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団地再生 -団地再生を考える-

団地再生シリーズ172弾

「マンションの管理不全」に陥らないために

藤本 佳子さん

千里金蘭大学名誉教授・マンション管理研究所関西センター所長
藤本 佳子さん

1975年奈良女子大学院修士課程修了。大谷女子短期大学教授などを経て、2011年〜千里金蘭大学名誉教授。マンションの復旧、再建の研究等を行っている。


 管理不全には、管理組合の機能的不全と建物・設備の物理的不全があります。最近は大阪と沖縄の管理不全マンションを調べていますので「マンションの管理不全について」報告します。

建物不全と管理不全

 空家の管理不全についての明確な定義はありません。「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2条2項)では、除却等の対象となる特定空家等を「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」としています。

 物的な維持管理状態を基準として管理不全を想定していますが、マンション管理は「維持管理」、「運営管理」、「生活管理」、「地域共同管理」の4側面があります。このため「管理不全」の判定には、運営管理等を含む多面的な評価を要すると考えます。

管理不全になる理由

管理不全の理由

 ファミリー型マンションの場合、その理由として「2つの老い」、すなわち「居住者の高齢化」と「建物の高経年化」があげられます。建物の築年数が経過するにつれて、住戸の賃貸化が進み、マンションへの無関心層が増加し、居住者の高齢化により体力的に動けない、介護が必要、さらに空き住戸も増加などの理由で役員不足が生じます。

 また、高経年マンションでは、大規模修繕時に修繕積立金の不足が生じる場合が少なからずあります。修繕の資金不足により、「合意形成」がますます困難になってきます。大規模修繕工事の合意形成ができないままに時がたてば、そのうちに建物・設備の老朽化が生じることになります。

大事なことは4つの共同

戸建てとマンションの違いー四つの共同ー

 マンションは、価値観、世代、ライフサイクル、家族構成などが異なっている人々が、「共同生活」し、「共同所有」し、「共同利用」して、「共同管理」する集合住宅です。「4つの共同」なのです。

 マンションは多様な価値観の人の集まりであり、管理組合は、分譲マンションという建物を維持し住環境保全のために活動する団体です。管理組合の中での「合意形成」は、区分所有者(管理組合構成員)にとり、所有する財産を自分で管理するという観点からとても重要なことです。

 マンションの管理組合は、すべて多数決により管理ルールである管理規約、管理水準、大規模修繕工事等を決めます。すなわちすべて合意形成をしていく必要があるのです。

 しかし合意形成を阻害する要因は、マンション管理に関する知識格差、関心の格差、協調性のない区分所有者の存在、資金不足など多々あります。

管理不全に陥らないためには

2階部分の外廊下が倒壊した沖縄のマンション
2階部分の外廊下が倒壊した沖縄のマンション

 管理不全は、管理規約がない、等価交換方式のマンションに見られるような多住戸の所有者への議決権の偏り、投資型やリゾート型マンションに見られるような非居住の区分所有者が多い、などの理由があげられます。

 また、大規模修繕を実施するにあたり修繕費が不足する状況や、震災による修繕費不足もあげられます。

 管理不全に陥らないためには、常日頃から計画的な管理体制を作っておくことが重要です。それには適正な管理の条件として、(1)竣工図面、構造設計書、総会議案書の保管、(2)修繕履歴の整理と管理、(3)長期修繕計画の作成・修正・保管、(4)役員の経験の継続性および役員と組合員に対する研修体制などが求められます。

 つまり、専門性、継続性、責任性を持った管理組合へステップアップすることだと考えます。

防災面から長期的かつ計画的な管理を

 地震活動期に入ったといわれるわが国では、次の2項目への準備対応が重要となります。

(1)震災の教訓と災害に強いまちづくり、住まいづくり
・地震や津波による被害
・建物の損壊や地盤の液状化による被害

(2)計画的管理
・計画的修繕
・日常の手入れ
・大規模修繕工事の実施
・耐震診断や耐震補強、耐震改修
・ライフスタイルの変化に応じた環境改善計画の推進
・場合により建替えと管理組合の解消

 筆者の2017年7月24日付け調査では、熊本地震の場合、約850マンションのうち、全壊判定は17事例あり、建替えへ進んでいるのは1事例、解消を選択するのは、6事例、補修・補強を選択したのは6事例、未決議が4事例でした。

 公費解体の申請を受理されたのは2事例のみです。解体決議は5分の4以上で行えても、解体には全員の同意書を求められており、同意書がそろわないマンションでは仮申請となっています。未決議のところは、建物を解体し管理組合解消か、補修・補強かで検討中です。

計画的な管理には、住みたいマンション作り

住みたいマンションとは?

 管理不全に陥らないためには、地震国のわが国では、4つの項目が考えられます。

(1)安全安心なマンション、(2)スムーズな管理組合の運営、(3)良好なコミュニティ、(4)地域との連携です。

 まず建物が地震や津波、水害等の自然災害に安全で、子育てや高齢者にも安全なマンションであることです。

 次に、管理組合が合意形成しやすい、良好な意思決定が行える住環境にあることです。それには、日頃からのコミュニティの充実や、自助、互助、共助できる環境にあること、さらに、地域との良好な関係を形成していることです。

 それには、皆が、私が、「住みたいマンション」を作ることなのです。このようなマンションであれば、このようなマンションにしたい、このようなマンションに住みたいという、マンションを作ることなのです。

マンションの生涯設計を

築61年の大阪のマンション。ほぼ修繕をしたことがない 築61年の東京のマンション。大規模修繕をしたことはないが、何度も修繕を実施
築61年の大阪のマンション。ほぼ修繕をしたことがない 築61年の東京のマンション。大規模修繕をしたことはないが、何度も修繕を実施

 住みたいマンションであっても、大規模修繕を行い、どれだけ改修工事を実施しても、いつかは迎えるマンションの終末があります。どんなマンション作りをしたいのか、何年このマンションを持たせたいのか、マンションの終末をどのように迎えたいのか、人間の一生涯と同じように考えてみましょう。

 歳を取った高経年マンションには、3つの選択肢があります。(1)建替えるか、(2)長期に使い続けるか、(3)解消するかです。(2)長期に使い続ける、を選択した場合、修繕か、改修するかという選択肢があります。そして、最後にマンションの寿命が尽きるときに、建替えするか、解消するかという2択がでてきます。

 このマンションの寿命をどのように考えるか、どこまで長期に使い続けたいかにより、選択肢が決まってきます。

 阪神・淡路大震災の場合、最終的に建替えは109事例、解消は10事例に満たなかったのではないかと考えられます。東北大地震の場合、筆者の調査では、被災マンションの解消は4事例、建替えは1事例でした。熊本地震の場合は、建替えは1事例の予定、解消は6事例プラス数事例となるかもしれません。公費解体制度を利用しても、建替えはほとんどなく、解消する事例も少ないのです。

 これは、震災という災害時にあたり、マンションの将来を決める管理組合の合意形成の難しさをよく表していると思います。すなわち平常時には、時間をかけて「長期にマンションを使い続ける」ことが、一番合意形成がしやすいといえましょう。

 長く快適に住み続けるためには、計画的に大規模修繕工事を実施できるように、修繕積立金を準備しておき、そしてマンションの終末をどのように迎えるのか、準備を怠らないことだと考えます。

 皆さまのマンションの未来が明るいように願っています。

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団地再生支援協会 http://www.danchisaisei.org/