」、「盲点」、「隠蔽」、「潜在」の四つの窓を分析する(図(2))。

・四窓分析の次は「誇りの六構造分析」を行う(図(3))。六構造と四窓よりコンセプトを導き出す。

・コンセプトからハード・ソフトのデザイン展開をする。具体的には形あるハードなものづくりよりも形のない、ソフトな名前や物語の方がより重要なのである。

・その地の誇りを共有できる物語の創作が大きな意味を持つ。

おわりに

風土五訓

 団地再生は物語のある意味空間の設計が求められている。風土工学デザインである。老齢化を超える意味物語の創造を!高齢化を超える誇りうるオンリーワン未来を!団地再生はこれ以上ない創作キャンパス舞台である。再生の種・その地の風土の宝は六大風土に満ちあふれている。

参考文献
・『風土工学序説』1997技報堂出版
・『風土工学への招待』2000山海堂 その他
http://www.npo-fuudo.or.jp/

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団地再生支援協会 http://www.danchisaisei.org/