大規模修繕工事

大規模修繕工事 発注編

 長期修繕計画等で計画された大規模修繕工事。実施時期が近づくと住民の方々の意識も高まってくるのですが、いざ具体的な取り組みの話になると、何から手をつけてよいのかと頭をかかえる問題となっているようです。
 今回は、マンションのビッグイベント「大規模修繕工事」がどのようにして発注まで到達するのかを検証してみましょう。

大規模修繕工事「成功の条件」

 マンションの大規模修繕工事は住民、つまり管理組合の主導で行われるべきです。しかし、多くの管理組合では順番制で選出された役員の方々が中心となって取り組むため、何から手をつけたらよいのかと頭をかかえる問題となっているようです。
そこで大規模修繕工事を成功させるためのいろいろな点について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

工事を成功させる条件としては
 1.住民全員の参加意識の向上
 2.早期の資金計画
 3.コンサルタントの選定
 4.施工業者の選定
の4点が挙げられます。

住民全員の参加意識の向上

 マンションの大規模修繕工事は管理組合の総会での各過半数の決議が必要です。
 また、修繕時期に資金が不足している場合は、借入金等の検討も必要となりますので住民全員の参加意識の向上が必要です。そして工事に入ると、日常生活を送りながらの工事となるため、住民の方々の理解が得られなければ工事がスムーズに進みません。住民ひとり1人に、当事者であるという認識をもって頂くことが大切です。

修繕積立金

 住宅金融支援機構では、「マンションすまい・る債」という、管理組合が積み立てている修繕積立金で、住宅金融支援機構が発行する債券を定期的に購入し、修繕積立金の計画的な積立・適切な管理するというものがあります。「マンションすまい・る債」に応募できる管理組合の要件の一つに、『応募を行う年度の収支予算において、修繕積立金の一戸当たりの平均月額が、建物の竣工からの経過年数に応じて、表の平均月額以上積み立てられることになっていること』という要件があります。
 また、国土交通省の調査では、平成20年度の戸当たりの修繕積立金の月額の平均は10,898円という結果でした。形態別では、単棟型が10,711円、団地型が11,547円となっています。

経過年数(築年数) 平均月額 平均月額
平均専有面積(※)55㎡以上 平均専有面積(※)55㎡未満
5年未満 6,000円 5,700円
5年以上10年未満 7,000円 6,650円
10年以上17年未満 9,000円 8,550円
17年以上 10,000円 9,500円

※ 平均専有面積とは、管理規約で対象物件の範囲に記された住宅の専有部分の面積又は設計図書等における住宅部分の専有面積(非住宅部分の面積を除く。)を当該マンションの住戸数で割った面積のことです。
(例) 専有部分の面積=1,412.50㎡、戸数=25戸の場合
1,412.50㎡÷25戸=56.50㎡/戸 ←平均専有面積

早期の資金計画

大規模修繕工事の費用

30年間の費用 400万円/戸
月額 11,000円/戸

 長期修繕計画により資金計画ができていればよいのですが、修繕時期に資金不足となると借入金、工事の延期等の問題が生じます。
 資金に余裕があるほど落ち着いて建物や設備の維持保全のための計画・工事ができるので、早期の資金計画をおすすめします。


コンサルタントの選定

専門家として、理事会と打合せを行い、工事の設計監理を行うのがコンサルタント会社です。コンサルタント会社の業務には、
(1)建物の調査、診断
(2)調査報告書の作成
(3)改修設計書、仕様書の作成および工事の概算施工費用の算出
(4)工事の施工監理・打合せおよび検査等
(5)管理組合との定例打合せ・会議の出席
(6)施工業者発注に伴ういろいろなアドバイス
等があります。
それでは、どのような基準で選べばよいのでしょうか。
(1)改修工事についての技術力
(2)改修工事についての設計監理の実績
(3)住民の安心、安全への配慮が十分か
(4)常に中立の立場に立って誠実な対応ができるか
等を考慮して実績があり、信頼のおけるコンサルタントの選定をすることが大切です。

施工業者の選定

 大規模修繕工事を成功させるための最も重要な条件として施工会社の選定があります。その選定基準として次のような事が考えられます。

(1)修繕工事の実績があるか
 新築工事とはちがって修繕工事は居住者が生活している場で行われます。そのため、安全性の確保、プライバシーの保護、居住者の生活リズム等を考えて工事を進めなければいけません。修繕工事についてより多くの実績が望まれます。

(2)総合技術力があるか
 修繕工事は
 ・躯体の機能の回復
 ・美観の回復
 ・住環境の向上
 ・財産価値の維持向上
等の目的によって、コンサルタント会社、施工業者が一体となって工事を進めるため、当初の目的を達成するための総合的な技術力が必要です。

(3)アフターの対応ができるか
 修繕工事が終わっても完全に終了というわけではありません。完了後のアフター保証期間の対応ができる会社がよいでしょう。

(4)健全な経営の会社か
 修繕工事は新築工事とちがい短期間の施工となるため、安易に施工会社を選定しがちです。アフター保証期間が長期の場合がありますので、健全な経営の会社を選ぶために最低限注意しておくべき項目として、次のようなものがあります。
 ・会社経歴
 ・資本金
 ・建設業の種類
 ・財務内容
 ・完工高

大規模修繕工事を成功させるためには

*住民どうしの合意
 ひとり一人が総会に積極的に参加すること。
*長期の修繕計画を立てて将来かかる費用がわかるようにすること。
*複数の業者から工事の見積りをとって比較し、競わせること。
*設計事務所や管理会社等、第三者の専門家に相談すること。
 工事のチェック等は多少費用がかかっても、第三者のチェックによって確実な工事をしてもらえる。
 業者の手抜きを防ぐ。もちろん、居住者も立会うこと。