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特定非営利活動法人DREAM ISLAND理事長/立花 律子さん

立花 律子さん
「千枚田とともに。『こまめ食堂』」
Profile

立花 律子さん/特定非営利活動法人DREAM ISLAND理事長
小豆島生まれ、小豆島育ち。1985年より社団法人小豆島観光協会に勤務。97年より事務局長。2006年9月に退職し、翌月にDREAM ISLANDを起業。07年3月より特定非営利活動法人DREAM ISLAND理事長に就任。小豆島が大好きな人を増やしたいという目的のもと、情報発信およびまち歩き、山歩き、海歩き(シーカヤック)ガイドを実施。10年夏に、こまめ食堂をオープン。
http://www.dreamisland.cc/


 瀬戸内海に浮かぶ小豆島(香川県)の真ん中にある千枚田の真ん中で、お米とお水が主役の「こまめ食堂」というカフェを開いています。もともとは瀬戸内国際芸術祭2010のために作ったお店で、芸術祭の終了と同時に閉店しましたが、周囲の勧めもあって翌2011年4月に再開し、今に至っています。

 島の真ん中に高い山がそびえ、海岸線を中心に集落が広がる小豆島の中で、ここ中山は唯一、海の見えない集落です。先人たちは知恵を絞り、試行錯誤を繰り返しながら、湧き水の流れる筋に沿って山を削り、田んぼをつくりました。山を削ると石や岩がたくさん出てきたので、動かすことの困難な大きな岩を中心に石垣を築きました。田んぼの両側には集落を造り、真ん中に鎮守の森をつくりました。加えて、豊かな恵みをくださる神様に奉納するため農村歌舞伎の舞台を造りました。

田植え
田植え
棚田の夏
棚田の夏

 約700年前から数百年をかけてつくった千枚田に、現在残る田んぼの数は753枚。徐々に休耕田が増えてはいるものの、元気なおじさんたちが数軒分の田んぼを引き受け、景観を保持し地域の誇りを守るため、毎年田んぼに水を張りお米を育てています。しかし、労力の割に大きな収入に結びつかない、小さく不ぞろいな形の棚田には、高齢化、後継者不足の壁が大きく立ちはだかり、まさに今、存続の危機に直面しています。700年もの時間をかけてつくり上げた地域の財産が、近い将来、跡形もなく消えてしまうかもしれません。

 瀬戸内国際芸術祭が目指す本来の目的は、地域のおじいちゃん、おばあちゃんを元気にすることでした。各所に点々と現代アートを配置することでアートが誘導装置となり、知らず奥へ奥へと足を踏み入れます。そして気がつくと、地域の財産である景色や文化をその地域ならではの〈アート〉として目にするのです。

 地域外の人が大勢訪れると、人の気持ちや会話も変わってきます。いつもいつも当たり前と思っていた、もしかしたらお荷物と感じていたかもしれない田んぼや農村歌舞伎の舞台。そのすばらしさが、多くの旅行者の口を介して地域の人たちに語られました。

 私たちがガイドを始めた8年前、お客さまと共に歩きながら田んぼで作業をするおじさんに「きれいですねー」と声をかけると、返ってくるのは大抵田んぼを続けることの大変さや愚痴でした。でも今は全く違います。「きれいやろ」「水も米もホンマうまいぞ」。

棚田のおにぎり定食
棚田のおにぎり定食

 こまめ食堂も、少しずつ変わってきています。地元のおっちゃん、おばちゃんから毎日届く季節野菜の数々。そして笑顔。昨年は初めて棚田を1枚お借りし、お米づくりにもチャレンジしました。棚田で手間暇かけて育てたお米を、地元の銘水でふっくら炊きあげて作ったおにぎりと、小豆島の旬の食材にこだわったおかずを添えた「棚田のおにぎり定食」は食堂の看板メニューです。

 芸術祭がきっかけで中山に越してきた私の役割は、きっと食や地域の情報発信を通じて、棚田の存続を応援することなのかもしれないな。最近そんな風に思うようになりました。5年後も、そして10年後も、お客さまに今のまんまの心地良さを感じてもらえる地域を守る。その一助になれたらこれ以上の喜びはありません。



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